ウナギの味と『ウナギ屋さん』

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昔、ウナギは、スーパーではなく「うなぎ屋さん」で売っていた。

大きな桶の中にたくさんウナギが泳いでいて、その中から活き の良いのを選ぶと、店のおじさんがその場でさばいて、調理してくれるのだ。

蛇みたいににゅるにゅるしたウナギが、絡み合い、突っ張りあいながら、桶の中で泳ぎ回っている様は、子供心に楽しくもあり、不気味で もあった。

どうして大人は、こんなにゅるにゅるした生き物を好んで食べたがるのか、不思議でならなかった。

店頭で客が注文すると、店のおじさんはひょういとウナギを捕らえ、奥の調理場に連れて行く。

ささっと捌いて、生のまま客に渡すこともあれば、炭火で蒲焼きにすることもある。

それに一手間加えて、鰻丼のできあがり。

食卓に並んだ鰻丼は、身がしっとりして、口の中でとろけそうだった。

香ばしい中にも、まろやかな食感があり、皮付きでもするりと喉の奥を通る感じだ。

昨今のスーパーは何所からウナギを仕入れてくるのか知らないが、皮はゴムのように厚くて硬いし、身もボロボロして、舌触りがいまひとつだ。

いつのまにウナギはこんな人工的な味がするようになったのだろうと悲しくなる。

また、店頭ではパック詰めにされた蒲焼きばかりで、ウナギがどんな風に泳ぎ回っているか、知らない子供が大半ではないだろうか。

今や養殖や輸入が主流で、天然のものは滅多に口に入らないと聞く。

しかし、一度覚えた本物の味は、何年経っても忘れないものだ。

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