
SF医療ファンタジー 『TOWER』
『TOWER』は、創世記の原罪をモチーフに、不老不死を目指す遺伝子工学の鬼才エルメインと、ゲノム編集によって生み出された農園管理人(エデンの庭師)のアドナ、設計図の復元を試みる最下階の天才ハスラー、スティンの関わりを通して、愛と生命を描く新感覚のSF医療ファンタジーです。
あらすじ
御覧、ヒトはわれわれの一人と同じように善も悪も知るようになった。今度は手を伸ばして生命の樹から取って食べて、永久に生きるようになるかもしれない。
- 旧約聖書『創世記』
それは生物の大量死から始まった――。
人類滅亡の危機に瀕し、世界の知性が結集して『遺伝子保存プロジェクト』を立ち上げる。
世界最大のサイエンス・グリッド『GEN MATRIX』を駆使して、全生物のゲノム解析を行い、そのデータと細胞を『タワー』と呼ばれる超高層ビルの上層に持ち込んで、順次、生物を再生する予定だったが、冷凍睡眠装置の実験中に、人類の導き手となる『十二の頭脳』が事故死してしまう。
その後、遺伝子工学の鬼才、エルメインが陣頭指揮を執り、8000人の市民をタワーの上部に招きいれるが、半閉鎖式生命圏の隔壁を締め切ったと同時にメインフレームの接続が断たれ、設計図も60億のピースに分解されて、人々はタワーに閉ざされてしまう。
脱出する術もなく、物資は次第に失われ、再び人類滅亡がささやかれるようになるが、『エデンの庭師』ことアドナは市民の食を繋ぐため、ゲノム編集による農作物の栽培に打ち込んでいた。
そんな中、最下階の少女が謎の感染症で変死し、執政府に動揺が走る。
真相を究明すべく、アドナは最下階に下りるが、そこで出会ったのは謎のハスラー、スティンだった。
彼らは設計図の謎を解き、人類を解放することができるのか。
旧約聖書の『創世記』をテーマに描く、新感覚のSF医療ファンタジーです。
章立て
第1章 GEN MATRIX

生物の大量死に伴い、《十二の頭脳》は超高層ビル『タワー』に全生物のゲノム情報と体細胞を保存するが、冷凍睡眠時に事故死し、遺伝子保存プロジェクトは中断する。
代わって人類社会のリーダーとなったのが遺伝子工学の鬼才エルメインだった。
エルメインは忠誠を誓った8000名だけをタワーの上層に招き入れ、≪隔壁≫を締め切ってしまう。同時にタワーの設計図も失われ、市民も上層に閉じ込められてしまう。
農園管理人のアドナは市民の糧を繋ぐため、水耕栽培に全力を尽くしていたが、少女が謎の感染症で変死したことから自身の運命も狂い始める。一方、最下階に暮らす天才ハスラーのスティンはガル爺さんと共にタワーの秘密を探り、打倒エルメインに執念を燃やしていた・・。
第2章 神の遺伝子

スティンはDNAコドン『エゼキエル』を手がかりにタワーの設計図の復元を試みる。一方、アドナは彼に心惹かれ、救いの手を差しのべようとするが、様々な誤解から気持ちもすれ違う。そんな中、新たな感染症が拡がりつつあった・・。
第3章 楽園

≪天領≫の支配者エルメインの野望を知ったアドナとスティンは、市民を解放すべく、命がけでGENMATRIXの謎に挑む。そんな二人の目の前に現れたのは・・。
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キャラクター紹介
- アドナ
- TOWERの農園管理人。『エデンの庭師』のペンネームで農業通信にコラムを寄稿している。
エルメインのゲノム編集によって生み出された「完璧な人」。タワー上階にあるVIPフロアの一角に住むエリートでもある。スティンに心引かれ、共に闘う決意をする。
- TOWERの農園管理人。『エデンの庭師』のペンネームで農業通信にコラムを寄稿している。
- スティン
- 最下階に暮らす凄腕のハスラー。ITや生命科学に関する高度な知識を有し、ガル爺さんと設計図の復元に挑む。複雑な生い立ちに苦しむが、後にアドナの良き友人となる。
- エルメイン
- 遺伝子工学の鬼才。不老不死を願うVIPの信望を得て、非人道的なゲノム編集を繰り返す。
十二の頭脳の亡き後、人類社会を指揮し、TOWERを支配する。
- 遺伝子工学の鬼才。不老不死を願うVIPの信望を得て、非人道的なゲノム編集を繰り返す。
- ガル爺さん
- スティンの祖父。優秀なハードウェア修理工だったが、エルメインと対立して最下階に落とされる。親友ヘムの力を借りて、スティンと一緒に設計図の復元に取り組む。
- ベラ
- スティンの愛人。母親代わりでもある。ヘムの娘で、両親の不審死を契機に、スティンとガル爺さんに手を貸すようになる。スティンより14歳年上であることに引け目を感じている。
- セス
- アドナの学生時代の後輩で、志の高い医学生。『診察室のキリスト』と慕われるジュール医師の薫育を受け、市民の医療に全力を尽くす。
- ジュール医師
- エルメインとは対照的な良心の人。アドナとセスの心の師でもある。
技術とアイテム
作中に登場する技術とアイテムです。
遺伝子保存プロジェクト
生物の大量絶滅に瀕し、世界中の知性が結集して、全生物のゲノム情報と生体細胞を保存するプロジェクトを立ち上げる。
膨大なゲノム情報は『GEN MATRIX(ゲン・マトリックス)』と呼ばれるサイエンス・グリッド(詳しくは記憶媒体『ゲマトリアンクォーツ』)に刻まれ、植物の種子や生殖細胞は高緯度に建設された超高層ビル『TOWER』上層階にバイオバンクに保存される。地上が動植物の成育に適した環境に戻れば、順次、再生されるはずだった。
GEN MATRIX(ゲン・マトリックス)
遺伝子保存プロジェクトの基幹となる世界的なサイエンス・グリッド。サイエンス・グリッドとは、複数のコンピュータをイントラネットで接続し、共通のミドルウェアを用いて、スーパーコンピュータを超える高速演算処理能力を実装するものである。
GEN MATRIXは、研究施設のコンピュータを繋ぐネットワーク、及び研究システムの総称であり、その用途はDNA解析のみならず、遺伝情報データベースの高速検索、研究用プログラムの開発、タンパク質の立体構造予測に至るまで幅広い。
GEN MATRIXを究めれば、合成人間の聖像やデザイナーベビーの創生も可能と言われており、ゲノム情報が刻まれた『ゲマトリアンクォーツ』と併せて、デジタル世界の創造主でもある。
ゲマトリアンクォーツ
全生物のゲノム情報が記録された石英ガラス。外部記憶媒体であり、GEN MATRIXと接続することで、データの読み書き可能になる。高さ240センチ、横幅144センチ、厚さ48センチ。400ゼタバイトを超えるデータの書き込みが可能。
ゲノム情報は、「1」と「0」からなるドットデータとして、超短パルスレーザーで石英ガラスに刻まれる。
「1」がドット有り、「0」がドット無しで、アデニンの「A」は『01000001』、グアニンの『G』は『01000111』となる。
データの読み取りには、『ゲマトリア』と呼ばれる特殊な読み取り装置が必要で、光学顕微鏡を使ってドットの配置を読みとり、ドットの配置=バイナリコードを英数字(ラテン文字)に変換することで、ゲノム情報が復元される。
ゲマトリア
ゲマトリアンクォーツに刻まれたドットデータを読み取り、英数字(ラテン文字)に変換する装置。機械自体は単純だが、変換プログラムに問題が生じ、めちゃくちゃな文字列を吐き出すようになった。ゲマトリアがなければ、ゲマトリアンクォーツに刻まれた膨大なゲノム情報も意味を成さない為、復旧が急がれている。
タワーの設計図
膨大なデータからなるタワーの3D設計図。オリジナルはゲマトリアンクォーツに記録されているが、ゲマトリアのエラーによって読み取ることができない。また政府が管理していた設計図も、≪隔壁≫を締め切った時に60億に分割され、復元することができない。唯一の手がかりは、システム管理者のヘムが遺した復元ツールと、『エゼキエル』と呼ばれるDNAモデルだけである。
神の遺伝子
人間の免疫機能を極言まで高めると言われる究極の遺伝子。長寿村の住人に顕著に見られる。
エゼキエル
60億に分割されたタワーの設計図を復元する鍵となる、謎のDNAモデル。「女性」という以外、誰のものかは分からない。
ヒトゲノムに関するGENBOOKに収録されており、ゲマトリアンクォーツに刻まれた数少ないヒトゲノムの一つ。
アラル語
神の言語といわれる古代文字。ヘブライ文字に似たユニークな字体で、アラビア語と同じように右から左に読む。過去に多くの聖書や伝道記録書がアラル語で記述され、南方のアラル地方を中心にかなりの話者が存在した。150年前、強制的にラテン文字に置き換えられ、その際、高度な言語変換ツールや暗号術が生まれた。しかし、武力衝突により、アラル語を理解する者は片っ端から捕らえられ、虐殺された経緯がある。ゲマトリアの変換プログラムの修復の鍵となる言語。
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