第一章 GEN MATRIX– tax –
生物の大量死に伴い、《十二の頭脳》は超高層ビル『タワー』に全生物のゲノム情報と体細胞を保存するが、冷凍睡眠時に事故死し、遺伝子保存プロジェクトは中断する。
代わって人類社会のリーダーとなったのが遺伝子工学の鬼才エルメインだった。
エルメインは忠誠を誓った8000名だけをタワーの上層に招き入れ、≪隔壁≫を締め切ってしまう。同時にタワーの設計図も失われ、市民も上層に閉じ込められてしまう。
農園管理人のアドナは市民の糧を繋ぐため、水耕栽培に全力を尽くしていたが、少女が謎の感染症で変死したことから自身の運命も狂い始める。一方、最下階に暮らす天才ハスラーのスティンはガル爺さんと共にタワーの秘密を探り、打倒エルメインに執念を燃やしていた。
第一話『人類最後の聖域『TOWER』と遺伝子保存プロジェクト』はこちら。
作品の詳細とキャラクター紹介はこちらです。
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人類最後の聖域『TOWER』と遺伝子保存プロジェクト
① 人類は全生物のDNAと体細胞を保存する『遺伝子保存プロジェクト』を立ち上げ、最後の聖域として超高層ビル『TOWER(タワー)』を建設するが、アクシデントによって設計図は失われ、人類は『天領』と呼ばれる半閉鎖式生命圏に閉じ込められる。 -
エデンの庭師 ~農園管理とゲノム編集
② 超高層ビル(タワー)の上層に閉ざされた市民の食を繋ぐため、『エデンの庭師』ことアドナはゲノム編集による農作物の水耕栽培に力を入れていた。 -
ケルビムの炎の剣と生命の樹 ~人は永久に生きるようになるかもしれない
③ VIPフロアに暮らすアドナは生まれて初めて最下階に下り、庶民の暮らしを目にする。だが市民は思いのほか生活を楽しんでおり、アドナの印象も一変する。外周回廊から燃えるような夕日を見つめながら、アドナは旧約聖書の『創世記』のエピソードを回想する。 -
最下階のハスラーと賭け試合 ~アドナとスティンの出会い
④ ネズミ目撃の真偽を確かめる為、最下階に下りたアドナは美しい夕日を見ながら創世記を思い浮かべる。永遠の命を求めるエルメインと、エルメインによって作られた自らの運命を思う。 -
希望こそ命の糧 ~世の中、間違った人ばかりじゃない
⑤ 瀕死の少女を病院に送り届けた後、アドナはスティンに再会する。スティンはアドナへの無礼を詫びるが、市民に真実を告げない執政府の無責任を詰る。 -
命の選別 ~こんな狭い社会でも人が人を理解し、愛し合うのは難しい
⑥ 病院を訪れたアドナは医科診療部長ジュールと少女の治療について話し合う。大事な薬剤は全てVIPの為に確保され、最下階の少女にはビタミン剤さえ使われない。 -
アドナの秘密 ~男性でも女性でもなく
⑦ 病院で少女の壮絶な最期を見届けたアドナは不思議な夢を見る。父親らしき人の腕に抱かれて、建設中の超高層ビルを見上げているのだ。「この地で実験するんだよとその人は言うが…… -
最高評議会 ~水循環システムの汚染と病原体の侵入
⑧ ネズミの目撃情報と少女の死に関して最高評議会が開かれるが、執政府のメンバーはいずれも愚かで冷酷。まともな人物はジュール医師だけだが、真実を口にするジュール医師は末席に追いやられ、エルメインにすり寄る人間ばかりが重用される。 -
医療と呪術 ~治ると信じれば、それが神となる
⑨ アドナは微生物による感染と推測するジュール医師の見立てに共感し、システムの老朽化を懸念する。なぜエルメインのような人間がVIPの支持を得るのか訝ると、「医療も突き詰めれば呪術だよ」とジュールは答える。 -
DNAとバイナリコード ~全生物のゲノム情報を記録する
⑩ アドナは遺伝子センターを訪れ、全生物のゲノム情報が刻まれたゲマトリアンクォーツと向かい合う。サイエンスグリッド GEN MATRIXが解析した膨大なゲノム情報はバイナリデータとして保存されているが、≪隔壁≫を締め切ってから文字変換にエラーをきたし全く読み取れなくなっていた。 -
病原体の検出とGEN MATRIXのエラー
⑪ アドナはゲマトリアンクォーツの前に佇みながら、改めて偉大な指導者であった『十二の頭脳』の死を悼む。ゲマトリアンクォーツもGEN MTARIXも使えない中、果たして病原体は検出できるのか。遺伝子センター所長のフロムはゲマトリアンクォーツの修復を試みる。 -
ゲマトリアンクォーツとアラル語 ~文字化けに秘められた悲劇の歴史
⑫ マトリアンクォーツに刻まれたゲノム情報を読み取れない原因はバイナリコードから正しい英数字に変換できない点にある。読み取り機には古代文字であるアラル語のソースコードが仕込まれ、通常の手法では修復不可能だった。
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