史上最低のクズ映画と酷評される『ショーガール』とは
作品の概要
映画『ショーガール』は、シャロン・ストーンのノーパン論争で一躍有名になった『氷の微笑(マイケル・ダグラス共演のセクシーサスペンス) 』、最新のSFXを駆使して壮大な世界観を構築したSFアクション大作『トータル・リコール (アーノルド・シュワルツネッガー主演)』で、世界的に高い評価を得て、当時人気ナンバーワンだったポール・ヴァーホーヴェン監督が、何をトチ狂ったのか、ラスベガスのトップレスショーを舞台に、流れのダンサー、ノエミと、ベガスの女王クリスタルの対決を描いた怪作です。
あらすじは単純至極。
ヒッチハイクでラスベガスにやって来たノエミ・マローン(エリザベス・バークレー)は、運転手の男にそそのかされて、スロットマシーンに夢中になるうち、荷物も、現金も、何もかも奪われて、途方に暮れます。
そんな彼女に救いの手を差し伸べたのが、ラスベガスの劇場でお針子として活躍するモリー。
モリーは彼女に住まいを提供し、ダンサーとしての成功を夢見るノエミを励まします。
そんなモリーが担当するのは、ベガスの女王と名高いクリステル(ジーナ・ガーション)の舞台衣装。
モリーの招きで楽屋を訪れたノエミは、どきどきでクリステルに話しかけますが、彼女が『チーター』というダンスクラブで踊っていることを知ったクリスタルに二流呼ばわりされたことに腹を立て、クリステルに「何よ、偉そうに!」と捨て台詞を吐いて、楽屋を後にします。
しかし、ノエミに興味をもったクリステルは、舞台プロデューサーのザック(カイル・マクラクラン)とお忍びで『チーター』を訪れ、ノエミの激しいダンスに心を奪われます。
その後、ノエミの所に、クリステルの主演するトップレスショー『女神(ゴッデス)』のオーディションの話が舞い込み、ノエミは、クリステルの差し金と知りつつも、オーディションにチャレンジします。
見事、バックダンサーの役柄を射止めたノエミは、厳しい稽古に取り組み、見事に舞台を務めますが、それは女王クリステルに対する挑戦でもありました。
やがて二人のダンサーは、女神の座とザックの愛を争い、激しく火花を散らします。
クリステルの奸計に嵌められ、舞台から追放されそうになったノエミのとった行動とは……。
全編、エロと欲望が炸裂する、異色のダンスムービーです。
ショーガール [Blu-ray]
吹替え版の魅力と女性ファンの多さ
2016年より日本語吹替え収録のブルーレイが販売開始しました。(筆者が購入したのは、2016年版)
日本語吹替えを担当した小山裕香さんが可愛らしい声で、エリザベス・バークレーのイメージと大きく異なり、少女漫画のヒロインみたいです。
amazonレビューにもありますが、「一枚で二度美味しい」、なかなか興味深い仕上がりです。
amazonの商品ページを見てもらったら分かるけど、けっこう五つ星つけてる人、多いでしょう?
中には褒めすぎ? みたいなレビューもあるけど、これに高評価を付けているレビュアーの大半は女性ではないでしょうか。
ショーガールの『サウンドトラック 』もあります。
内容紹介に『1995年のゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)で13部門ノミネート等不名誉な扱いを受けるも、その贅沢を極めた豪華絢爛な映像と音楽は30年近く経った今でも独特の魅力で輝き続けている』とありますが、根強いんファンは存在します。大声で言えないだけで(^_^;
もっと見直されていい作品の一つだと思います。
なぜ世界中からブーイングを浴びたのか
エロス&バイオレンスで一世を風靡したポール・ヴァーホーヴェンの最新作、しかも舞台はラスベガスとあって、世間の関心もひとしおでした。
特に、、ベガスの女王クリステル役を、「マドンナが熱望し、シャロン・ストーンが有力視された」という触れ込みもあり、期待は高まるばかり。
ところが、蓋を開けてみれば、のっけから吐く、脱ぐ、殴る。
主演のエリザベス・バークレーのあまりの下品さと、芸術性もへったくれもない、オッパイぶるぶるのトップレスショー、深みも捻りもないスポ根漫画みたいな筋書きに、世界が唖然とし、その年のラジー賞に選出される始末。
しかし、劇場に足を運び、サントラも購入し、ブルーレイディスクも買った私にしてみれば、「そこまでヒドイ映画だったかなぁ? 」
世間がそこまで酷評する理由がさっぱり分からないんですね。
確かに、トップレスショーは刺激が強いし、相手役のカイル・マクラクランも気持ち悪くて、『デューン / 砂の惑星(デヴィッド・リンチ監督)』で共演したスティングがアホ呼ばわりしていたのも頷ける話です。
だからといって、映画全体を酷評するほど、ひどい作品ではない……というのが正直なところ。
ショーしての舞台構成は素晴らしいし、振り付けもユニーク。
音楽も、当時のダンスナンバーを上手に取り入れ、サウンドトラック盤としても評価が高いし、脚本も、テンポよく物語が進んで、ノエミがクソ・ミュージシャンのアンドリュー・カーバーをボコボコにする場面を除けば、そこまで暴力的でもないです(むしろ、近年のアクション映画の方が激烈なほど)。
最近では『ショーガール <4Kニューマスター版> [Blu-ray]』 もリリースされているところを見ると、なんだかんだで魅了されているファンも少なくないのではないでしょうか。
ちなみに、Wikiの解説 は次の通り。
アメリカでは劇場公開時に過激な暴力シーンや性的シーンが問題となりNC-17指定で公開された。ショービジネスの虚飾の裏側をダンサーの視点から描いた作品であるが、ストーリーに関する限りジョセフ・L・マンキウィッツ監督『イヴの総て』の稚拙な剽窃との観がぬぐいきれない。
「暴力とセックス」というアメリカショービジネス、ひいてはメディアの暗部を、ストリップ・ダンサーという題材で露骨な悪意を込めて描いたため、観客の総スカンをくってしまった。結局1995年のゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)で10部門ノミネート、最悪作品賞・最悪監督賞・最悪主演女優賞・最悪新人俳優賞・最悪脚本賞・最悪主題歌賞の6部門制覇(後に2000年の特別賞である1990年代最悪作品賞も受賞)した。
だが、通常誰一人取りに来ないラジー賞授与式に、バーホーベンはノリノリで登場するというパフォーマンスを見せた。ラジー賞を受賞者が受け取ったのはビル・コスビー(『ビル・コスビーのそれ行けレオナルド』)以来8年ぶり。実際に受賞会場に現れたのはバーホーベンが史上初となる。それ以降も賞を受け取ったのはトム・グリーン(『フレディのワイセツな関係』)、ハル・ベリー(『キャットウーマン』)、サンドラ・ブロック(『ウルトラ I LOVE YOU!』)の計5名だけであり、ある意味伝説的な作品である。他にも「この十年のワースト作品賞」受賞、「この二十五年のワースト・ドラマ作品賞」ノミネートなどワースト映画賞を総嘗めにしている。またバーホーベン自身もこの作品を自虐的に捉え、一時期は「『ショーガール』の後ならもう怖いものはない」と公言していた。
映画『スクリーム』の劇中、犯人が「この世で最も怖いホラー映画は?」と学生に尋ねるシーンがある。その学生の答えが『ショーガール』であった。これは「ハリウッドでこんな最低な映画を作ってしまう事が何よりもホラーだ」という、製作者の『ショーガール』に対する皮肉である。
そんな映画『ショーガール』の魅力を熱く語るコラムがこちらです。
動画は18禁映像を含むため、アコーディオン方式にしています。
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動画で紹介 『ショーガール』の見どころ
18歳未満の方は視聴にご注意下さい。
動画で紹介 『ショーガール』の見どころ
流れ者のダンサー、ノエミは、ヒッチハイクで車を乗り継ぎながらラスベガスにやって来る。
途中、エルヴィス・プレスリーにそっくりな若い男と知り合い、カジノに立ち寄るが、「ショーのプロデューサーを紹介する」という甘言に騙され、まんまとバッグや現金を持ち去られてしまう。
そんなノエミに救いの手を差し伸べてくれたのが、人気のトップレスショー『女神(Goddess)』の衣装を手がける、お針子のモリーだ。
ノエミはモリーのトレーラーで仲良く暮らしながら、いつか一流のベガスの舞台に立つことを夢見ている。
こちらは、『女神』の舞台。
原始の女神を演じるのは、ベガスの女王、クリスタル・コナーズ。
圧倒的なクリスタルの踊りに、ノエミは陶然と見入るばかりだ。
本場ラスベガスの有名プロデューサーが演出を手がけただけあって、ダンスシーンは圧巻。
トップレス・ショーです。視聴にご注意下さい。
ノエミはモリーに案内されてクリスタルの楽屋を訪れるが、クリスタルに「ストリップダンサー」と揶揄され逆上。
「なによ、えらそうに!」と食って掛かるノエミに、クリスタルはかつての自分を見出す。
モリーは、むしゃくしゃするノエミを連れて、馴染みのクラブに出掛ける。
そこで出会ったのが、女たらしのジェームズだ。
世界でも有数の振付師、「アルヴィン・エイラー(実在します)」のスクールで学んだジェームズは、すぐにノエミの資質を見抜き、指導を申し出るが、ノエミの欠点を指摘した為に、ノエミに股ぐらを蹴り上げられる。
この場面の振り付けや音楽もカッコいい。
普通のクラブダンス。セクシーだけど、エロはありません。
ノエミは「チーター」というトップレス・クラブでダンサーとして働いていた。
そこにハンサムなエグゼクティブで、ショー『女神』の制作スタッフでもあるザックを伴って、クリスタルが現れる。
彼女は一目でノエミの踊りを気に入り、ザックと三人でプライベート・ダンスをリクエストする。
ノエミは嫌がったが、500ドルという金額を聞いて、チーターの店長が一方的にセッティング。
腹を決めたノエミは、ザックを相手に過激なプライベート・ダンスを踊ってみせ、クリスタルを挑発する。
このプライベート・ダンスは、あまりの「お下品」さに批評の的となったが、BGMはすごくいい。
振り付けも「スッポンポン」という点を除けば、けっこう曲にあっている。
曲名は、My Life With The Thrill Kill Kult の 『Wated Time』 です。
オールヌードの激しい絡みあり。ここは写真だけ
VIDEO
ノエミに興味をもったクリスタルの手回しもあり、ノエミは『女神』のオーディションに参加するチャンスを得る。
彼女の踊りは群を抜いていたが、老練なプロデューサー、トニー・モスの「乳首を立たせろ」という言葉に反発し、途中でオーディションを投げ出してしまう。
それでも踊りの才能が認められ、ついに『女神』の舞台に立つことになったノエミ。
レッスンは厳しさを増すが、スターへの階段を上り始めた充実感で胸はいっぱいだ。
ノエミの初舞台。
女王クリスタルの傍らで、スターへの挑戦が始まる。
トップレス・ショーです。視聴にご注意下さい。
やがてザックの心も掴んだノエミは、並み居るライバルを押しのけてクリスタルの代役に選ばれるが、クリスタルの計略で、代役の座から降ろされる。
ボンテージのショーの中、女王クリスタルとノエミの女同士の争いはついにクライマックスを迎える。
それにしても、ラスベガスって、本当にこんなハードなショーをやってるんですかね。
コスチュームも演出も圧巻です。
トップレス&SM風のショー。視聴にご注意下さい。
汚い手を使って女王クリスタルを押しのけ、ついに『女神』の座を掴んだノエミ。
自信と野心に満ちた、新たな女神の誕生だ。
トップレス・ショーです。視聴にご注意下さい。
真の女神を目指して : 新たなる旅立ち
しかし、モリーのレイプ事件を通じて、華やかな世界の裏側を知ったノエミは自らショービジネスの世界を去る。
ベガスを発つ前、クリスタルの病室を訪れたノエミに、「階段の後ろには、常に、あなたより若くて野心的な女の子が座を狙っている」とアドバイス。
ノエミが現れた時から自らの限界を感じていたクリスタルは、弁護士の申し分ない措置もあり、潔く引退を決意する。
カーボーイハットを通じて、ベガスの女王から新しい女王へのバトンタッチ。
だが、ノエミの決意は固く、ベガスのさらに向こうへと旅立つのだった。
ベガスの女王 ジーナ・ガーションの魅力
本作において、ひときわ妖艶な魅力を放つのが、ベガスの女王クリステルを演じたジーナ・ガーションです。
映画会社の謳い文句では、「シャロン・ストーンが有力視され、マドンナが切望した」とのことですが、本作に関しては、ジーナが敵役と思います。
シャロン・ストーンが相手ではエリザベス・バークレーがかすんでしまうし、マドンナだと、あまりにアーティストとしてのイメージが強すぎるので、ドラマにならないから。
実際、ジーナの公式サイトでも「ショーガールのクリステル役が一番好きです」というファンの声が多数寄せられているとこを見ると、やはり彼女のキャリアにおいても最高位に位置づけられる作品ではないでしょうか。
ラスト、「ギャンブルに勝ったのか?」という、プレスリーそっくり男の質問に、にやっと笑って返すノエミの表情がすごく好きです。
【旅行記】 ノエミに会ってきた! ラスベガス訪問
追記 2017年9月10日
以下の記事は、2017年、実際にラスベガスを訪れた時に書いたものです。
これも写真付きで長いので、興味のある方だけご覧下さい。
右端の▼をクリックすると、アコーディオンが開きます。
ノエミに会ってきた! ラスベガス訪問
いわゆる「ラスベガス」と多くの人が認識しているのが、『Las Vegas Strip』と呼ばれる、South Las Vegas Blvd 通りだと思います。
一本の大通りに名だたるホテル、カジノ、シアターが建ち並び、夜になると身動きも取れないほど大勢の観光客でごったがえします。
ちなみに夏場は最高気温が40度以上あるので(私も生まれて初めて摂氏43度を体験)、日中は町を歩く人もほとんどなく、全てのネオンが消えて、連休中のオフィス街みたいです。
ところが、日が沈み、夕闇に包まれると、町中のネオンが点り、観光客がわらわらと集まってきます。
人出も午後十時を過ぎると最高潮になり、場所によっては階段から落ちそうなほどの混み具合。
遠目に見れば、砂漠の中の町なのに、どこからこれほどの人とエネルギーが集まってくるのか、不思議なくらいです。
そんでもって、アジア系の住民と観光客が非常に多い。
私が訪問した時は、道を歩いている半数以上がアジア系でした。
ここはマカオか、香港か、という印象です。
それに『カジノの町』というから、アダルトな客ばかりと思いきや、ファミリーも非常に多い。
午後10時を過ぎても、乳児や幼児をベビーカーに乗せて、レストランやカジノ巡りに余念がなく、大人に付き合わされる幼児がちょいと気の毒な感じ。
でも、地元民に言わせれば、どのみち昼間は暑すぎて外遊びなどできないから、夜に遊ぶぐらいで丁度いいそうです。
そんな中、一番感激したのが『ミラージュ』。
映画『ショーガール』の舞台となった高級ホテルです。
残念ながら中に入ることは叶いませんでしたが、遠目にエントランスが見えて、「ああ、あそこで撮影したんだ」と感無量。
『ロケ地の現実感』は想像以上でした。
こちらも『ショーガール』に登場。青紫のプラネットみたいなネオンはラスベガスの描写によく登場します。
映画の方は綺麗に加工され、宇宙的なイメージがありますが。
こちらは『ヴェネチアン リゾート ホテル』のゴンドラライド。こんなものまで作ってしまうんですね。
ラスベガスの魅力は、一言で言えば、人を楽しませる、あらゆる要素が一カ所に詰まっていること。
ピラミッドあり、メルヘンあり、ポストモダンあり、やったもん勝ちみたいなノリで、次々に面白いモノが作られる。
ほんと「浮世を忘れて」とはこの事。エンターテイメントに遠慮も謙遜もないです。
これも有名な噴水ショーですが、思ったより控えめな印象でした。今は方々にレーザー光を駆使したハイテク噴水ショーがありますから、今時の観光客はこれしきでは驚かないのではないでしょう。初めてお目見えした頃はアメージングだったのかもしれませんが。
自分専用のシアターを持っているデヴィッド・カッパフィールド。私の訪問時は、一席=108ドルでした。
他のシアターは直前に値下がりしても、カッパフィールドのチケットだけは絶対に値下がりしない。
やはり生で見ると凄いのでしょうね。
『リヴィエラ』もありました。
写真は映画のワンシーンですが、撮影の為に周辺を規制したか、明け方直前の、ちょっと人が引ける時間帯に撮影したのではないでしょうか。
通常の人通りは大阪・梅田の交差点並にあります。
またノエミやモリーの服装から察するに、撮影は秋頃かと思います。
摂氏40度以上の天気が続く夏に、あの撮影は絶対に無理。
そんなのも現地に行って初めて体感することです。
ラスベガスのショーって、本当にホテルの中で、こんな花火を打ち上げて、ギンギラギンのトップレスで踊るわけ?? と思っていたら、そういう演目もありました。(写真はショーガールより)
たとえば、アダルトショーの『ZUMANITY BY CIRQUE DU SOLEIL』
花火は上がりませんが、トップレスで、官能的な内容に仕上がっています。
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話のついで、『KÀ BY CIRQUE DU SOLEIL (vegas.comの公式ページ)』も素晴らしいです(中華風歴史スペクタクル)。
ラスベガスの住民は、こんなのが日常的に鑑賞できるんですね。羨ましい。
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ラスベガスの街を歩きながら、頭の中ではエンディングの『New Skin』がずーっと鳴ってました。
なんで、あんなクズみたいな作品が好きなの? と問われても、私には「だって好きだから」とした答えようがありません。
皆が皆、名画好きでなければならない理由はないし、「好きなものは好き」としか言いようがないです。
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