ティム・バートンの『猿の惑星』& おひとり様の映画列伝

猿の惑星 ティム・バートン
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ティム・バートン監督の『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001年公開)の見どころと、代表作『バットマン』『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』を動画で紹介。公開当時は劇場のチケット売り場で直接買い求めなければならなかった事とおひとり様の事情を併せて。

この記事は最後までネタバレを含みます。未見の方はご注意下さい。

目次

ティム・バートン監督の『PALANET OF THE APES / 猿の惑星』

ティム・バートン版(2001)の特色

ティム・バートン監督の『PLANET OF THE APES/猿の惑星』は、21世紀を代表するアクション俳優、マーク・ウォルバーグを主演に迎え、斬新なデザインと世界観で、1968年から続く『猿の惑星』シリーズに新風を巻き起こした異色作です。

2011年から2017年にかけて制作された『猿の惑星・三部作』(創世記・新世紀・聖戦記)が、1968年の名作『猿の惑星(チャールトン・ヘストン主演)』のエンディングに基づき、いわゆる「ビギニングもの」として脚本を練り上げたのに対し、ティム・バートン監督は「最初に美術ありき」。1968年の続編というよりは、前作の世界観を借りた、『ティム・バートンの猿の惑星』で、完全に流れから逸脱しています。

それでも、猿人たちの衣装やメーキャップ、町並みやインテリアなど、さすが美術重視のティム・バートンだけあって、まるで猿のテーマパークに迷い込んだように斬新かつユニーク。

物語も、1968年版の世界観を完全無視というわけではなく、「人類は猿人に飼育され、言葉も満足に話せない」「人類は知性を欠いた卑しい生き物として猿人から虐げられている」等々、押さえるべきところは押さえているので、1968年に特別に思い入れのある人でも、それはそれとして楽しめるのではないでしょうか。

『バットマン』『シザーハンズ』『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『アリス・イン・ワンダーランド』など、バートン・ワールドがお好きな方には大満足の逸品です。

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2029年、惑星間の偵察を任務とする宇宙探索基地“オベロン"は磁気嵐による宇宙空間の異常を発見する。特殊訓練を受けたチンパンジー、ペリクリーズが調査のため送り出されるが、通信が途絶。宇宙飛行士レオは上官の制止を無視してペリクルーズの後を追った。しかし、レオの偵察ポッドは近くの惑星に墜落。危機一髪のところで緊急脱出したレオだが、逃げ惑う原始的な人間を狩って楽しむ、言葉を話す猿の武装集団と遭遇し愕然とする。――この地は猿が支配する猿の惑星だったのだ。

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ティム・バートン版の特色は、猿人を演じた役者さんがかなり人間に近いことです。
新三部作の猿人がCGで作られたのに対し、ティム・バートン版はメーキャップで仕上げているので、顔も人間に近く、目に強い光が感じられます。

また、三部作では猿人のリーダー、シーザーが仲間を率いて決起し、人類との最後の戦いまでを描いているのに対し、ティム・バートン版は既に出来上がった猿人社会(シーザー亡き後の繁栄)をテーマにしており、猿人が人類をペットのように飼い慣らすなど、現代社会に対する皮肉が随所に効いています。

ラスト、主人公のレオ・デヴィッドソン大尉(マーク・ウォールバーグ)が遠い未来に吹き飛ばされ、モダンな町並みに猿人が跋扈するエンディングは、賛否両論のようですが、私はティム・バートンらしくて面白いと感じたし、そのまま『バットマン』に突入してもいいような出来だったので、まあまあ満足しています。

作品の見どころを画像と動画で紹介

ティム・バートンといえば、アメリカンコミックの『バットマン』もポップなのりで仕上げ、熱心なオリジナル原理主義者の不評を買いましたが、私はこれほどユニークな造形のできる監督も二人とないと思ってるし、『シザーハンズ』はもちろん、『The Nightmare Before Christmas』のオープニング、This is Halloweenの美術や演出も神業や思っています。

1989年公開のバットマンも、クリストファー・ノーラン版のファンには違和感があると思いますが、この作品は、『バットマン』というキャラクターを横において、ダークなゴッサムシティのアニメヒーローものとして観れば、色彩の美しさ人物描写に魅了されると思います。ジャック・ニコルソンのジョーカーも最高でしょう。プリンスのヒット曲にのせながら、町中に札束をばらまく場面もよかった。

ジョーカーの衣装も、本当に色使いがいい。

そんなティム・バートンの『猿の惑星』だから、通には観る前から予測がつきそうなもの。
私も、チャールトン・ヘストン版の焼き直しではなく、バートン色のユニークな造形が売りなんだろうと予想していたら、本当にその通りで、前作の哲学性を期待していた人からすれば噴飯ものだったと思うけど、これはこれで見応えがあって、「猿社会がなぜ火器を禁じるか」という理由もちゃんと描かれています。このエピソードが21世紀の新三部作にも繋がっていて、ヘストン版から通して観た人には、すとんと腑に落ちるはず。このあたりの連携は見事ですよ。

このオープニングも、今はほとんど話題にならないけども、映画館で観た時には引き付けられました。

いつか高画質で観る機会があれば、ぜひご覧になって下さい。

ラストもヘストン版とは全く異なりますが、それはそれで風刺が利いて面白かったです。

美人女優のヘレン・ボナム・カーターが、ここでは心優しい学者を演じ、その魅力は猿の特殊メイクにも負けない。

ヘレン・ボナム・カーター

猿社会では足で文字を書くという、小さな場面にも拘り。

足で文字を書く

猿の上流社会のダイニングルーム。ティム・バートン監督らしい、ユニークな造形。

猿社会独特のインテリア

人間が奴隷として売り買いされる。

人間が奴隷として売り買いされる

人間の女の子が猿の少女にペットとして飼育される。逆の立場から見れば、そうなりますね。

女の子がペットとして飼われる

小猿に飼育される少女

猿社会に突然現れた未来人のレオ・デイヴィッドソン大尉(マーク・ウォルバーグ)に怪しさを感じるセード将軍。

野心的なセード将軍

人間の最大の負の遺産である火器を手にして、冷酷さを増す。

人間の最大の悪の遺産 銃を手にする

他にも細部までこだわった作りがされています。

確かに、SFアクションとしても、人間ドラマとしても、ストーリー的に中途半端な印象は否めませんが、決して駄作ではないし、所々に散りばめられた人間社会への風刺や警告も興味深いですよ。

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おひとり様の肩身が狭かった時代

令和の時代にもなると、「おひとり様」や「一人で生きること」がすっかり市民権を得て、今や女性が一人でカラオケに行こうと、ラーメン屋に足繁く通おうと、白い目で見られることもなくなりました。

むしろ、一人で行動できるのが大人の女の証しといわんばかり、シングルプランを売り物にしたサービスも多数存在しています。

しかし、私の青春時代は、彼氏・彼女がいるのが当たり前。

休日はデザイナーズ・ブランドのワンピに身を包み、カフェバーだの、ラウンジだので、お洒落にディナーを楽しむのが一般的でした。

おひとり様は本当に形見が狭かったし、周囲からのプレッシャーも相当なものでした。

「休みの日は何してるの、デートはしないの、なんで彼氏がいないの、いつ結婚するの」

若い娘が質問攻めにされるのは、90年代も、令和の時代も、まったく変わりないですが、現代はそういうことを口にすると、やれセクハラだ、人権侵害だと、周りが怒ってくれるだけ、まだ救いがあると思います。

しかし、80年代、90年代、2000年の初頭ぐらいまでは、おひとり様はまだまだ肩身が狭かったし、シングルライフが市民権を得たのも、ここ10年ぐらいの話です。

あるいは、変わったのは表面だけで、まだまだ世間一般の考えは偏っているかもしれません。

それでも、女性が一人で行動しても、それが当たり前のように受け入れられるようになったのは有り難いことです。

一人分のチケットを買うのは勇気が要った時代

そんな私の一番恥ずかしい思い出は、『猿の惑星、一枚』でしょうか。

当時はチケット購入のオンラインサービスもなかったし、スマホのQRコードもなければ、電子クーポンもありません。

映画で観たければ、上映時間の約30分前には映画館に行って、チケット売り場の長い行列に並ばなければなりませんでした。

しかも、土日といえば、若者グループやカップルがチケット売り場でキャッキャとはしゃぎ、おひとり様に居場所などありません。

それだけならば、まだいいが、チケットを買い求める際、幸せそうな人々に囲まれて、自分が鑑賞したい映画のタイトルを、売り場のお姉さんに口頭で伝える、という苦行が待っています。

それも若い女性が好みそうな恋愛映画や、アイドル主演の邦画なが格好もつきますが、周りが「恋人たちの予感、二枚」とか、「プレデター、四枚」とか楽しそうに注文している横で、

それも、若い女性が好みそうな恋愛映画やアイドル主演の邦画なら格好もつきますが、若者グループやカップルが「恋人たちの予感、二枚」とか、「プレデター、四枚」とか、楽しそうにオーダーしている横で、洒落たスーツに身を包んだ30代独女が、『猿の惑星、一枚』とか口にすれば、周りの視線がどうなるか、容易に想像がつくでしょう。

しかも、チケット売り場にはマイクとスピーカーが備え付けられており、ガラス窓の向こうから、きれいなお姉さんが生真面目に復唱するわけですよ。

「お買い上げ、ありがとうございます。猿の惑星、一枚 でございますね」

すると、一瞬にして磁場が変わり、周りから好奇の視線が浴びせられます。

(おいおい、この女、土曜の午後に、一人で『猿の惑星』とか見るのかよ)

「うわー、この人、こんなキラキラした格好で、猿の惑星なんか見るんだ、しかも一人で!! )

こちらにしてみれば、(復唱はええから、さっさとチケット寄越せ)みたいな気分。

でも、ティム・バートンの最新作ですよ?

映画ファンがこれを見逃すなど、あり得ない。

彼氏と暇つぶしに見に来るあなた達と違って、あたしは映画鑑賞に命を懸けてんの!

猿の惑星だろうが、エマニエル夫人だろうが、話題の作品は一人でも観るし、それを恥とも思わない。

どうせ、この世は一人じゃないか。

おぎゃあと生まれる時も一人。

死にゆく時も一人。

一人で悪いか??

……と思いながら、いつも一人分のチケットを買い求めていました。

ちなみに、私は、映画や舞台芸術、美術展などは一人で観る主義です。

鑑賞後の余韻に浸っている時、「なんか、よう分からんかったね」とか言われると、感動が吹き飛ぶタイプなので(^_^;

その点、今はいいですよね。

恥ずかしい映画のチケットも、漫画本も、オンラインでこそっと買えるし、おひとり様にも市民権がある。

私なんか、『北斗の拳』の愛蔵版も書店で全巻、購入しましたけど、超絶恥ずかしかったよ(『猿の惑星』の比ではない)

それもレジ係が若い男の店員だと、もう最悪。

(おいおい、この女、マジで『北斗の拳』とか読むのかよ)

突き刺さすような視線を感じますから。

その点、現代は、本屋やレンタルビデオ店で恥ずかしい思いをすることもなければ、作品を観る為に、わざわざ外出する必要もない。

返却に出掛ける必要さえない。非常に恵まれていると思います。

しかも、これだけ理解が進んでいる中で、「おひとり様」を躊躇するなんて、本当にもったいない話です。

映画館だろうと、ビュッフェだろうと、海水浴だろうと、気になるものがあれば、どんどん一人で行動せねば。

後で振り返って、「ああ、あの時・・」と悔やんでも、二度とその機会は訪れないですよ。

ちなみに、女性誌などでは、「一人で行動できる女は格好いい」「私を磨く贅沢な時間。お休みの日は“おひとりさま”を楽しもう」みたいな価値観もありますけど、おひとり様って、「ほら、私って、こんな素敵な生き方をしてるわよ」と、いちいち勝利宣言するものではなく、自身の美学の『選択の結果』だと思います。映画を楽しむのも、旅行に出掛けるのも、それが最上の形態であるから、一人で行動するだけで、「いい女だから」みたいな後付けは完全に間違いです。

『猿の惑星、一枚』であっても。

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