ようやく明後日から学校が再開する。
ほぼ一年――
体感的には一年半(冬休みや夏休みも巻き込んで)
コロナ禍の影響で通常の登校は休止、小学校から大学までオンライン授業に切り替わり、子供は常時ステイホーム、一時期、18歳以下の未成年は一人で外出することも禁じられ、国中が異常な状況下に置かれた。
夫婦共働きで、10歳以下の児童のある家庭はどう乗り切ったのか、想像もつかない。
勉学のフォローはもちろん、食事、運動不足、ゲーム・スマホ依存、等々。
コロナ感染より大変なプレッシャーに押し潰され、親は心身の不調、子供はネット漬けという、最悪の状況に陥った家庭も少なくないのではないだろうか。
大変というなら、医療従事者はもちろん、物流、接客業、飲食業、舞台関係、全てがどん底にたたき込まれ、大勢が死と破滅を覚悟したと思うが、オンライン授業の子供を抱えて、365日、ほぼ毎日、家ごもりを余儀なくされた世帯の重圧も相当なものだ。
どれほど自制心の強い子供でも、何時間もネットつなぎっぱなしの状況に置かれたら、授業そっちのけで、友人とチャットを楽しんだり、TikTokを眺めたり。
だんだんネットに絡め取られていくし、友人の誘い(着信)を無視することもできなくなる。
常時つなぎっぱなしの状態で、いつしかオンラインゲームがメインになり、勉強は片手間にやるという、逆転に陥った子供も少なくないだろう。
それに歯止めをかけて、授業に集中させようとしても、中高生にもなれば反発するし、通学できない子供たちにとってはオンラインだけが唯一の交流手段だ。
それを強硬に遮断することは、精神的苛めにも等しい。
だからといって、制御の手を緩めれば、深夜二時頃までスマホをいじっているのが子供というもの。
喩えるなら、中毒性の強い薬に命を委ねるようなものである。
決して大袈裟ではなく、それが「休校+連日オンライン授業+18歳以下の外出禁止」という状況下におかれた親子の現状なのだ。
親は、外ではコロナと闘い、家では子供のネット依存と闘う。
まさに二重の闘いを強いられ、どこにも救いはない。
「世界中の誰もが苦しんでいる」「医療従事者はもっと大変」「廃業に追い込まれ、仕事をなくした人もいる」……と言われたら、それ以上、何も言えず、「明日食べるものがある」とういだけでも御の字とせねばなるまい。
正直、歯痛に苦しむ者に、難病患者の痛み苦しみを引き合いにされても、何の救いにもならないのだが。
ともあれ、コロナ禍は、社会的にも、精神的にも、様々なものを蝕み、大勢の暮らしと生命を巻き込んで、あらぬ方向に収束しようとしている。
「あらぬ方向」というのは、世界中が勝利に湧くのではなく、「誰が悪い」の禍根を残して、「あれもこれも、無かったことにされる」という歯切れの悪いエンディングで終結することだ。
責任もとらず、救済もせず、ただただ「運が悪かった」で片付けられる、一つ星のホラー映画みたいに。
いつか、この出来事を振り返った時、いつも思うだろう。
自分たちはただ運がよかっただけ。
努力で変えられるのは、人生のほんの一部だけだと。