『あなたの悩み、分かるわ詐欺』に気を付けろ

心理学者、加藤諦三氏の著作『愛される法則』にこんな一文があります。

「誰も愛してくれない」と嘆く人は
実は、訴える相手は誰でもいい。
とにかく哀れみを訴える。

そして「あなたの悩み、分かるわ」と言う人が出てくると、
その人が「いい人」になってしまう。
「私はこんなに苦労して生きてきた」と訴える。

そこで誰かが「その苦労、分かるわ」と言う。
とたんに、その人は「いい人」になってしまう。

これで人生につまずかなければ、 
つまずかない方がおかしい。
相手を見ていないから、
いつも騙される。

誰も私を愛してくれないと嘆く人は、
愛することも 愛されることも、
どういうことだか分かっていない。

親に虐待されたり、両親が離婚したり、学校で苛められたり、心に傷を負った人にとって、「あなたの悩み、分かるわ」と言ってくれる人は天使です。怒りも悲しみもすべて受け止め、心の問題を一気に解決してくれる救いの御子のように感じるかもしれません。

が、ちょっと待って下さい。

あなたが頼ろうとしている人は、真心から、あなたの力になろうとしているのでしょうか。

世の中には、本物の誠意から、あるいは社会的な責務として、あなたの悩みに耳を傾けてくれる人もありますが、一方で、「他人の弱みを知って優越感にひたりたいだけ」「他人の不幸話をワイドショーみたいに楽しんでいるだけ」「相手を支配したいだけ」という人も少なくありません。 最悪、あなたの信頼を利用して、インチキ宗教や高額セミナーに勧誘したり、違法な集団に引き込んだり、Twitter殺人のように、暴行や売春目的で近づく人もあります。
心が弱った時、「あなたの悩み、分かるわ」と同情してくれる人は有り難い存在ですが、よくよく相手を見抜かないと、逆に、人生をこじらせる事態に陥ってしまうんですね。

本物の誠意と詐欺の見分け方は、言いにくい事もはっきり言ってくれるかどうかです。

「あなたの気持ちも分かるけど、そういう考えでは、上手くいくものも、上手くいかないんじゃないかしら」みたいな話は、心の弱った人には、胸に突き刺さるかもしれません。しかし、その度に、「きついこと言われた」「上から目線」と背を向けていては、誰も何も言えなくなってしまいます。周りから腫れ物みたいに思われて、どんどん孤立するかもしれません。

世の中の大半は、プロのカウンセラーではありませんから、ついつい強い口調で注意することもあると思います。あなたの身を思えばこそ、ずばり言ってしまうこともあるでしょう。そういう時は、相手の人格と真実は切り分けて考え、言葉の意味だけを参考にすればいいのです。たとえば、大嫌いな職場の上司の言葉にも学ぶべきことはあります。その場では、(このオッサン、むかつく。新人の気持ちなど何も分かってへん)と反発しても、何年、何十年も経ってから、ああ、こういう意味だったのか、と気付くようなケースです。ムカつく度に背を向けていたら、社会関係はおろか、仕事だって上手く運びません。そういう時は、上司の性格と言葉の意味は切り分け、(この人とは考えが合わないけど、この意見には一理ある)と、参考書にマーカーを引く要領で、言葉だけ頭にインプットすればいいのです。自分の嫌いな人がいつも間違ったことを言うわけではないし、逆に、自分の好きな人がいつも正しいわけではないんですね。

それを理解せず、「あなたの悩み、分かるわ」と同情してくれる人を求めて、人から人を渡り歩く人もあります。渡り歩くだけならいいですが、「あの人は冷たい」とか、「私をバカにしている」とか、悪口もセットで撒き散らす人もあります。そうすると、悪口が大好きな仲間は寄ってきますが、あなたが心底求めるような、心の優しい、思慮深い人は、関わりを恐れて距離を置くようになります。その結果、互いに陰でけなしあい、落とし合うような、悪口集団に組み込まれて、いっそう人生が苦しくなります。基本的に「あなたの悩み、分かるわ」と、他人の不幸話や悪口を聞きたがる人は、自分自身も鬱屈したものを抱えていて、憂さ晴らしをしたいか、心理的にマウンティングしたいだけですから、そういう人と一緒になって、「Aさん、ムカつくよね、許せないよね」と頷き合っていたら、いずれAさんの耳に入って信用をなくすか、周りから危険人物と思われて、友だちも一人もなくなるんですね。

非常に難しいかもしれませんが、 心が弱った時ほど、甘い言葉であなたに近づいてくる人に注意すること。

本当に誠実な人、あるいは社会的な責務から問題に真摯に向かい合っている人は、自分に出来ることと出来ないこと(責任が取れることと取れないこと)の境界を弁えており、安易に相手に期待を抱かせたり、中途半端に救いの手を差し伸べたりしないのです。

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