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【10】 ジークフリートの恋 ~臆病者には花嫁の目を醒ますことも、娶ることもできません ~『ニーベルングの指環』より

QUOTE 臆病者には花嫁の目を醒ますことも、娶ることもできません Seigfried
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海洋小説 MORGENROOD -曙光 より


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楽劇『ジークフリート』と『ニーベルングの指環』について

『ニーベルングの指輪』のあらすじ

リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ジークフリート』は、長大な楽劇『ニーベルングの指輪』の四部作の三作目、「第二夜」として作曲されました。

主な構成は次の通りです。

序夜『ラインの黄金』

神々の長ヴォータンは、ヴァルハラ城を建設する為に、二人の巨人の兄弟、ファーフナーとファーゾルトをこき使い、報酬として、美の女神フライアを与えることを約束していました。
フライアは、神々の長寿の源である黄金の林檎を管理する女神でもあり、彼女を巨人たちに差し出せば、神々の命の源も尽きてしまいます。
ヴォータンの妻で、フライアの姉でもある、女神フリッカは、夫であるヴォーダンに契約の破棄を迫り、ヴォータンも渋々ながら、これを承諾します。

一方、地底のニーベルハイムでは、醜い小人のアルベリヒが黄金の指輪を使って、仲間を支配し、地中の黄金を集めていました。
指輪は、ラインの乙女たちから奪い取った黄金で作ったもので、愛を断念した者だけが世界を支配する力を身に付けることができます。

それを知ったヴォータンは、奸智に長けた火の神ローゲを伴って、ニーベルハイムに赴きます。
ローゲは、アルベリヒを騙して、カエルの姿に変え、ヴォータンは無力になったアルベリヒから黄金の指輪を取り上げます。
憎悪したアルベリヒは、指輪に激しい呪いをかけ、それを手にした者には死がもたらされると預言します。

しかし、ヴォータンや他の神々は、アルベリヒの呪いなど気にもかけず、女神フライアと引き換えに、黄金の指輪をファーフナーとファーゾルト兄弟に与えます。

ところが、黄金の輝きに魅せられたファーフナーとファーゾルトは、さっそく指輪の所有をめぐって口論となり、ファーフナーはファーゾルトを殴り殺してしまいます。

その様を目にしたヴォータンは、アルベリヒの呪いがいつか神々を滅ぼすと予感しながら、完成したヴァルハラ城に入城します。

第一夜『ヴァルキューレ』

神々の没落を恐れるヴォータンは、指輪の呪いを解くために、神の掟からも、人間社会からも自由な英雄を探し求めます。
誇り高いヴェルズンク族の女性と交わり、双子の兄妹ジークムントとジークリンデをもうけます。
しかし、幼い兄妹は争いに巻き込まれて離ればなれになり、兄のジークムントは、豪族フンディングに追われて、森を彷徨います。

深手を負い、森の中の小屋に逃げ込んだジークムントを優しく介抱したのは、フンディングの妻ジークリンデでした。
兄や父から離ればなれになったジークリンデは、戦利品としてフンディングにもらわれ、無理矢理、花嫁にされたのです。
ジークムントとジークリンデは、兄妹ながらも、激しい恋に落ち、フンディングの追跡を逃れて、森の奥深くに駆け落ちします。

兄妹の父親でもあるヴォータンは、最愛のヴァルキューレ(ヴォーダンが人間の女性との間にもうけた8人の姉妹。戦場で死んだ英雄をヴァルハラに運ぶ)の長でもあるブリュンヒルデを呼び寄せ、ジークムントを勝利に導くよう命じます。

しかし、ヴォータンの妻フリッカは、「兄妹が結ばれるなど、とんでもない」とヴォータンを叱責し、決闘の結末を変えるよう、ヴォータンに求めます。
ヴォータンは、神々の長である立場から、フリッカの申し出に逆らうことができません。
再び、ブリュンヒルデを呼び寄せ、決闘でジークムントが死んだら、ヴァルハラに運ぶよう、要請します。

ブリュンヒルデは、森の中でしばしの休息をとるジークムントの前に現れ、「あなたは私と一緒にヴァルハラに行かねばならない」と、決闘で死ぬことを告げます。
ジークムントは、「自分一人がヴァルハラに行くことはできない。哀れな妹も一緒に連れて行きたい」と懇願しますが、ブリュンヒルデは、「ヴァルハラに行けるのは、ジークムント一人です」と冷徹に答えます。
それを知ったジークムントは、妹を一人、置き去りにすることはできないと、その場で妹の命を絶とうとします。
兄妹の深い愛に感銘を受けたブリュンヒルデは、父の命に背き、ジークムントの勝利を約束します。

しかし、ヴォータンは娘の裏切りに怒り狂い、決闘の場に現れて、ジークムントの剣を二つに折ってしまいます。
剣を失ったジークムントは、フンディングに刺し殺され、フンディングもまた、ヴォータンの手にかかって、絶命するのでした。

最愛の人の死を目の当たりにしたジークリンデは嘆き悲しみ、ブリュンヒルデは父の怒りから逃れるために、ジークリンデを連れて、逃亡を図ります。
ジークリンデの胎内には、すでにジークムントの子が宿っていたのでした。
ブリュンヒルデは、お腹の子を「ジークフリート」と名付け、ジークムントの形見の剣(二つに折れた破片)を与えて、森の向こうに逃がします。

ヴォータンは、裏切りの罰として、ブリュンヒルデを高い山の頂で眠りにつかせ、一番に目覚めさせた男のものになることを定めます。
その男が臆病者ではなく、英雄であるようにとの願いから、ヴォータンはブリュンヒルデの周りに火をかけ、遠くから見守るのでした。

※ 有名な『ヴァルキューレの騎行』は、ワルキューレの姉妹が嬉々として英雄をヴァルハラ城に運びながら歌うパートです。歌唱がクライマックスになった時、姉妹の一人が、愛馬グラーネにまたがり、遠くから駆けてくる姉のブリュンヒルデと、彼女に保護されたジークリンデの姿を見つけ、「一体、どうしたのかしら」とざわつき始める筋書きです。その後、怒り心頭のヴォータンが追いかけて、父娘の喧嘩になるわけですね。

第二夜『ジークフリート』

森の奥深くで鍛冶屋を営むミーメは、アルベリヒの弟であり、全ての経緯を知っている小人です。
森の中で行き倒れになったジークリンデを助け出し、息子ジークフリートの出産に手を貸すと、そのまま我が子としてジークフリートを育て始めます。

しかし、ジークフリートは、だんだん粗野な若者に育ち、ミーメの手に負えません。
ミーメでさえ直せなかったジークムントの剣『ノートゥンク』も、軽々と鍛え直し、出生の秘密を探し求めて、森の向こうに旅立ちます。
大蛇に姿を変えたファーフナーを打ち倒し、返り血を浴びたジークフリートは、無敵の人となり、小鳥の声が理解できるようになります。

花嫁の目を覚ますことも、ブリュンヒルデを娶ることも
臆病者には出来ません。
出来る者は恐れを知らない者だけ! 

という声に導かれ、炎の山を登ってみると、そこには甲冑を身につけた、美しい女性が眠っていました。
初めての口付けで、目覚めた女性こそ、ブリュンヒルデでした。
ジークフリートとブリュンヒルデは幸せに結ばれ、永遠の愛を誓います。

第三夜『神々の黄昏』

同じ頃、ライン川のほとりに住むギーヒビ家の当主グンターは、さらなる栄誉を求めて、神の娘であるブリュンヒルデとの結婚を望んでいました。
しかし、ブリュンヒルデは炎の山に閉ざされ、近づくことはできません。
グンターの異父弟で、奸智に長けたハーゲンは、ジークフリートを利用して、ブリュンヒルデを手に入れることを策略します。

そうとも知らずに、ギーヒビ家を訪れたジークフリートは、ハーゲンによって「忘れ薬」を飲まされ、ブリュンヒルデのことも、何もかも忘れ去ってしまいます。
そして、ハーゲンとグンターのすすめるままに、グンターの美しい妻グートルーネを妻にすることを約束します。

ジークフリートは、隠れ頭巾をかぶって、ブリュンヒルデの寝所に近付き、指輪とブリュンヒルデの両方を手に入れます。
ギービヒ家では、グンターとブリュンヒルデ、ジークフリートとグートルーネの婚礼を祝う宴が開かれますが、その場でブリュンヒルデはジークフリートの不実を詰り、呪いをかけます。
忘れ薬のことを知らないブリュンヒルデには、ジークフリートの心変わりに映ったからです。

その後、ハーゲンはジークフリートを狩りに誘い、ジークフリートを背中から刺し殺します。
無敵のジークフリートにも一つだけ弱点がありました。ファーフナーを倒した時、背中だけは返り血を浴びなかったのです。
ジークフリートは、死の間際、ようやく最愛の妻ブリュンヒルデのことを思い出し、ブリュンヒルデも、これがハーゲンの奸計と気付きます。
ブリュンヒルデは指輪の呪いを解くために、愛馬グラーネにまたがり、ジークフリートの亡骸を包む、薪の炎の中に飛び込みます。
やがてライン川から水が溢れ、大洪水となって、世界を押し流します。
ヴァルハラ城も炎に包まれ、神々の世界も燃え尽きます。

――しかし、世界は再び、明るく照らされ、新たな歴史を始める。その繰り返しです。

楽劇『ジークフリート』について

この『指環』は、英雄ジークフリートの死をメイン・テーマとして構成され、『ジークフリートの死』をメイン・テーマとして構成され、『ジークフリートの死』が出来てから、前史が必要となったため、『若きジークフリート』、そして『ワルキューレ』『ラインの黄金』へと逆行して、四つの作品にまで構想がふくらんでいったのである。

そして、主人公もジークフリートから、神々の主神であるヴォータンへとと変更されて行かざるをえなかった。

だが、そのヴォータンも、象徴的というか、世界の支配者としての権力のシンボルとなっていった槍(それは天上のトネリコの樹皮で作られた堅牢無比な槍なのだった)を、ジークフリートの剣ノートゥンクにより、一撃のもとに打ち砕かれて、さすらい人(旅人)としての姿のまま消えていくのがこの『ジークフリート』の中で描かれる。

その場面を分岐点として、『指環』は完全に人間の世界が全ての中心となりはじめ、しかも、黄金や財宝をふくめて指環までが、ここにおいて、その由来はおろか、秘められた無限の力も、また所有者にふりかかってくるおそるべき呪いも何ひとつ知らず、理解せぬ持主の手に渡ったことに注意をひかれるのである。

指環をうかがってヴォータン、ミーメ、アルベリヒらは顔をならべるが、無欲で恐れを知らぬ無垢の人ジークフリートには、この作品中では呪いの魔力も効力をみせようとしない。

なお、この作品では、若いジークフリートが、つぎつぎと身に降りかかる体験をとおし心身両面ともに成長をとげていく過程がえがかれていく。あらためて述べるまでもなく、ジークフリートは、『ワルキューレ』での悲劇の双生児の兄妹、ジークムントとジークリンデの結婚によって生まれたヴェルズンク族の英雄。したがって彼はヴォータン直系の孫にあたる純血の人間である。

≪中略≫

ワーグナーは『ワルキューレ』を完成したあと、最初の構想時につけた後の2作の題名をとりやめ、『ジークフリート』『神々の黄昏』と解題することにし、1856年9月ごろ『ジークフリート』の作曲に着手している。ところが、1857年9月にワーグナーは第二幕のなかばでそれを中断した。私生活でもいろんなことがあったのだが、『トリスタンとイゾルデ』の作曲のほうが彼にとってより重大になってきたからである。

結局、再び『ジークフリート』にワーグナーが戻るのは1865年であり、8年の空白が第二幕の途中で起きたわけだ。全曲の完成は、作曲中だった『ニュルンベルクのマイスタージンガー』のためさらに遅れて1871年2月、じつに14年ぶりの完成ということになった。

小林利之 CD『ジークフリート』(ヤノフスキ&ベルリン放送響)全曲のライナーノートより

楽劇『ジークフリート』CDライナーノーツ

昭和の名盤『ニーベルングの指環』

マレク・ヤノフスキ版

マレク・ヤノフスキ指揮 シュターツカペレ・ドレスデン管弦楽団の『ニーベルングの指環』 全曲版はSpotifyで視聴できます。
ジークフリート=ルネ・コロ、ブリュンヒルデ=ジャニーヌ・アルトマイヤー、ヴォータン=テオ・アダム、という豪華キャスト。
ヤノフスキのオーソドックスな演奏と、ルネ・コロ&ジャニーヌ・アルトマイヤーの透明感のある高音がマッチして、現代的な演奏に仕上がっています。

ジェームズ・レヴァイン版

こちらも原作に忠実なオットー・シェンク演出による舞台。
レヴァイン指揮&メトロポリタン管弦楽団の華やかな演奏と相成って、古典的ながらも、現代スペクタクルのような舞台が楽しめます。
ジークフリート=ジークフリート・イェルザレム、ブリュンヒルデ=ヒルデガルト・ベーレンスという黄金コンビも見物。
ベーレンスの演技は、ビルギッテ・ニルソン的な強硬なタイプとひと味違い、宝塚的な凜々しさと優しさを感じます。
初心者は、いきなり現代演出に挑むより、古典的な演出からアプローチした方が親しみやすいですよ。

CDのリストはこちら。CD版のブリュンヒルデは、エヴァ・マルトンです。
https://open.spotify.com/playlist/3FV5UXUJofmBYd0JXeGtEX?si=55ffc8db6b0f4935

楽劇 ジークフリート
楽劇『ジークフリート』 ジェームズ・レヴァイン指揮

【配役】
ジークフリート ・・ ジークフリート・イェルザレム(テノール)
ミーメ ・・ ハインツ・ツェドニク(テノール)
さすらい人 ・・ ジェイムズ・モリス(バス・バリトン)
ブリュンヒルデ ・・ ヒルデガルト・ベーレンス(ソプラノ)
アルベリヒ ・・ エッケハルト・ヴラシハ(バリトン)
ファフナー ・・ マッティ・サルミネン(バス)
エルダ ・・ ビルギッタ・スヴェンデン(アルト)
森の小鳥の声 ・・ ドーン・アップショウ(ソプラノ)/他

メトロポリタン歌劇場管弦楽団
指揮 : ジェイムズ・レヴァイン
演出 : オットー・シェンク
制作 : 1990年4月 メトロポリタン歌劇場におけるライヴ収録
252分/2枚組片面2層、1層/カラー/日本語字幕 on-off/ステレオ/リニアPCM NTSC 4:3

オペラ対訳ライブラリー

こちらはクラシック・ファン必携のオペラ読本。
創作の背景や上演までのプロセスなど、専門的な情報も満載。
ドイツ文学研究の第一人者による、決定版新訳。
文芸読み物としても完成度の高い対訳本です。ドイツ語の勉強にもおすすめ。

ワーグナー ニーベルングの指環(下)第2日『ジークフリート』・第3日『神々の黄昏』 オペラ対訳ライブラリー
オペラ対訳ライブラリー ニーベルングの指環(下巻)

参考サイト

昭和のバイロイト祝祭劇場を彩った三羽ガラス『ルネ・コロ、ペーター・ホフマン、ジークフリート・イェルザレム』に関する話題はこちら。『ローエングリン』のあらすじと創作の背景を併せて紹介しています。
楽劇『ローエングリン』と真の英雄 ~誰かを本当に愛したら / 昭和のヘルデン・テノールと名盤紹介

狂王と呼ばれた若く美しいバイエルン国王『ルートヴィヒ』の生涯をイケメン俳優を起用して現代的に演出した伝記映画。筆者が実際にバイロイトを訪れた時の記念写真も掲載しています。
現実と魂の居場所 映画『ルートヴィヒ』とワーグナー(バイロイト祝祭劇場の写真付き)

【小説】 ジークフリートの恋 ~臆病者には花嫁の目を醒ますことも、娶ることもできません

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