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Pour toujours(いつまでも二人で)~人生の曙光と新婚の誓い

本作は、海洋科学や土木・建築をモチーフにしたサイエンス・フィクションです。
投稿の前半に小説の抜粋。 後半に参考文献や画像・動画を掲載しています。
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第一章 運命と意思 ~ローエングリン・大堤防(3)
STORY
運河で出会ったアンヌ=マリーに一目惚れしたグンターは幸せな日々を過ごすが、実はエクス=アン=プロヴァンスの高貴な血を引く娘と知って驚愕する。しかも彼女には裕福な許嫁があり、親の厳命に逆らうことはできない。グンターは彼女の両親を説得すべく、エクス=アン=プロヴァンスの居城を訪ねるが、けんもほろろに追い返される。それでも諦められないグンターは夜の庭園に忍び込み、最後の別れを告げる。 グンターの真実の愛を知ったアンヌは生家を捨てて、グンターと共にフェールダムの干拓地に移り住む。
目次

Pour toujours(いつまでも二人で)~人生の曙光と新婚の誓い

エクス=アン=プロヴァンスの乙女

彼女の名前は、アンヌ=マリー・デュボワといった。

マルセイユの人だが、正確にはマルセイユに隣接する古都エクス=アン=プロヴァンスの生まれだ。プロヴァンス伯爵領の首都として栄え、画家ポール・セザンヌの出身地でも知られる文化の町である。

年齢は二十三歳。うお座の生まれで、昨年夏に学業を終えたばかりだという。

仕事はしていないが、人に招かれる機会が多く、ネーデルラントに来たのも一族の顔を立てる為だ。今はフィンステルベルクの親戚宅に身を寄せているが、いつまで滞在するのか、これからどうするのか、何一つ決まってないという。

それ以上は自分の事を話したがらず、家族のことも、生まれ故郷のことも、どこまで本当の事を口にしているかは分からない。

それでも彼女が高貴な人であるのは一目で分かる。

言葉も仕草も一つ一つがたおやかで、屋台でクロケットを頬張っても、浜辺でスポーツカイトに興じても、周りの女性とは品も輝きも違う。だが、決して気取っているわけではなく、店員や船頭にも丁寧に話しかけ、誰をも魅了する美しさだ。教養も豊かで、美術や文学はもちろん、時事問題、ビジネス、スポーツ、今流行りのエンターテイメントまで、どんな話題にも付いてくる。時にはシルクのように美しいフランス語でジャック・プレヴェールやアルトゥール・ランボーの詩を詠唱してくれることもあり、モーリス・ラヴェルやドビュッシー、サン=サーンスなどクラシック音楽への造詣も深い。そうかと思えば、カヌーやバギーカーに挑戦する大胆さも持ち合わせ、ふと見せる表情が*23戦乙女のように凜々しい。強く、優しく、ひたむきで、彼女への想いは深まるばかりだ。

アンヌ=マリーも、真面目で、ロマンチックで、思いやりにあふれたグンターへの気持ちを抑えることができない。彼女の属する社会の人々のように、あれもこれも持っているわけではないが、彼と一緒に居ると、野に咲く花さえ悦びに輝いて見える。

だけども、これは束の間の夢。春が過ぎれば真実を告げて、マルセイユに帰らねばならない。旅の思い出以上であってはならないのだと、強く自分に言い聞かせる日々だ。

そうして三ヶ月が過ぎ、夏の日差しが照りつけるようになると、浜辺の賑わいとは対照的にアンヌ=マリーはだんだん無口になっていった。いつものように運河沿いを散歩し、屋台でワッフルを分け合っても、彼女は暗く沈んだまま。まるで刑場に引かれる聖女のように懺悔の色さえ浮かんで見える。

そして、グンターも本当に聞きたいことを口にする勇気がない。出自を尋ねた途端、春の夢がとけて、ローエングリンのように故郷(フランス)に帰ってしまう気がして――。

その日も無言で運河沿いの小径を歩き、湖畔に広がるデンボンメルの森まで来ると、二人は木陰の土手に腰を下ろし、ぼんやりと水の流れを眺めた。

湖にはたくさんのヨットやセイルボードボードが行き交い、大勢の笑い声が風に乗ってここまで聞こえてくる。

だが、明るい日差しもアンヌ=マリーには残酷だ。それは夢の終わりを告げる兆しでもあるからだ。

両親にはさんざん帰郷を促され、こちらで世話になっている親族にも「そろそろお帰りなさい」と諭されるようになった。これ以上、言い訳を重ねて、ネーデルラントに留まることはできない。

今にも涙が溢れ、泣き崩れそうになるのを必死に堪えながら湖の方を向いていると、

「春に生まれた雛鳥が、もうあんなに大きくなったね」

二人の目の前をよちよち歩く野鴨の親子を見つめながらグンターが言った。

「時が過ぎ去るのは本当に早いわね。あの子たちも、じきに旅立っていくのだわ」

アンヌ=マリーも何気に答えたが、その声は悲しみに震えている。

「たとえ美しい季節が過ぎ去っても、君と過ごした時間は永遠だ。君が何ものであれ、僕の目にはアンヌ=マリーという女性しか映らない。たとえ離ればなれになっても、春が来る度に思い出す。小川のせせらぎ、野鴨の声、風にそよぐ花々に、いつも君の面影を見るだろう。君に出会えて本当に幸福だった。遠く離れても、君が僕を忘れても、常しえに君の幸せを願うよ」

すると、アンヌ=マリーは目に涙を浮かべ、「あなたにお話ししなければならないことがあります」と切り出した。

彼女はエクス=アン=プロヴァンスでも非常に位の高い一族の末裔で、マルセイユで帰りを待つ婚約者があった。婚約といっても親同士が合意しただけで、正式に取り交わしたわけではない。彼女が大学を卒業したら直ぐにも、という先方の希望だったが、それだけは了承しかねた。立派な人ではあるが、結婚となればまた別だからだ。

それで無理を言ってフランスを離れ、三ヶ月の約束で遠縁の家に身を寄せた。この春は人生最後の自由だったのだ。

「それで、君はその人を愛してるの?」

根源的な質問をされ、アンヌ=マリーはぎゅっと唇を噛みしめる。

「私に選択の余地などありません。私の家族は先方との経済的な結びつきを求め、先方は私たちの閨閥に重きを置いています。一族の結婚は富と権力の拡大であって、愛とは無縁のものです。それに私には一人で生きて行く知恵も力もありません。疑問に感じても、飛び立つ勇気がないのです」

「だけど、君の一生の問題じゃないか。心から愛してもない人に嫁いで、君は本当に平気なのか」

アンヌ=マリーは顔を覆い、ただ涙をこぼすだけだ。

「アンヌ。出会ってまだ三ヶ月なのに、こんなことを口にするのは性急かもしれないが、君こそ唯一無二の人だと思っている。君なしの人生など考えられないほどだ。もし君が信じてくれるなら、僕は君の両親に会いに行くし、火の山だってくぐってみせる。だから、君の正直な気持ちを聞かせてくれないか」

だが、アンヌ=マリーは頭を振り、

「あなたは特権をもった人間の恐ろしさをご存じない。人ひとりの人生など、片手でひねり潰す傲慢と利己心の持ち主です。話して通じる相手ではありません。私はあなたを巻き込み、傷つけたくない。どうか私のことなど、春の夢と忘れて……」

「それは本心かい? 本気で僕に忘れろと?」

「……」

「君が好きだ。屋台のワッフルを美味しそうに頬張る君、歓声を上げてバギーカーのハンドルを切る君、夢見るようにプレヴェールの詩を口ずさむ君。僕の退屈な堤防の話にも興味深く耳を傾けてくれるし、ワーグナーのオペラにも付き合ってくれる。君を忘れるなど到底できはしない。できるものなら、君をさらって、永遠に自分のものにしたいくらいだ。それでも君がマルセイユに帰るというなら、僕はその意思を尊重するよ。なぜって、僕の願いは君の幸せだからだ。どうか君の本当の気持ちを聞かせてくれないか。君にとって何が一番大切かを」

彼女は彼を見つめ、それが全てだった。

二人は初めて唇を重ね、互いの想いを確かめ合った。

「君が信じてくれるなら、僕はどんなことでもする。人間の意思は、この世のどんな力にも勝ると信じたい」

夏の終わり、アンヌ=マリーは一旦エクス=アン=プロヴァンスに戻り、婚約を白紙に戻して欲しいと説得を試みた。だが、先方の執心も並々ならぬもので、そう簡単には納得しない。周囲は彼女がネーデルラントに行くことを二度と許さず、ましてグンターを紹介するなどもってのほかだ。

だが、二人も諦めない。

夜の庭園にて ~君を愛してる

九月の初め、グンターは彼女の両親と直接話すためにエクス=アン=プロヴァンスを訪れた。

ところが、彼女に教えられた住所に辿り着くと、それは『家』などというものではない。どこまでが敷地で、どこからが森なのか、区別もつかないほど広大な古城だった。

さすがのグンターも息を呑み、正門の前で立ちすくんだが、再び森の小鳥がささやきかける。

《花嫁の目を覚ますことも、ブリュンヒルデを娶ることも、臆病者には出来ません。出来る者は恐れを知らない人だけ!》

グンターはアンヌ=マリーの計らいで城の当主であるデュボワ夫婦とその息子たち、従弟夫婦や大叔父らがくつろぐサロンに通された。

グンターはこの日の為に一所懸命に練習したフランス語で挨拶したが、誰も振り向きもしない。それどころか、わざと身内の会話で盛り上がり、彼が一言発する度に意地悪く笑った。彼は顔から火が出るような屈辱を感じたが、「許しを得るまで、何度でも伺います」と意思表示すると、丁重に頭を下げて部屋を出た。

アンヌ=マリーは廊下の隅でぽろぽろ涙を流し、一族の非を詫びたが、「これくらいで引き下がったりはしない。気持ちが通じるまで何度でも話すよ」と逆に彼女を励まし、一旦その場を離れた。

その後、客間に案内され、一夜の寝所を得たが、真夜中に突然数人の男が押し入り、うとうとしかけた彼を叩き起こした。男たちは問答無用でグンターを客間から連れ出すと、手荷物と一緒にミニバンの後部座席に押し込み、無言でマルセイユに向かった。そして、酔っ払いがたむろする旧市街の外れで彼をパジャマ姿のまま放り出すと、「二度と来るな(Komm nie wieder zurück!)」とドイツ語で言い放ち、夜の闇に消えた。

彼は衆目の中、パジャマ姿で呆然と立ち尽くしていたが、突如、自分の血脈に目覚めると、燃えるような目で丘の向こうを見つめた。

*24) ギービヒ家のグンターは奸計によってブリュンヒルデを娶るが、誇り高いフォーゲル家の男は愛と正義で花嫁を勝ち取る。たとえ火の山に阻まれようと、決して諦めはしない。二人の幸福の為に、厭わしい因習から彼女を解き放ってみせる。

彼は裏小路で手早く着替えを済ますと、タクシーを拾い、エクス=アン=プロヴァンスに舞い戻った。

だが、正門は固く閉ざされ、石垣にもセキュリティカメラやセンサーが取り付けられている。アンヌ=マリーに連絡しても、経緯を知れば、両親を叩き起こして抗議するだろう。そうなれば、事態はいっそうややこしくなる。

なんとか彼女ともう一度、二人きりで話せないものか。

木々に囲まれた城壁を見回した時、ふとアンヌ=マリーの思い出語りが脳裏に浮かんだ。

「子供の頃、よく東の石垣の崩れた所から抜け出して、森で遊んだわ。大木の根が石垣の奥深くに入り込んで、修復のしようがないの。それはそれは頑丈で生命力の強い巨樹なのよ。だから私はドリアード(木の精霊)の神木と思い、心から話しかけているの」

精霊の影を求めて東側の石垣に沿って歩くと、なるほど樹齢五〇〇年はありそうな巨木が石垣の向こうから大きくせり出している。その根はタコの怪物(クラーケン)のように石垣を破壊し、瓦礫の山を築いていた。

グンターは意を決して石垣の崩れた箇所に足を掛けると、一歩、また一歩と瓦礫の山を登った。何度も足を滑らせ、手の平を擦り剥きながら、ようやく高さ三メートルの石垣の天辺に辿り着くと、アンヌ=マリーの眠る東棟が目に入った。昼間、彼女が案内してくれた記憶を辿れば、二階の東端のバルコニーが彼女の部屋だ。

グンターはそろそろと木の幹を伝い、地面に降り立つと、慎重に建物に近付いた。

そして、目指すバルコニーの近くまで来た時、何かが草を踏む気配がした。  

犬だ。

それも訓練されたジャーマンシェパードで、四匹もいる。

彼らは吠えもせず、ゆっくりした足取りで彼に近付くと、隙を狙うように一斉に構えた。

だが、グンターも負けてはいない。

腰を落とし、犬たちの目を正面から見据えると、

「君らに知性があるなら、僕が敵か味方かくらい分かるはずだ。それでも喉笛に噛みつくというなら、僕だって容赦しない。あの窓の向こうには僕の大切な人が眠ってる。その人の足元で無様に死ぬなど、僕のプライドが許さない」

だが、一匹が唸り声を上げると、他の三匹も同じように唸り声を上げ、地獄の番犬のように彼を取り囲んだ。さすがに恐怖を感じ、全身に脂汗が滲んだが、よく見れば、右側の二匹は迷っている。飛びかかってくるとしたら、おそらく左端の一番獰猛そうな奴だ。ならば右に避けて、時間を稼げないか――。

じりじりと右後方に退いた瞬間、左端の犬がワンワンと威嚇し、他の三匹もそれに倣って激しく吠え立てた。

心臓が激しく脈打ち、緊張で足がもつれそうになった時、二階の窓が開き、「ケルベロス! ラドン! オルトロス! ヒュドラ! 鎮まりなさい!」と女主人の声が響き渡った。

犬たちは直ちにその場に座り込み、反省するように喉を鳴らした。

見上げると、二階の部屋の小窓からアンヌ=マリーが顔を覗かせている。

彼女は四匹の犬に囲まれたグンターの姿を認めると、「いったい、これはどういうことなの。誰が犬を放ったの」と声を震わせた。

「詳しいことを説明している暇はない。誰かが来る前に、僕は立ち去らなければならない。その前に一つだけ頼みがある。どうかバルコニーに出て姿を見せてくれないか。たとえ二度と会えなくなっても、君の姿を瞼に焼き付けたい」

アンヌ=マリーは急いでストールを羽織ると、バルコニーの外に出た。夜風の中、白い寝間着が精霊のようにたなびき、この世のものとは思えぬ美しさだ。

「今夜一晩、マルセイユの旧港で待っている。『Pour(プール) toujours(トゥルージユ)』というカフェの前だ。もし君が来てくれるなら、一生かけて幸せにする。二度と会えなくなっても、死ぬまで忘れない」

やがて庭の向こうに男たちの声が聞こえると、四匹の犬が一斉に立ち上がった。

「お願い、早く行って下さい。犬たちが私の声に戸惑っているうちに。彼らは電子笛に従います。私の命令もそこまで及びません」

「愛してる、アンヌ。君に出会えて本当に幸運だった」

グンターは踵を返すと、四匹の犬の横をすり抜け、巨木の方に走り去った。

『みなみのうお座』の宝箱 ~祖母の教え

彼の姿が闇夜に紛れると、アンヌ=マリーは速やかに部屋に戻り、ドレッサーの引き出しを開けた。大好きな祖母から譲り受けた十八世紀のアンティーク家具だ。白いマホガニー製で、金箔を施した丸い取っ手には祖母の紋章が刻まれている。引き出しは二重構造になっており、間仕切りを外すと、下段の奥から隠し金庫が現れた。

一見、黒檀の小物入れだが、上蓋は電子錠で厳重にロックされ、彼女以外の誰かが開けようとすれば二重ロックが掛かり、専門業者でなければ解錠できない仕組みになっている。慎重に上蓋を開くと、その中にもう一つ収められている黒い小箱を取り出した。小箱は螺鈿細工の宝石箱で、黒い漆地の表面には白蝶貝(しろちようがい)や鮑(あわび)といった夜光貝の装飾が施されている。内側には柔らかな黒ビロードが敷き詰められ、そこには長さ七センチ、幅三センチの純金プレートが収められていた。

光沢のある表面には双魚宮のシンボルである「向かい合う二匹の魚」が刻印され、一見、装飾品に見えるが、特殊な読み取り装置にかけると内部の情報が現れる。その電子暗号がまた別のデータを呼び出す鍵となり、暗号キーの蔓草は遙か『みなみのうお座』まで繋がっていた。

その所有権をめぐって、なんと多くの家族が諍い、憎み合ってきたことか。まるで実体のない資産にもかかわらず、親子が、兄弟が、さらなる富と権力を求めて、互いに傷つけ合ってきた。

祖母は一族の行く末を憂い、死の床でアンヌ=マリーに純金プレートを託した。その時、彼女は八歳の少女だったが、祖母の心痛を理解し、どれほど親族に脅されても、決して鍵の在り処を教えなかった。

そして今、ドレッサーの写真立てから、彼女によく似た祖母が優しく微笑みかける。紛争地で、スラムで、貧苦に喘ぐ人々に手を差し伸べてきた本物の貴婦人だ。貴族とは敬称ではない、高貴な心だと祖母は教えてくれた。そして、その呼び名にふさわしい人を知っている。たとえ称号はなくても、あの人こそ本物の貴人(ノーブル)だ。真実の愛をなくして、どんな素晴らしい人生が開けるというのだろう。

だが、現実を考えると、彼女もまた総身が震える。仕事はおろか、家事すらまともに経験したことがない。まして行く先はネーデルラント。言語も慣習もフランスとは違う。異国の干拓地に身体一つで飛び込んで、本当に幸せに暮らしていけるのか。やはりこれは夢ではないかと、もう一人の自分が警鐘を鳴らす。

そんな彼女に写真の祖母が語りかける。 

「人生には幾度となく大きな決断を下さねばならない時がやって来ます。そして、自ら下した決断の責任を誰も負ってはくれません。だからといって真実から目を背け、魂の叫びに耳を塞いでも、心の平安が訪れることはないでしょう。臆病者に真の幸福は訪れません。さあ、行きなさい。どんな時もフォーマルハウト*25があなたを護ってくれるはず」

アンヌ=マリーは夜着を脱ぎ捨てると、花模様のサロペットスカートと秋物のニットを身に着け、ダークブロンドの髪をベロアのシュシュで一つに束ねた。それから小さな旅行鞄にありったけのジュエリーと着替え、純金プレートを詰めると、歩きやすい革のフラットシューズに履き替え、一階の裏口から屋敷を抜け出した。

振り返ると、バルコニーから両親が狂ったように彼女の名を叫んでいる。一瞬、胸が痛んだが、財産や権力に対する異常なまでの執着心と虚栄心、財産目当ての一方的な婚約、一般社会などまるで顧みぬ傲岸と享楽、グンターへの常軌を逸した振る舞いを思うと、ここに留まり、両親の言いなりになることが真の幸福とは到底思えない。

(さようなら、パパ、ママ)

胸の中で静かに別れを告げると、アンヌ=マリーは踵を返し、ドリアードの神木に向かった。

子供時代の遊び場は今も鬱蒼とした枝葉に覆われ、人目から身を守ってくれる。この木に登るのは何年ぶりか、少女の頃はリスのように枝から枝を伝い、あっという間に石垣の外に出たものだが、今は茨の山のように険しく感じられる。

なかなか足が進まず、その場に立ち尽くしていると、庭園をうろついていたジャーマンシェパードの一匹が女主人の匂いを嗅ぎ付けてこちらにやって来た。四匹の中でも一番利口で忠実な犬だ。

「ラドン、お願いだから静かにして。私が合図をしたら、向こうの木の下で思い切り吠えて欲しいの。言うことを聞いてくれたら、あなたを星座の一つに数えるわ」

彼女がラドンの頭をやさしく撫でると、ラドンはクンクンと鼻を鳴らしながら彼女の腕の中で甘えた。それから三十メートル先の大木に小走りすると、その根元でワンワンと吠えた。その声につられて、警備の男たちも向こうに駆けて行く。

その隙に体勢を整えると、外側に大きく傾いた木の幹に足をかけ、一歩、また一歩と登り始めた。幾度となくスカートの裾を引っ掛け、手足を擦り剥いたが、徐々に少女時代の勘を取り戻し、動きも速くなる。木の幹を伝って、どうにか石垣を越えると、瓦礫の山をお尻で滑り降り、敷地の外に抜け出した。

ここからは車道ではなく、森の自然道を南に向かった方がよさそうだ。今にも狼が飛び出してきそうなおどろおどろしさに足がすくむが、南の空にひときわ明るく輝くフォーマルハウトが彼女の行く先を照らしてくれる。歩いては休み、休んでは星に祈りながら、四キロの自然道を歩き切り、どうにかエクス=アン=プロヴァンスの外れまで来ると、二十四時間営業の薬局の前でタクシーを拾い、いとしい人の待つ旧港へと急いだ。

Pour toujours(いつまでも二人で) ~人生の曙光

一方、グンターは旧港に面したカフェ『Pour toujours(プール トゥルージユ)』の前でぼんやりと夜が明けるのを待っている。

時折、早朝勤務の労働者や夜遊び帰りの観光客が目の前を通り過ぎるが、誰も彼のことなど気に留めないし、彼の目にも映らない。顔は涙と埃でくしゃくしゃだが、もはや身なりを整える気力もなく、じっとカフェのウッドデッキにうずくまっている。

午前六時を過ぎ、清々しい朝の光に包まれると、旧港周辺も一斉に目を覚ましたように動き始めた。バスは運行を開始し、小売店はシャッターを半開きにして営業の準備を始める。

だが、彼女は来ない。

来るはずがない。

幾多の危険を冒してまで、自分みたいに何も持たない男の所にどうして来る気になるだろう。やはりこれは春の夢だったのだ。日の出とともに彼女と過ごした季節も海の向こうに遠ざかり、全てが幻のようにぼやけていく。

だが、まだ「さよなら」は言いたくない。真昼の光が現実を思い知らせるまでは。

グンターはウッドデッキから立ち上がると、今一度、船着き場の隅々まで視線を巡らせた。涙と疲労で景色もぼやけ、もはや看板の文字も読み取れないが、そこに彼女の姿が無いことだけははっきりと分かる。今度こそ終わりだ、これが現実なのだと諦めかけた時、信じられないような光景が目に飛び込んできた。

透き通るような朝日の中に、旅行鞄を提げた彼女がちょこんと立っているではないか。花模様のサロペットスカートを風になびかせ、顔を悦びに輝かせて。

グンターは一瞬幻かと目を凝らしたが、まぎれもなく彼の恋するアンヌ=マリーだ。彼と目が合うと、彼女は淡い光の中を天使のように歩き出し、真っ直ぐ彼の方にやって来た。

「あなたと行くわ。だから、Pour toujours(プール トゥルージユ)(いつまでも二人で)」

「Pour toujours……」

二人は見つめ合い、微笑みを交わすと、互いの身体を強く掻き抱いた。夢の終わりを告げる朝の光が、今は天の祝福のように眩しく感じられる。

(これが僕の人生の曙光だ。今から本物の人生が始まるんだ)

二人はカフェで軽く朝食をとると、バスと飛行機を乗り継いで、一路、カールスルーエに向かった。

かくして英雄は火の山をくぐって、神の娘を勝ち得たのである。

本当の宝は、人間の英知と家族の団居

だが、ここにもう一つの関門が待ち受けていた。

グンターの母親はともかく、父はかんかんに怒り、「今すぐプロヴァンスに戻って、お嬢さんを返してきなさい!」と一喝した。

「アンヌさん、グンターは真面目でいい子だし、我が家も礼節を重んじる学者の家系だが、あなたのように由緒ある家柄のお嬢さんを迎えられるほど偉くもない。今からでも遅くはないから、ご両親に謝って、元居た場所にお帰りなさい」

ところが、若い二人は火口の溶岩みたいにくっついて離れない。熱に浮かされたように「必ず幸せになる」と言い張り、これには父親もたじたじだ。

ともかく、このまま結婚させる訳にいかないと、グンターの両親はドイツの珍しい土産物などを持ってエクス=アン=プロヴァンスの屋敷を訪ねたが、家の門は固く閉ざされ、何度呼び鈴を押しても取り次いでももらえない。若い二人が言ったことは本当だったと来た道を引き返そうとした時、黒ずくめの中年男がフランス語で二人を呼び止めた。そして手にしていた書類を突きつけ、「Komm raus(出て行け)」と、そこだけドイツ語で言った。

仕方なく両親はカールスルーエに戻ると、書類をアンヌ=マリーに見せた。そこには、二人の結婚を許すが、アンヌ=マリーとグンター・フォーゲルはもちろん、子々孫々、末端の縁者に至るまで、デュボワ家の財産と権利はいっさい分与せず、また、そちらからも要求しないという念書であった。

「乞食じゃあるまいし!」

グンターの父は怒りを露わにし、いつもは温厚な母も「自分の娘が可愛くないのでしょうか」と目に涙を浮かべた。

「そういう人達なのです。悲しいですけれど」

アンヌ=マリーは率先してペンを手に取ると、淡々と文書に署名した。

グンターもそれに倣い、永遠の契約書にサインする。

いつか子供が生まれても、その子はエクス=アン=プロヴァンスの家名を名乗ることもなければ、財産や特権に守られることもない。魔法でカエルに変えられた王様みたいに庶民の子として生きていく。自分が何者かも知らぬまま、カエルみたいに踏み潰されて、悔しい思いもするだろう。

だが、こんな財産や権利に何の価値がある。本当の宝は、人間の英知と家族の団居だ。たとえ相手が名家であろうと、犬のように這いつくばって、栄華のおこぼれにあずかろうとは思わない。人生に必要なことは僕が教えればいい。その為に、たくさんの書物を読み、仕事や勉学に打ち込んできたのだ。

グンターもまた自らの信念を表明するように、その日のうちにエクス=アン=プロヴァンスに郵送すると、父は若い二人に向き直り、「こうなったからには、わたしたちが支えるしかない。それほどまでに愛し合っているなら、二人で力を合わせて幸せな家庭を築きなさい」と、ささやかながら結婚式の準備をしてくれた。

母も三年前に親族の娘が袖を通したウェディングドレスを縫い直し、新しいスパンコールを取り付けてくれた。

市役所のホールで市民スタイルの式を挙げ、郊外のレストランを貸し切ってお祝いのパーティーも開いた。ミュンヘンの親族や知り合いの音楽家も駆け付け、幸せな門出を祝って弦楽四重奏曲を奏でてくれた。ハンブルクの叔父は皆とビールを酌み交わし、陽気な笑い声で場を盛り上げてくれた。

一抹の不安はあるが、父が祝福してくれたことが何よりも嬉しい。

これから一家の長として、いっそう強くならねば。

誓いを新たに、グンターは花嫁と共に再び空港に向かう。

運河沿いの小さな家 ~干拓地・フェールダム

新婚旅行はスイスのユングフラウに出かけた。

突然のことだったので長い休暇も取れず、四泊五日の慌ただしい行程となったが、登山列車に乗り、野原を散歩し、山のリゾートを満喫した。

宿泊はグリンデルヴァルトの山荘風ホテルで、部屋の窓からは切り立つようなアイガー北壁が目に迫る。数々の悲劇を生んだ過酷な山だが、今はその厳しさが人生の意味を教えてくれる。

身も心も結ばれて、二人の絆もいっそう深まると、グンターはこれから始まる何十年の結婚生活に思いを馳せながらフェーレのアパートに戻ってきた。アンヌ=マリーも狭いアパート暮らしに文句など言わず、一所懸命に食事の支度などしてくれる。

とはいえ、いつまでも1DKの賃貸アパートに暮らすわけにもいかず、一日も早くちゃんとした住まいを構えたい。不動産のウェブサイトも毎日のように眺めるが、職場から遠かったり、間取りがいまいちだったり、なかなかこれぞと思う物件が見つからない。

そんな折、サッカークラブの仲間がフェールダムの運河沿いにある小さな家を紹介してくれた。

オーナーは七十半ばの一人暮らしの女性だ。祖父母の代から住んでいるが、近々、ロッテルダムの息子夫婦の近くに引っ越すため、買い手を探しているらしい。

家は伝統的な三角屋根のレンガ造りで、赤い屋根と木張りの緑の壁が絵本から抜け出たように愛らしい。家の裏手には五十平米の庭があり、樹齢百年になるリンゴの樹が大きな枝葉を広げている。

家の周りは農地に囲まれ、隣家といえば、水路を挟んだ右隣にもう一軒、大きな二世帯住宅があるだけだ。見渡す限り緑が広がり、遠くから牛やニワトリの鳴き声がのどかに聞こえてくる。

隣家にはアラブ系の年老いた夫婦と幼い三人の孫娘が住んでいて、いつも庭先でウサギや七面鳥を追い回している。両親はいないのか、たまにそれらしき人を見かけるが、ずっと一緒に住んでいるわけではなさそうだ。それでも老夫婦の人柄はよく、三人姉妹も元気で仲がいい。

家の前には幅三メートルの運河が流れ、車一台が余裕で通れるコンクリートの橋がかかっている。土手には柵も何もないが、水嵩は大人の踝ほどしかなく、雨の多い時でも水量は膝丈くらいだ。これなら子供が近くで遊んでも、そこまで神経質になることはないだろう。

二車線の自動車道の向こうには広々とした緑地が広がり、その先には比較的新しい公団住宅が二十棟も立ち並んでいる。

緑地にはジュニア向けのサッカーコートが整備され、毎日のように近所の子供たちがサッカーに興じている。その隣には清潔なプレイグラウンドがあり、滑り台付きジャングルジム、ブランコ、シーソー、砂場など、幼児向けの遊具が揃っている。

公団を抜ければ幼稚園と小学校があり、大通りの向こうには中学校と高校もある。公団周辺にはスーパーマーケット、銀行、クリニック、行政サービス出張所など、暮らしに必要な公共施設が建ち並び、いずれも徒歩や自転車で手軽にアクセスできる距離だ。

ただ海岸線まで六六〇メートルしかなく、堤防に近すぎるのが気になったが、北の海岸線を数世紀にわたって守護してきた盛土堤防や、幅一五〇メートルのコンクリート式締切堤防が何の前触れもなく決壊するとは思えないし、一帯の水管理もハイテク設備で格段に向上している。近隣のモダンな町並みに比べたら、農地が八割を占めるフェールダムの干拓地はいささか見劣りするが、美しい緑と牧歌的な雰囲気、何より子供たちが元気に遊び回る環境は理想的だ。その点はアンヌ=マリーも同意見で、都会の利便には拘らないという。

ただカールスルーエの父だけが「もう少し水際から離れたらどうだ。いっそ内地に移った方が安全ではないか」と懸念した。だが、水害は地震や竜巻と異なり、必ず予測が立つ。自分はそれを生業にしているのだから、全力で町と家族を守るとグンターは言って聞かない。

父もそれ以上は反論せず、息子の判断に任せたが、気象庁から取り寄せたデータをどんと目の前に積み上げると、「これは脅しでも嫌がらせでもない。神が気象庁でもこう言うだろう。『早く方舟を作って逃げろ』」と最後まで懸念を示した。

幾ばくの不安を抱えながらも、グンターはオーナーの老婦人を訪ね、売買について話し合った。老婦人はお金には何の頓着もなく、家自体も築八十年の古屋であることから、破格の安値で譲ってくれた。配線や配管、樋や窓枠など、入れ替えが必要な部分も多々あるが、これだけ作りがしっかりしていれば、数十年は余裕で暮らせるだろう。

グンターはさっそく近くのホームセンター――これから頻繁に通うことになる『アプフェル』で工具を買い揃えると、自分では修理の難しい箇所だけ工務店に依頼して、家のリフォームに取りかかった。

間取りは、一階がリビング、キッチン、手洗い、二メートル×三メートルの物置部屋、二階にシャワー付きの主寝室、大小の居室、バスルームがあるだけで、決して広くはないが、将来、子供が二人生まれても十分に対応できる。それに物置のようなスペースでも、自分の仕事部屋が持てるのは有り難い。

キッチンはアンヌ=マリーの希望通りカントリー風に仕上げた。出窓には数種のハーブを育て、楕円形のダイニングテーブルには赤いギンガムチェックのテーブルクロスをかける。「自分でお菓子を手作りしたい」という彼女の願いに応え、クレームブリュレ用のバーナーも買った。もっとも、それを使いこなせるようになったのは数年先のことだったが。

リビングのインテリアはシックな深緑を基調とし、アクセントにアンヌ=マリーの好きな印象派の額絵やアンティークの小物を飾った。AVセットは少し奮発して大型の壁掛けTVとサラウンドスピーカーを購入し、彼女と一緒にオペラや映画を楽しめるよう、幅広のカウチソファも置く。

暖炉はガス火のフェイクではなく、本物の焚き火だ。薪を割るのは一仕事だが、昔の男はみな経験してきたことだ。それにジークフリートの気分を味わえる。

ガレージには日曜大工に使うテーブルカッターや電動ドリルを置いて、ちょっとした森の鍛冶場だ。最初の作品はキッチンの調味料棚。いくつかの木板を組み合わせるだけで簡単にできた。いつか子供の椅子やオモチャも作ってみたい。あれもこれもと夢が膨らむ。

十一月半ばには引っ越しも完了し、車も赤い中古のファミリーカー『OPERA(オペラ)』に買い換えた。これでいよいよ新しい暮らしの始まりだ。

休日には庭の土を耕し、チューリップやクロッカスの球根を植える。春になったら、日当たりのいい場所でトマトやレタス、ブルーベリーやラズベリーを栽培しよう。余裕があれば、ビニールハウスも作りたい。

庭の西側に深々と根を下ろした樹齢百年のリンゴの木は、しっかり手入れすれば、今も大きな実を付けるという。子供が生まれたら、ジャムを手作りし、ここにブランコを吊って遊ばせるのだ。

子供――どんな子だろう?

今は想像もつかないが、いつかは顔を見るんだな。

できれば男の子がいい。一緒にサッカーをしたり、キャンプを楽しんだり。いつか傷つき、疲れ果てても、いつでも気軽に帰れるよう、温かい家庭を作りたい。どれほど人生が困難でも、家さえあれば何度でもやり直せる。この家が我が子の人生の支えとなるように――。

一方、アンヌ=マリーは馴れない家事に一苦労だ。掃除はともかく、料理に四苦八苦している。ジャガイモやニンジンの皮の剥き方、ハーブと調味料の使い方、新鮮な魚の選び方から火加減の見方まで、手取り足取り教えなければならない。公共料金の支払い、スーパーのセルフレジ、クリニックや行政サービスの手続き、一人ではできないことがたくさんある。

オランダ語を習得するのも一苦労だ。ここには大都市のように外国人向けのスクールもないので、オンライン講座で必死に学んでいる。

辛いだろうに、決して弱音を吐かない。

前から薄々感じていたが、芯は戦乙女みたいに強いのだ。

ある日、仕事から帰ってくると、キッチンでアンヌ=マリーがしくしく泣いている。

どうやら揚げ物を作ろうとしてサラダ油に引火したらしい。慌ててレタスや人参を投げ込んだが、水と油が飛び散り、そこら中べとべとだ。その間にスープは吹きこぼれ、サラダに使う野菜もなくなり、さすがに打ちのめされたらしい。

「これほど何も出来ないとは思わなかった。自分が情けない」

アンヌ=マリーは目にタオルを押し当て、激しくしゃくりあげる。

「焦らないで、アンヌ。夕食が無いなら、宅配ピザを頼めばいい。スーパーに行けば、パンでも揚げ物でも何でも売っている。僕は家政婦と結婚したんじゃない。君と一緒に暮らせるだけで幸せなんだ。何でも少しずつ習得すればいい。僕たち、これから何十年も一緒に居るんだよ」

そう、『何十年』だ。

隣の老夫婦みたいに皺だらけ、白髪だらけになっても、共に畑を耕し、七面鳥の世話をして、孫の成長を楽しみにしながら静かに人生を終えていく。これから先の長い営みを思えば、一食作り損なったぐらい何だというのだろう。生きて、生きて、最後まで生き抜いて、愛を分かち合う方がずっと大切だ。

グンターの励ましにアンヌ=マリーも気を取り直し、二人で手早くキッチンを片付けると、近くのバルに出掛けた。

すでに朝晩の冷え込みは厳しく、北海から流れ込む寒気が霙(みぞれ)まじりの雨を降らせるが、家の中は春のように温かい。

仕事から帰って、夕食を終えると、一緒に劇場中継を見たり、暖炉の前で好きな小説や絵画について語り合ったり。アンヌ=マリーも毎日が夢のように幸せだと喜んでくれる。グンターにはそれが何よりの支えだ。

そうして一日、また一日と新婚の日々は過ぎ、雪のちらつく季節になった。

サンタクロースの代わりにやって来たのは、もっと素敵なサプライズだった。

【参照】 エクス=アン=プロヴァンスについて

アンヌ=マリーの出身地である「エクス=アン=プロヴァンス」は実在の町で、南フランスのプロヴァンス伯爵領の主都として栄えてきました。
画家ポール・セザンヌを筆頭に、芸術の町でも知られ、市内には、セザンヌのアトリエ、グラネ美術館、音楽祭で有名なサンソヴール大聖堂など、伯爵領らしい文化施設が存在します。

「エクス=アン=プロヴァンスの郊外に貴族の館が存在する」というのは、当方の創作ですが、そうした建物があっても不思議ではありません。

内情は多分にデフォルメして描いていますが、漫画『ベルサイユのばら』にも登場するプロヴァンス伯をちょっとばかり連想して頂けると、分かりやすいかと思います。

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