海洋情報ネットワーク構想 ~情報共有と知的基盤の重要性

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【社会コラム】 知的基盤の重要性 ~情報共有と知識の普及

前述の『情報共有が社会と産業の発展を促す ~知的基盤の強化と組織の透明性』でも説明したように、社会の安定と発展の為に、正しい情報の共有と普及は不可欠なものです。

ソースコードの無料公開や共同編集が活発なGitHubのように、縦横に拡充する情報プラットフォームもあれば、省庁の配布物のように体系化された情報が無償で提供される公的サービスもあり、その為のツールやユーザーインターフェイスも、これからますます進化しそうです。

海洋に関しては、既に様々な情報共有サービスが展開されており、日本では海洋開発研究機構(JAMSTEC)のデータアーカイブ、アメリカでは海洋大気庁などが最たるものですが、それ以外にも、研究論文のPDF、YouTubeの公式チャンネル、企業や研究開発機構のウェブサイトなど、一般人でも様々な形で情報を入手することができます。

できれば、それらが一元化されて、Googleみたいに、小さな検索窓に「海底鉱物資源」と入力すれば、世界中の様々な研究機関や企業のデータベースから情報を取り出せる……というのが理想ですが、そうなると、年間数十億の予算ぐらいでは到底間に合わず、「法律はどうするの」「管理は誰がするの」「有償・無償の区分は何を基準にするの」等々、様々な問題が出てきます。グローバルな知的基盤となると、Google Republicみたいな巨大組織と資金が必要になるでしょう。

本作にも海洋情報ネットワークのアイデアは登場しますが、人口10万足らずのコミュニティの話なので、Google RePublicほどの規模は必要ありません。

だからこそ、開発が進み、人口が膨れ上がる前に知的基盤を強化する、というのが本作の主旨です。

【小説】 海洋情報ネットワークの構想

海底鉱物資源の採掘に成功したのも束の間、海の惑星アステリアの豊富な鉱物資源に目をつけて、鉱業界の巨人、ファルコン・マイニング社が乗り込んでくる。

マイニング社が動けば、トリヴィアに巣くう新興勢力(ニューマネー)もアステリアになだれ込み、自由公正な空気が侵害されるのは必至だ。

マイニング社に恐怖するリズの願いを受けて、ヴァルターはアステリアの開発史を振り返り、マイニング社の一党支配を許したのは、宇宙文明の共有の資産である稀少金属ニムロディウム市場における杜撰な情報管理と隠蔽体質、大衆の無知、無関心であることに気付く。

寡占を防ぐには、海洋社会に知的基盤を強化し、知識の普及に努めると共に、情報の透明性や公共性を高めるしかない。

ヴァルターは『海洋情報ネットワーク』の構想を立てると、海洋行政や海洋産業の関係者の前でプレゼンテーションを行う。

【リファレンス】 知的基盤としての情報ネットワーク

『情報ネットワーク』と言うと、検索ポータルやキュレーション、クラウドサービスを思い浮かべる人も多いと思いますが、次世代に求められているのは、「サイロ化したデータをいかに統合して、効率よくシェアするか」という理念と技術です。

組織内のサイロ化はもちろん、業界内のサイロ化も顕著です。

分かりやすい例え話として、院内感染の情報共有があります。

A病院、B病院、C病院とも、院内感染の防止に取り組み、基本となるガイドラインも共通しています。

しかし、どこで、どんな症例が発生するかは、人と状況によりけりです。

そんな時、症例や対処法について、瞬時に情報共有することができれば、業界全体の技術向上に繋がりますね。

A病院では、術後の70代の女性が○○の症状を引き起こし、▲▲という抗生剤で対処した。

B病院では、病室の離れた患者間で院内感染が発生し、病棟内のスタッフで次のような対応を行い、早期解決を図った。

C病院では、■■を投与中の患者に、○○のような症状が現れ、次のように治療計画を見直した。

こうした症例データベースは、広く共有されることで、公的な医療に役立てられます。

しかしながら、A病院のIT担当者は○○主義、B病院のIT担当者は外注、C病院のIT担当者はデータがどこにどのように格納されているかも知らない……となると、各病院で有意義なデータを収集できても、一箇所で閉じてしまって、水平に有効活用することができません。

B病院のやり方を知っていたら、C病院でもすぐに対処できたのに!

瞬時に情報が拡散するIT時代に、もったいない話ではありますね。

もちろん、共有すべきデータと、情報資産に値するデータでは、扱いが全く違ってきますが(このあたりは後半に記述しています)、今後は、災害情報や防災対策のように、社会に有用な情報は広く、瞬時に共有できる知的基盤が重要になってきます。

それは突き詰めれば、透明化や公正にも繋がっていく、という話です。

こちらのページに象徴的なイラストが掲載されていますので、興味のある方はぜひ。
それぞれが自分の縄張りに籠もって、自分一人を相手に作業しているイメージです。横の連携がまったくないので、大量のデータも活用できません。

実際の海洋情報共有サービス

海洋情報管理、および、情報基盤に関する元ネタはこちらです。

残念ながら、どこのURLからクリップしたPDFファイルか分からないので、EVERNOTEの公開リンクを貼っておきます。興味のある方は、ぜひご一読下さい。

海洋管理のための海洋情報の整備に関する研究 日本水路財団

海洋情報ネットワーク

海洋情報ネットワーク

海洋基本計画への提案 ~海洋技術フォーラム~

海洋基本計画への提言
海洋基本計画

「海洋情報ネットワーク」の後半に書いてますが、海洋のフィールドは非常に幅広い。学術や産業はもちろん、外交や国家戦略も深く関わってきます。(アステリアは国境がないので、国益に関する話は無いけれど)
「この分野だけ」と区分けできないのが海の難しさであり、また可能性の幅広さでもあります。

海上保安庁の一部門として、『海洋情報クリアリングハウス』が存在します。(海洋情報ネットワークのモデルではありません)

海洋情報クリアリングハウス

こちらはアメリカの海洋大気庁のオフィシャルサイト。

海洋大気庁

海洋大気庁

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