あらすじとキャラクター紹介 作品の概要

【6】 生命の始まりは微生物 ~今日の利益か、数億年後の生命か

生命の始まりは微生物 海の本当の価値が分かるのは、あんたの会社が潰れて、人類が滅び去ったその後だ
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海洋小説 MORGENROOD -曙光 より

「だったら、あんたが見殺しにした微生物は口を揃えてこう言うだろう。『今は目に見えないが、アステリアには十億年の生物学的価値がある』。生命の進化は文明の進歩より緩慢だ。だが確実に変化している。人間が介在しなければ、アステリアも何十億年という歳月をかけて独自の進化を遂げるだろう。あんたら事業家は、実利に結びつかないものは何でも『無駄』『無益』と切り捨てるが、アステリアの本当の価値が分かるのは、あんたの会社が潰れて、人類が滅び去ったその後だ」

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【科学コラム】 生命の起源と海の価値

古来より、生命の起源について、様々な説が取り沙汰されてきました。

宇宙から有機物を含む小天体が飛来して、地球に生命の素となる物質を供給した、という説。

プレ生命ともいうべき微少な存在が突然変異的に生命活動を営むようになった、という説。

はたまた宇宙人の植民地化説まで……。

宇宙人の植民説はともかく、天体衝突説、突然変異説、どれもが本当で、どれもが真実という気がします。

生命誕生に至る道筋は一つではなく、様々な要素が複合的に絡み合い、何億、何十億という時の積み重ねを経て育まれたもの。

どの要素が欠けても成り立たないし、どのプロセスを抜かしても、結実には至りません。

全ては歯車のように影響し合い、巨大な潮流を創り出す。

宇宙的な時間の流れから見れば、人類の栄枯盛衰などほんの一瞬に過ぎないし、まして個人の寿命など、ろうそくの炎みたいに儚いもの。

にもかかわらず、人の心は宇宙より広いと思えるのは、人間の内側にも何かを創り出すエネルギーが満ちているからではないでしょうか。

【資料】 海底鉱物資源の採掘と環境破壊

小説では、主人公のヴァルターが環境破壊をネタにアルに噛み付きますが、実際、海底鉱物資源の採掘が海洋環境の破壊であるとする主張はあります。

洋上プラットフォームからの重油や産業廃棄物の流失
タンカーや石油リグでも問題になっています。

鯨やイルカなど、海洋生物への騒音被害
海の中では音波は遠くまで伝わりますから、イルカのように超音波でコミュニケーションをとっている生物への被害が懸念されます。

破砕機や集鉱機が海洋性植物までカットしてしまう
海底の重機には植物と鉱物を選別する機能はありませんから、貴重な海洋性植物の群生を破壊する可能性は高いです。

地学的にもユニークな熱水噴出孔を破壊する
たとえ活動を終えたデッドチムニーでも、地学的にはもちろん、生物学的にも貴重な存在であることに代わりありません。海底鉱物資源の採掘は、これらを根こそぎ破壊しますので、様々な悪影響が予想されます。

ミクロの生命圏を脅かす
目に見えなくても、海底には様々な生命が存在します。たとえ微生物でも、海洋システムの一端を担う貴重な存在です。未だ解明されていない部分も多いので、たとえ水深数百メートル、数千メートルの海底であっても、これらの生命圏が破壊された時の影響が皆無とはいえません。

作中では「ヘリクツばかり並べおって」と苦言を呈していますが、ヴァルターの主張も決して誤りではないのです。

海底鉱物資源の採掘による海洋環境の汚染

海底鉱物資源 採鉱システム

下記のリンクでは、海底鉱物資源の採掘が海洋生物や環境に及ぼす悪影響について動画で紹介しています。

Can deep-sea mining avoid the environmental mistakes of mining on land?

こちらは2019年にNautilus社が海底鉱物資源の採掘機(大型重機)を実験的に稼働させることについて、環境破壊――とりわけ生態系への悪影響を危ぶむ声。
未だかつて、誰も試みたことがないだけに、どれほどの悪影響が出るかは想像の域を出ない。コメントの中には「海底鉱物資源の採掘は、河川のドレッジと同様。生態系を破壊する」といった怒りの発言がいっぱい。

アステリアの海には「微生物以外はない」という設定なので、ガンガン研究開発を推し進めていますが、現実には、大規模な生命圏の破壊が生じると思います。
それを保護するか否かについては、こちらをご参照下さい。

Is deep sea mining vital for a greener future – even if it destroys ecosystems?

【動画】 地球と生命の誕生

地球そして生命の誕生 【HD】。現在の地球の成り立ちと生命誕生の過程が分かりやすく描かれています。

地球と生命の進化を知る為にも、是非ご覧下さい。

特に、含水鉱物と上部マントルの相互作用により、徐々に地球の環境が生物の繁殖にふさわしい状態に整っていく過程は「奇跡」というより他ないです。そしてまた、幾多の試練を乗り越えて、今に生き延びたDNAの進化も素晴らしい。「人間が生きる」というよりは、DNAの複製の結果ですわな。
人間の意思とは無関係に、DNAが生き延びようとする。
ゆえに、生命も、最後まで続くのです。

【小説】 生命の始まりは微生物 ~今日の利益か、数億年後の生命か

第1章 運命と意思 ~フォルトゥナ号(6)
物語

優秀な潜水艇パイロットでありながら、自暴自棄を起こしてトレーラーに引きこもるヴァルターの元にアルが訪ねて来る。アルの海洋開発に対して、ヴァルターは微生物の億単位の宇宙的価値を説いて、アルを愚弄する。アルは「屁理屈だけは超一流。くだらんプライドだ」と嘲り、「君の負い目は海でしか返せない。それが運命だ」とヴァルターを発奮する。

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