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【48】鉱業権と採鉱 ~宇宙の領土はいかなる国家にも属さない 鉱物資源は誰のもの?

鉱業権と採鉱について ~大企業の寡占と情報共有のアイデア
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海洋小説 MORGENROOD -曙光 より

「なぜ、そこまで一局集中したんです?」

「Anno Domini(西暦)に制定された国際宇宙開発法『宇宙の領土はいかなる国家にも属さない』という古びた一文が、逆に多国籍企業グループに有利に働いたからよ。本来、平和や協力を目的とした『超国家的』の前提が、彼らに都合のいい無政府状態を生み出したの。問題が可視化した時には司法機関でさえ抑えが効かないほど肥大し、今でも根っこの部分は変わってないわ。国や民族にとらわれない『自治領』というスタイルが理想の新社会という人もあるけれど、差別や格差は依然としてあるし、巨大資本のよる支配と従属は何も変わってないのよ」

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鉱業権と採鉱

鉱物資源は誰のもの?

たとえば、あなたの家の庭先で金鉱が見つかった場合。

どうすれば、あなたの権益は守られるでしょうか。

金鉱が隣の家の庭先にも続いている場合、金鉱は誰のものですか?

国家が、「我が国の領土で見つかった金鉱だから、それはあなたのものではなく、国のものである」と主張した場合、あなたの利益はどうなりますか?

その金鉱は、先に見つけた調査会社のものでしょうか。それとも、土地の所有者である、あなたのものでしょうか。

こうした様々な面倒を法的に解決するのが鉱業権です。

鉱業法は絶対的なものであり、国が「我が国の領土で見つかった鉱床は、国のものである」と定めていれば、たとえ土地の持主があなたでも、第一発見者が調査会社であっても「自分のもの」と主張することはできません。

所有にも、生産にも、開発にも、様々な規約があり、「うちの庭先で見つかったから、全部うちのもの」「我が社が先に見つけたから、全部我が社のもの」というほど単純ではないんですね。

本作では、JOGMEC 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の資料を参考にしています。

JOGMECの活動は、「石油・天然ガス開発」「金属資源開発」「石炭資源開発」「地熱資源開発」「資源備蓄」「鉱害防止支援」など多岐にわたり、公式サイトやニュースレターを通して、鉱業、エネルギー資源に関する最新情報を入手することができます。

日本は、オーストラリアやチリのような鉱業大国と異なり、操業規模も小さいので、一般にはなかなか馴染みがないですが、鉱業は文明の根幹を成す重要な産業です。工業の「ものづくり」を技術の要にたとえるなら、鉱物資源は、技術や知識を形にする、魔法のマテリアルです。(参考→ 【1】 文明の根幹を成すレアメタルと鉱物資源問題 ~ニムロディウムとニムロデ鉱山

一方で、「紛争メタル」が問題視されているように、鉱物資源は世界各地の紛争の火種となり、武力勢力の資金源にもなっています。

本作と通じて、少しでも関心をもって見て頂ければ幸いです。

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ニュースリリース | 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構[JOGMEC] JOGMECは、カーボンニュートラル社会の実現をふまえた資源開発の支援によって、資源・エネルギーの安定供給・確保に貢献していきます。

日本の鉱業権について

日本における鉱業権は、JOGMECにおいて次のように定義されています。

(1) 鉱業権の意味と態様:石油、天然ガス、石炭、金属鉱物などの地下に存在する鉱物を探鉱・開発・生産し、生産物を取得・処分する権利。

いずれの国においてもこの権利は排他的なものとして法的に明確化され、特定地点の特定鉱物を探鉱・採掘する権利を持つ者はだれであるかは一定の法的手続により明示されており、その特定者すなわち鉱業権者以外が当該鉱物を採掘・取得することはできない。この権利の源は、そもそも地下に天然に存在する鉱物はだれのものであるかについての法理に由来するが、これには二通りあり、英米法では土地の所有権はその地下にまでおよび、地下の鉱物はその直上の土地の所有者の所有物であるとしたのに対して、欧州大陸の国々では地下の鉱物は土地の所有権とは別で、国またはその主権者である国王のものであるとの法理が展開され確立されてきた。これら後者(大陸法系)の国では国がその鉱物の鉱業権を特定の者に免許するという手段をとり、その手続と付与される権利およびそれに伴う鉱業権者の義務を定める鉱業法を制定している。明治初期にドイツ法の体系を導入したわが国の鉱業法は「無主の鉱物は国に属する」と規定して、大陸法系の法体制をとっている。

鉱業権について JOGMEC

興味深いのは、「鉱物資源(天然ガスや石油など地下資源も含む)は誰のものか」について、二通りの考え方がある点です。

本作に喩えれば、アステリア星のローレンシア海域の海底で、有価な鉱物資源が見つかった場合

① ローレンシア海域で海洋開発を手がける権利者の所有物とみなす

② アステリア星の所有者はトリヴィアなのだから、トリヴィア政府の所有物とみなす

二通りの考え方があります。

本作では②を採用しており、ローレンシア海域で海洋開発を手がけるMIG(アル・マクダエル)が、トリヴィアから開発権をリースする方式です。

現実社会においても、地下資源は誰のものか、国や地域によって定義がまちまちなので、齟齬も生じます。

資源開発においては、技術はもちろんのこと、法的な問題をクリアしない限り、調査もできないのが実状です。

JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェ...
鉱業権 [こうぎょうけん] JOGMEC石油・天然ガス資源情報ウェブサイト

鉱業法について

こちらは、鉱業法の理解にあたって、非常に参考になったPDF資料です。

「現行の鉱業法制について」「関係基礎資料」「各国制度の概要」の三章からなり、法制に基づく開発計画とその手法、諸外国の事情など、図解入りで分かりやすくレポートされています。

採鉱プラットフォーム・ミッション開始
物語

採鉱システムのプロジェクト・サブリーダー、マードックから設計図を受け取ったヴァルターは、プリントアウトする為に総務部に足を運ぶ。 総務部長で、マードック夫人のカリーナは彼の印刷を手伝いながら、原稿の鉱業法やニムロディウムをめぐる鉱業寡占の暗黒史について語って聞かせる。 アル・マクダエル理事長が老齢になれば、誰が現場を支えるのかと危惧するカリーナに対し、ヴァルターはファルコン・グループの一党支配の対抗策として、海洋情報ネットワークの構想を口にする。 カリーナは「すぐに理事長に話すべき」と勧めるが、これ以上、関わりを持ちたくないヴァルターは逃げるようにその場を後にする。

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【49】 潜水艇からの目視が重要な理由 ~海底採鉱区の地形と深層流について 採鉱システムの接続ミッションを前に、スタッフの半数は水中無人機による完全自動化を主張するが、潜水艇パイロットのヴァルターは採鉱区の地形と深層流に着目し、目視の重要性を説く。資料として『潜水調査船の技術 ~覗き窓と視野 / 深層流(底層流)と海底鉱物資源』を動画や画像で紹介しています。
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