あらすじとキャラクター紹介 作品の概要

【13】 魂の幸福とは、自身を肯定し『それでよし』と思える気持ち

QUOTE 魂の幸福とは、「これでいいのだ」と思える気持ち
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海洋小説 MORGENROOD -曙光 より

「自己満足」と「肯定」は違う。

肯定は、自分自身にとどまらず、この世の全てを包括した生の賛歌だ。世の中の矛盾も、身を切るような不運も、ありのままを受け入れ、生そのものを楽しむことができる。

生を肯定できなければ、何を得ても虚しいし、失敗すれば損に感じるだけだろう。

逆に、どれほど周りから劣っても、思う通りに生きられなくても、心の底から『これが生だったのか、よし、それならもう一度!』と思えたら、あらゆる苦悩から解放され、生きることを楽しむことができる。

「だから、ヴァルター。皆と違っても、上手く出来ないことがあっても、君が心の底から『これが生だったのか。よし、それならもう一度!』と思えたら、それが本当の魂の幸福だ。辛いことがあっても、これが自分の人生だと胸を張って生きられるようになる」

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目次 🏃

【コラム】 自分に『よし!』と言えますか?

人間がこの世で生きていく上で、一番辛く感じるのは『劣等感』ではないでしょうか。

周りを見回せば、社会的にも、能力的にも、自分より優れた人はたくさんいますし、容姿、財産、住まい、肩書き、アップロードした写真や「いいね」の数まで、比較すればきりがありません。

それは時に妬みや絶望となって心を蝕み、本来、その人が持っている能力まで損ねてしまいます。

本作では『言葉の問題』にフォーカスして、生きる自己肯定について説明しています。

息子ヴァルターの言葉の問題に気付いたグンターは、「今直さなければ、将来落ちこぼれて、大変な不幸になる」と考え、あちこちの医療機関や児童施設を訪ねて回ります。それは決して強制や否定ではなかったのですが、結果的に、息子の気持ちを傷つけ、悪い方に追い込んでしまいます。

そして、ようやくオステルハウト先生という理解力のある先生に巡り会い、問題克服の突破口が開けるのですが、身内の中で改善しても、社会に出れば否応なしに周りと比較され、苛められます。

劣等感に苛まれ、生きる自信を無くしたヴァルターは「死にたい」と言い出して父親を慌てさせますが、それに対して『自己肯定』の精神を説いたのがお祖母さんでした。

自己肯定の精神は、代々、読み継がれたニーチェの著書『ツァラトゥストラ』のテーマでもあります。

「この人生をもう一度生きてもいい(永劫回帰)」と思えるほどに、自分自身と生きることを愛する。

それが本当の意味での問題解決=自己超克だと、悩むグンターに言って聞かせるのです。

そして、そのことをヴァルターにも伝えようとしますが、小さい息子に永劫回帰の思想など分かるはずもありません。

そこで『永遠の円環リング』という一つの比喩を用いて、永劫回帰の考えを教えようとします。

それが後々、『円環の海洋都市=リング』という形に結晶するのが本作の主旨です。

人生に正解はない……と言われますが、自己肯定できる人生と、できない人生の間には大きな開きがあります。

たとえ言葉に問題があっても、容姿や能力で他より劣ろうと、自分で自分に「よし」と言えて、もう一度、生きてもいいなと思えるほど、その人生を楽しむことができたら、それは何ものにも脅かされることのない、最高の幸福ではないでしょうか。

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【小説】 魂の幸福とは、自身を肯定し『それでよし!』と思える気持ち

第1章 運命と意思 ~ローエングリン・大堤防(6)
物語

言葉の問題を克服するが、級友に『鼻づまり』と馬鹿にされ「死にたい」と打ち明けるヴァルター。父親のグンターは何と励ませばいいのか分からない。母はニーチェの『ツァラトゥストラ』の冒頭を語り、肝心なのは自身を肯定し、「それでよし」と思える気持ちだと諭す。

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【12】 言葉の問題は自尊心を傷つける ~大切なのは自分自身を好きになること ⑮ 発音異常をきっかけに息子は場面緘黙症になっていく。グンターは言葉の問題を治そうと躍起になるが、症状は悪化するばかりだ。オステルハウト先生のスピーチセラピーを知り、大切なのは子供が自分自身を好きになることと諭される。心のコラム『言葉とは、人間そのもの』、スキャットマン・ジョンと英国王のスピーチについて紹介しています。
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【14】 人生の半ばにおいて、人生は私を失望させはしなかった ~ニーチェの『悦ばしき知識』より 言葉の問題を乗り越え、サッカー仲間もできた息子ヴァルターの姿に、グンターはようやく苦難を抜け出したことを実感する。一方、締切堤防の補強工事をめぐって自治体と対立。水害の脅威が迫っているのに可動式台防潮水門の改修工事が優先される。ニーチェの『悦ばしき知識』の執筆の背景と名言を紹介。コラム『人生は私を失望させはしなかった』と併せて。
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