MORGENROOD
One Heart, One Ocean
概要
海洋小説 MORGENROOD 《曙光》 は、「海底鉱物資源」と「海洋都市(清水建設のマリネーション構想)」に着想を得て1997年より情報収集を始め、2017年9月に校了しました。
ジャンルはサイエンス・フィクションですが、人間ドラマに重点を置いた青春ストーリーに仕上げています。ひねモグラの潜水艇パイロットがカリスマ経営者に見出され、恋と仕事を通して再起するまでの話です。
本作は、日本の深海研究の第一人者である、堀田宏先生に献呈しています。
あらすじ
近未来。
みなみのうお座に打ち上げられた惑星探査機パイシーズが未知の物質《ニムロディウム》を持ち帰る。耐熱性や加工性に優れた驚異のレアメタルは工業技術を著しく発達させ、宇宙開発を促進するが、鉱山会社ファルコン・マイニングが世界最大の鉱床を手にしたことから、ファルコン・グループによる寡占が始まる。
一党支配に風穴を開けるため、特殊金属業界の雄であるMIGの長であるアル・マクダエルは、惑星表面積の97%が海洋で占められたアステリアに赴き、水深3000メートルの海底に眠る鉱物資源の採掘に乗り出す。
ところが、本採鉱を前にプロジェクト・リーダーが失踪。急遽、穴埋めが必要になったアルは、半年前に解雇された潜水艇パイロットのヴァルター・フォーゲルを雇い入れる。希有な技能を持ちながら、故郷の大洪水で最愛の父と生家をなくしたショックからいまだ立ち直れず、再建コンペで仲間の信望を失ったことから、頑なに心を閉ざし、アルにも反抗的だった。
しかし、アルの愛娘リズと恋に落ちたことから状況は一変。運命のシナリオも大きく書き換えられていく。
海底鉱物資源の採掘は成功するのか。
莫大な鉱物資源は社会を豊かにするのか。
そして、ヴァルターの胸の奥底に秘められた海洋都市《リング》の行方は――。
現存の海洋科学や土木・建築の技術を取り入れ、リアルに仕上げた本格SF小説です。
章立て
作品に登場する海洋技術や土木・建築について、動画やイラストで紹介しています。
画像をクリックすると、タイトル一覧にジャンプします。(第1章と第2章を中心に掲載)
試し読み(PDF版)
上巻の冒頭部を縦書きPDFで公開しています。Kindleストアでも試し読みできます。
👀 全画面で見るキャラクター紹介
- アル・マクダエル
特殊鋼メーカー『MIG』のカリスマ経営者で、「拾いの神」の渾名を持つ。ファルコン・マイニング社に最愛の者を傷つけられた恨みもあって、アステリアの海底鉱物資源の採掘に乗り出すが、開発の過程で社会的使命に目覚め、アステリアの産業振興に尽力する。周囲には賢哲の人と仰ぎ見られ、信望も厚いが、娘にはめっぽう弱く、高価なスポーツカーやプリンセス人形を買い与える親馬鹿な一面も併せ持つ。四歳年上の姉にも頭が上がらない。本作では『運命』の象徴。タヌキに似た風貌で、陰の愛称は「タヌキの父さん」。
- ヴァルター・フォーゲル
本作の主人公。ネーデルラントの干拓地に生まれ育ち、土木技師の父親と、エクス=アン=プロヴァンスに続く高貴な血筋の母親をもつ。
四カ国語の複雑な言語環境に育ち、難読症やコミュニケーション障害を呈したことから、子供ながらに将来に絶望し、希死念慮に憑かれるようになる。
13歳の時、大洪水で父親と生家を亡くし、顔が歪むほどの心的外傷に陥るが、潜水艇のパイロットを志し、故郷の復興ボランティアに打ち込む中で、心の傷を克服しようとする。意思が強く、行動的だが、「見かけによらず、ノミの心臓」と喩えられる繊細さも併せ持つ。
ハンサムだが船乗りゆえに女性に縁が無く、「最初から好きでないのはお互いさま」を免罪符に港の女性と一夜限りのお付き合いを繰り返す。
帰る場所を持たず、三度の食事を目当てに船に居着いていることから、『さまよえるオランダ人船長』と呼ばれる。- エリザベス・マクダエル
『リズ』の愛称をもつ、アルの一人娘。美人で聡明だが、男性経験ゼロで、自他とも認める『パパっ子』。お伽噺やTVドラマが大好きで、憧れの人は「キャプテン・ドレイク」。ドレイクを演じた俳優に似ているという理由で、ヴァルターに一目惚れし、アルの反対を押し切ってアステリアに居着く。漠然と自立に憧れていたが、ヴァルターと行動を共にし、アステリアの現実を目の当たりにするうちに政治に目覚め、海洋開発財団の理事長として積極的に発言するようになる。
- グンター・フォーゲル
カールスルーエ出身の土木技師。幼少時は内気で、火山学者の父親に気兼ねする日々だったが、ネーデルラントのアフシュライトダイク(締め切り大堤防)を目にして、人間の意思の力に打たれ、治水に携わるようになる。ワーグナーの熱烈なファンでもあり、英雄ジークフリートの如く、高貴な家の娘であるアンヌ=マリーを手に入れる。息子ヴァルターの言葉の問題に心を痛め、救いを求める過程で、ニーチェの永劫回帰の思想を知り、「魂の幸福とは、人生に『よしもう一度』と言える気持ち」と説くようになる。大洪水の夜、決壊寸前の堤防を守りに戻って、命を落とす。
- アンヌ=マリー・デュボワ
ネーデルラントに旅行中、グンターと恋に落ちる。実家はエクス=アン=プロヴァンスの名家で、裕福な婚約者もあったが、グンターと駆け落ちし、干拓地フェールダムの運河沿いの家で暮らすようになる。グンターの死後、ヴァルターを連れて故国フランスに戻るが、生活に困窮し、かつての婚約者と再婚する。一見可憐だが、本質は戦乙女(ワルキューレ)で、人生の困難に立ち向かう気丈な母親。聡明で、教養も深いが、男に無知で、思春期のヴァルターに対する接し方が分からず、母子関係をこじらせる。みなみのうお座にまつわる秘密の隠し財産を持つ。息子の結婚が生き甲斐。
- セス・ブライト
アステリアでアル・マクダエルの片腕を務めるクールな専務。「僕は誰の味方でもない」というスタンスで、アル、ヴァルター、リズ、その他の人間関係のバッファー役となる。実は壮絶な生い立ち。
- ロバート・ファーラー
ファルコン・マイニング社の社長。『ネンブロットの蛇』と恐れられた父ドミニク・ファーラーの後を継いでマイニング社のトップに立つが、女好きで、詰めの甘い性格。
- フランシス・メイヤー
世界的に名の知れた天才肌の建築家。実家は大手観光グループのオーナーで、政財界に幅広い人脈を有する。才能豊かで、作品にも定評があるが、性格はイタチのように小心で、プライドも高い。干拓地の再建案について、素人のヴァルターにけなされた事を恨み、アステリアでは富裕層向けの海上都市『パラディオン』の是非をめぐって、再びヴァルターと火花を散らす。
- マックス・ウィングレット
アステリア行きのコンパートメントで同室になった熟練の施工管理士。面倒見のいい親分肌で、ヴァルターのことも大らかな気持ちで見守る。現実主義で、冒険はしないタイプだが、後にリング・プロジェクトの指南役となる。ブラウンエールとコメディが大好き。
- エヴァ・ウィングレット
マックスの妻で、リゾートタイプの住宅設計を得意とする建築デザイナー。人間の機微に通じた心優しい楽天家で、リズとヴァルターの恋を応援する。
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