鉱業問題が手軽に分かる ゴルゴ13『コルタン狂想曲』 / タンタルと携帯電話

ゴルゴ13 コルタン狂想曲
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記事について

バッテリー性能に優れた携帯電話を量産するには材料となるタンタル(コルタン鉱石)が不可欠だ。だが産出国・コンゴ共和国では民族紛争や武力抗争が続き、安定供給が難しい。メーカーの依頼を受けて、岩國氏はゴルゴ13に武力組織の抹殺を依頼するが、意外な結末が待ち受ける。コラム『鉱物資源は産出国の人々を決して幸せにしない』

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ゴルゴ13 『コルタン狂想曲』と紛争メタル

一方、紛争メタルをテーマにしたのが、劇画ゴルゴ13の『コルタン狂想曲』だ。

コルタンは、携帯電話、💻、ゲーム機などの電化製品のコンデンサーに使われ、主にバッテリーを長持ちさせる為に使われる。
参考→ なぜコンゴを血で染める戦争は続くのか?:知られざるハイテク産業の裏の顔

ゴルゴ13(157) (コミックス単行本)
ゴルゴ13(157) (コミックス単行本)

あらすじ

コンゴ民主共和国で決死の鉱山開発に挑む『岩國スーパーメタル』。日本の製造業に不可欠なコルタンを安定供給すべく、地元のコンゴ民を使ってフッチミ鉱山の開発を推し進めるが、対立するミズワ族のゲリラに襲撃され、開発もままならない。岩國鉄夫はゴルゴ13に助けを求めるが、彼の返事は『No』であった。「だが、お前の希望の半分は叶うことになるだろう」という謎の言葉を残してゴルゴ13は交渉の場を去る。

それでも岩國は成さねばならぬ理由があった。日本の携帯会社の興亡は、岩國スーパーメタルが供給するコルタンにかかっているからである。

バッテリーが長持ちするIP式の携帯電話で、世界市場の巻き返しを狙うドッコム電機。既に試作品も完成し、量産に踏み切ろうとするが、資材調達部から待ったがかかる。
量産が不可能な理由は、バッテリー素材に不可欠なレアメタルのタンタルが不足しているからだ。

東京・大手町の『ドッコム電機』では、重役を集めて、経営戦略会議が開かれている。
目下のテーマは、携帯電話の国際市場の拡大だ。
電化製品では圧倒的に強いシェアを誇るが、携帯電話は海外企業に遅れをとっていた。

携帯電話市場で挽回するには、海外メーカーよりもバッテリー持続時間に優れた製品を送り出す以外にない。
その目玉商品が新機種『ハート700』だったが、資材調達部の間宮部長は、バッテリー素材となるタンタルが不足している為に、「量産は不可能」との見解を示す。

タンタルとは、コルタン鉱石から得られるレアメタルで、従来の超小型バッテリーやコンデンサーに微量に添加することで何倍もの大容量化が可能になる。最新機器の開発に不可欠な金属資源だ。

だが、コルタン鉱石を扱う会社は、世界でたった三社。アメリカとドイツ、そして日本の岩國スーパーメタルだ。もし、岩國からの供給が途絶えれば、アメリカとドイツの会社に頼ることになる。だが、携帯電話の市場競争で、日本有利な契約を結ぶはずがなく、コルタンの値上げは、すなわち、商品価格の高騰だ。これでは価格競争に勝てるわけがない。

高い技術力を誇っても、原料となる金属資源が無ければ量産も叶わず、それはメーカーのみならず、工業製品の輸出に依る日本全体の問題でもあった。

『岩國スーパーメタル』の岩國鉄夫は、日本メーカーの要請に応えるべく、ゲリラに占領されたフッチミ鉱山を奪還し、コルタン鉱石(タンタルを含む)の採掘を急ぐが、部族間の縄張り争いもあり、思うように進まない。やがて岩國は企業ぐるみの陰謀に巻き込まれ、アフリカの豊かな資源は決してアフリカを幸せにしないことを思い知る……。

ゴルゴ13 コルタン狂想曲

ゴルゴ13 コルタン狂想曲

白戸圭一氏の著書『ルポ 資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄 (朝日文庫)』でも、「鉱物資源は産出国の人々を決して幸せにしない」と言及されていたが、本当にその通り。

アフリカ諸国は、豊かな鉱物資源があっても、それを効率的に生産したり、製品化する術がない為に、常に翻弄される立場にある。

我々が使用している携帯電話やパソコンや電化製品の原料が、どこから、どうやって調達されるのが、日頃、意識することはないが、常識として知っておくだけでも、消費行動が変わるのではないだろうか。(むやみに捨てない、買い換えない、製造元や販売元をチェックする、等々)

※ コンゴ共和国における紛争や児童労働、貧困問題などに関する動画。制作はトルコの公共放送TRT。字幕付き。

ちなみに、『コルタン狂想曲』が収録されているゴルゴ13の第157巻は、同時収録の『ペイ・バック』『欧亜の狭間』も非常に面白いです。
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鉱物資源は産出国の人々を決して幸せにしない

白戸圭一氏の著書『ルポ 資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄 (朝日文庫)』にもあるように、「鉱物資源は産出国の人々を決して幸せにしない」というのはまさにその通り。

普通に考えれば、豊富な鉱物資源を有する国が、地上でもっとも裕福になるはずですが、決してそうはなりません。

何故なら、採掘された鉱物から効率よく金属資源を取り出したり、工業生産に生かす手段がないからです。

貧しい産出国は、どうしても他国の工業技術や販売網に頼らざるを得ず、本来、現地の人が手にするはずの富が、他国の資本に奪われていきます。

また、それに便乗する悪徳政治家や武装組織の思惑もあり、現地の努力だけでは、どうにも解決できない問題が横たわっているわけですね。

地球上のあらゆる問題は、突き詰めれば、資源に起因します。

鉱物資源のみならず、水資源、食糧資源、エネルギー資源などは、文明社会の基礎であると同時に、相手国を従わせる強力なカードになるからです。

その仕組みは本質を知れば、社会への理解がいっそう深まるのではないでしょうか。

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誰かにこっそり教えたい 👂
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