子供はなぜ親の財布からお金を盗むのか?

about
いい親子関係とは子供がお金を盗まないことではなく、子供が何でも相談できることです。その信頼関係をなくして、どれほど正論を説いても、役には立ちません。

育児の掲示板に、ペンネーム『中学生の母親』から次のような投稿がありました。

中学生になる息子は成績もよく、真面目に進学塾に通うようないい子なのだが、最近、私(母親)の財布からちょこちょこお金を盗んでいるようだ。

聞けば、塾の帰りに友達とラーメンやハンバーガーを食べたりするお金が欲しかった、と。

家庭の方針で、外食は絶対に許さず、いつも栄養の行き届いた手作りのものを食べさせていただけに、息子に裏切られたようで、親として情けなく思う。

どうしたらいいか……。

といった相談です。

このトピックスに対し、たくさんの人が、 

「たとえ親の財布でも、黙ってお金を盗むのは泥棒と一緒。いかなる理由があろうと、厳しく叱るべき」

とレスをつけておられて、私自身は違和感を覚えたのですが、皆さんはいかがお考えですか。

確かに、親の財布から黙ってお金を盗むのは泥棒かもしれませんが、私には上記の息子さんの気持ちが手に取るように分かります。

平素から、「友達とマクドナルドに行きたいから、ちょっとだけお金をちょうだい?」ということが言えない親子関係なのでしょう。

ファストフードは厳しく禁止されている家庭だったり、

月々の小遣い以上は絶対にあげない主義だったり。

「お母さん、こういう理由で、300円くらい欲しいんだけど、ダメかなぁ?」

と気軽に言える親子関係なら、親の財布から黙ってお金を盗むこともないと思うんですね。

盗まれた親は「子供に裏切られた」と傷つくかもしれませんが、子供は平素から心の奥でもっと傷ついているかもしれません。

お金のことに限らず、勉強、家庭生活、友人関係、様々な理由で。

そういう子供に、「いかなる理由があろうと、親の財布から黙ってお金を抜き取るのは、絶対に悪い」と正論を説いて聞かせても、かえって追い込むだけだと思うんですね。

その正論に愛はありますか ~正しいだけの親は要らないにも書いていますが、正しいことを、正しいように言って聞かせて、子供が救われるなら、この世に親子関係の悩みなど存在しないのですよ。

子供も、親の言うことが正しいと、頭では分かっていても、子供なりの理由で納得いかないこともある。

だから齟齬を起こすのです。

子供にお金を盗られたと目くじらを立てるよりは、「何故、この子は私に一言でも相談してくれなかったのだろう」を考えてみませんか。

相談したくても、できないような親なら、それは親にも原因があると思います。

それを棚に上げて、子供をガミガミ叱っても、恨まれるだけで、決して反省はしないと思いますよ。

上記と似たようなトピックスで、「小学6年生の息子がゲームなどを購入して、総額2万円以上になっていた」という相談もありました。

『嘘を重ねて隠そうとする気持ちも分からなくはないですが、どうしてもそれが許せなくて、それ以降すべての事を疑ってしまっています。私が悶々とした気持ちでいるのに、子供は普通にはなしかけてきます。不機嫌な返事しか返せなくなりました。夫は1回目だから許してやろうと言います。そんな私の態度を見て、大好きなお母さんに嫌われたら、子供の心が病んでいくし、心を閉ざして何も話さなくなってしまうと。でも反省しているのかよく分からない態度に、これからどう育てていけばいいのか、私はどうしたらいいのか分かりません』

という話です。

これも正論を説いて聞かせても、問題の大本になっている部分を断たないと効果がない一例です。

もしかしたら、友達に脅されているのかもしれない。

「ゲーム代をもらえない」と言ったら、ゲーム仲間に馬鹿にされ、仲間はずれにされるのかもしれない。

親に何を相談しても、言うだけ無駄と、はなから諦めている、等々。

必ず理由があると思いますよ。

いい親子関係というのは、子供が親の財布からお金を盗まないことではなく、

「僕も友達とマクドナルドに行きたい」

と気軽に言える関係です。

「今月、お小遣いピンチだから、ちょっとだけカンパして(^∧^) 来月返すから<(_ _)>」

と甘えておねだりできることです。

その信頼関係をなくして、いかなる指導も役には立ちません。

私の知人は、典型的なお祖母ちゃんっ子ですが、大好きなお祖母ちゃんが亡くなった時、こんな事を言ってました。

「お祖母ちゃんに『来月、模試がある』と言ったら、『幾らいるんや?』とすぐに聞いてくれるけど、お母さんは『ああ、そうなん』で終わってしまう。子供がお金の催促するのがどんなに気を遣うものか、お母さんは分かってない。だから、お祖母ちゃんが死んだ時、『この世でたった一人の理解者を失ってしまった』と目の前が真っ暗になった」

本当の問題は、盗った盗らないの行為ではなく、「欲しい」と言えない親子関係です。

子供が「親に何を言っても無駄」と諦める状況であれば、表面的にどれほど上手くいってても、事実上、親子関係は破綻していると思います。

Novella 文芸コラム
河合隼雄と家族関係 | Novella 文芸コラム 心理学者・河合隼雄の著書を通して考える家族関係の在り方。 ギリシャ悲劇『オイディプス』をベースに、精…

コラム子育て・家育て / 0~3歳児と向き合う 【第25号 子供はなぜ親の財布からお金を盗むのか?】  2007年4月10日   

                

目次
閉じる