超時空要塞マクロス リン・ミンメイは可愛かった / 失恋したら聞く歌『天使の絵の具』

超時空要塞マクロス リン・ミンメイは可愛かった / 失恋したら聞く歌『天使の絵の具』
  • URLをコピーしました!
記事について

90年代、華麗なメカの動きや親しみやすいキャラ造形でアニメファンを釘付けにした初代・超時空要塞マクロスとバーチャル・アイドルのリン・ミンメイ。特にEDで歌われる『天使の絵の具』の美しさは白眉のもの。
羽田健太郎氏の映画音楽も素晴らしく、歴史に残る名作の世界を動画と共に綴ります。

この記事はネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。

目次 🏃

超時空要塞マクロスとリン・ミンメイ

『超時空要塞マクロス』のあらすじ

※ 解説には、TV版のエピソードを含みます

アイドル歌手を目指す中華料理屋の可愛い娘リン・ミンメイは、巨大な要塞都市マクロ・シティのミス・コンテストで優勝したのをきっかけに、両親の反対を押し切って家を出て、歌手としての活動を始めます。

あるコンサートの夜、マクロ・シティは謎の巨人兵ゼントラーディ軍の攻撃を受け、舞台にいたミンメイも戦闘に巻き込まれます。

そんな彼女の危機を救ったのは、戦闘機バルキリーの若きパイロット・一条輝(いちじょう ひかる)。

巨人兵から逃げ回るうち、無人のブロックに閉じ込められた輝とミンメイは、やがて恋に落ち、ミンメイもアイドルという立場を越えて、輝を愛するようになります。

そんな二人の恋を苦々しく見つめていたのが、輝の上官で、口うるさい年上の早瀬未紗。

何かと意見の食い違う未紗と輝は犬猿の仲でしたが、いくつもの戦闘を重ね、行動を共にするうち、二人の間には確かな絆が芽生えます。

いよいよ戦闘が激化し、人類の存亡をかけた争いとなった時、輝は、ミンメイではなく、未紗こそ「いつまでも一緒に居て欲しい人」だと告白するのでした。

それを知ったミンメイは激しく動揺し、巨人兵との戦いを前に、未紗の翻訳した『愛・おぼえていますか』を歌うことを拒みますが、愛する輝のため、そして宇宙の平和のため、ミンメイは歌手としてステージに立ちます。

ミンメイの歌声は星空にまばゆく輝き、文化の大切さに気づいた巨人兵らも次々に人類の側に寝返って、宇宙征服を企むゴル・ボルドザーを打ち倒します。

立派にステージを務め、ボルドザーとの戦いにも勝ったミンメイは、失った恋の痛みを吹っ切るように輝と未紗に感謝の意を伝え、歌手として、また一人の女性として、新たな一歩を踏み出すのでした――。

初代マクロスの魅力とは

1982年10月から、日曜日の昼枠で放送が始まった『超時空要塞マクロス』は、従来のロボットアニメの定石を打ち破る画期的なものでした。

第一に、主人公の一条輝が、シャイで、優柔不断で、等身大の少年であった点です。

それまでロボットアニメのヒーローといえば、『六神合体ゴッドマーズ』の明神タケルや『銀河旋風ブライガー』のブラスター・キッドのように、目元涼しく、たくましく、正義感に燃える好青年が定番でしたが、初代マクロスの一条輝は、脇も甘けりゃ考えも甘め、恋愛においても奥手で、ちっともヒーローらしくない。

かといって、初代ガンダムのアムロのような弱腰でもなく、一途に頑張る姿が初々しくて、女性ファンの好感度も大。

声優の長谷有洋さんの素人っぽい喋りと相成って、非常に親しみを覚えたものでした。

第二に、ヒロインのリン・ミンメイが、信じられないほど我が侭で、甘えん坊だった点。

それまでロボットアニメのヒロインといえば、『宇宙戦艦ヤマト』の森雪のように、男性の後ろを三歩下がって、ハイハイと頷く優等生タイプか、『銀河鉄道999』のメーテルみたいなお姫さまタイプ。あるいは、エンジェルお町のようにアクションも可能なセクシーお姉さまタイプがお決まりのパターンでした。

ところが、リン・ミンメイときたら、言いたい放題の我が侭三昧。人類が生きるか死ぬかの瀬戸際でも、「私とあなた(輝)以外、みんな死んじゃえばいいのに」などのたまい、ついには一条輝に横面を張り倒されるほど。(ホントです)

その言動は、もはや人類の理解を超えて、宇宙にぶっ飛ぶほどの自己中にもかかわらず、甘え上手で、いたずら好き。

この世に、「恋」と「自分」しか興味がないような天真爛漫さが、逆に魅力的で、最後まで恋の行方に目が離せませんでした。

多くのロボットアニメが「正義」や「救済」をテーマにする中で、初代マクロスは、恋愛を中心に物語が展開した点も、非常に画期的だったと思います。

そして、一番衝撃だったのは、これほどに可愛いヒロインが振られて、早瀬未紗という年上のお局と結ばれた点でしょう。

これには誰もが(・。・)になり、「輝……お前、本当に後悔はないのか……?」とブラウン管の前でうなったファンも少なくないと思います。

あらゆる面で型破り、かつ、進歩的。

考案したスタッフも秀逸なら、制作をバックアップした放送局も、非常に先見の明があったと言えるでしょう。

劇場版『愛・おぼえていますか』の衝撃

そんなお茶の間の人気を受けて、1984年に劇場公開されたのが『愛・おぼえていますか』です。

劇場公開とあって、キャラ、メカニック、全てがハイクオリティ。

あまりにも凝りすぎたが為、エンディングの『天使の絵の具』(リン・ミンメイのファイナルコンサート)は作画が追いつかず、劇場公開時には、真っ黒な背景にクレジットが流れるお通夜のような仕上がりで、ファンを絶句させたほど。

後に、この『天使の絵の具』は幻のエンディングといわれ、数年後、リン・ミンメイの音楽PV『FLASH BACK』としてLD版に収録され、一時期、数万円の価格で取引きされたこともありました。(現在では編集されて、劇場版エンディングとして視聴することができます)

ファンがそこまで熱狂したのは、リン・ミンメイの可愛さもあるけれど、歌曲と声の演技を担当した飯島真理さんの魅力も非常に大きいと思います。

加えて、羽田健太郎氏による映画音楽もドラマティックで、天才マックスとミリアが交戦する場面で流れる『Dog Fight』のギターソロは息が止まるほどの美しさ。

『愛・おぼえていますか』は、リン・ミンメイ=飯島真理のミュージックビデオでもあり、音楽が好きで作品を見る人も結構あったんですね。(ビデオは買わないけど、サントラは買う)

公開中は、主題歌『愛・おぼえていますか』も国民的ヒットとなり、飯島真理さんも『ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』など、いろんな歌謡番組に出演されていました。

恐らく、ガンダムの『哀・戦士』や沢田研二の『さらば宇宙戦艦ヤマト』、ゴダイゴの『銀河鉄道999』など、ロボット・アニメの主題歌が国民的ヒットになる流れの中で、最後のムーブメントになった歌曲ではないかと思います。(この後はナウシカやもののけ姫など、ジブリ系が中心になる)

脚本については、長いTV版を劇場向けに短縮したこともあり、予備知識がなければ理解しにくい部分もありましたが(なぜ地球にマクロスがやって来たのか。巨人兵に攻撃されて、人々がマクロスに避難したのか……といった経緯)、TV版を踏襲しながら、映画向けにグレードアップする演出で、TV版のファンも大満足の出来映えでしたし、劇場版をもって、一条輝とリン・ミンメイの物語を終結した点も非常に良かったと思います。

今、見返しても、画像やアクションの美しさに圧倒されますけど、「当時の若い才能が結集して」というのも分かる気がします。

儲けよりも、定型を打ち破る! みたいな意気込みが凄いというか。

リン・ミンメイにしても、実は、オタクにまったく媚びてなくて、彼女は自分の気持ちしか考えてないんですよ。

だからこそ、オタク男子が夢中になったわけで、最初から「お前ら、こういうのが好きなんだろう」という作り手の意図が見え見えのキャラは大して魅力ないでしょう。

ゆえに、この一作をもって、リン・ミンメイが永遠に去って行った点で、「天使の絵の具」にも説得力があり、もし、この後、同じキャラクターを使い回して続編を作っていたら、ここまで伝説の存在にはならなかったと思います。

そういう意味でも、初代・マクロスは、従来のロボット・アニメの定型からスコンと飛び出した作品であり、レジェンドと言えましょう。

『天使の絵の具(Flash Back)』で永遠に去って行ったリン・ミンメイに、今も作り手の気概と美意識を感じずにいられないのです。

天使の絵の具とFlash Back

一時期、『Flash Back』というタイトルでLD化された、リン・ミンメイの音楽クリップです。

ここに収録された『天使の絵の具』が、作画に凝りすぎて公開期日に間に合わず、幻のエンディングとなったパートです。

公式チャンネルから出ている動画ですので、ぜひ、御覧になってください。

■ レジュメ

0:00 天使の絵の具 Part 1
2:05  サンセットビーチ
5:45 0-G Love
6:56  小白竜
8:20  シルバームーン レッドムーン
10:52  愛は流れる
15:20  シンデレラ
16:52  愛・おぼえていますか
23:22  天使の絵の具 Part 2
28:10  ランナー

「映画 超時空要塞マクロス」 愛・おぼえていますか <音楽篇>
「映画 超時空要塞マクロス」 愛・おぼえていますか <音楽篇>
羽田健太郎、飯島真理による劇場版『超時空要塞マクロス』のサウンドトラック盤。
『愛・おぼえていますか』『天使の絵の具』、作中で効果的に使われていた羽田氏の映画音楽が収録されている。
「小白竜」「0-G LOVE」「シルバームーン レッドムーン」などミンメイのヒットメドレーはTV版サントラに収録。
円盤、MP3、amazon Unlimitedでの視聴が可能。
超時空要塞マクロス  TV版サントラ
超時空要塞マクロス TV版サントラ
OP、ED「ランナー」をはじめ、「小白竜」「シルバームーン レッドムーン」「O-G LOVE」「愛は流れる」など、リン・ミンメイのヒットメドレーを収録。
円盤、MP3、amazon Unlimitedでの視聴が可能。

マクロスの中でも一番人気の『ドッグファイター』。
特に、マックスとミリアの交戦シーンはアニメ史に残るスピード感。
ギターソロも秀逸です。

ディスクも何度か再版されては廃盤になり、コレクターズアイテムで高騰……を繰り返しています。

超時空要塞マクロス~愛・おぼえていますか~【劇場版】 [DVD]
超時空要塞マクロス~愛・おぼえていますか~【劇場版】 [DVD]
オリジナルのテレビ版自体が徹底的に作り込まれた設定と物語で、それをほぼ2時間に再構成した本作はこれだけ観るとやや説明不足な感は否めない。しかし、当時の若手アニメーターが結集して作りあげたハイレベルな映像や、「住民を待っている都市」といった壮大にしてロマンチックな設定、サブタイトル「愛・おぼえていますか」が誰へ向けてのものなのかが判明する感動的な展開で、十分満足できる。(田中 元)

amazonプライムビデオはこちら

DVD化される以前はLDとして販売され、一時期、コレクターの間で数万円で取引されていた幻の一品。
YouTube公式で無料公開されていますが、きれいな画像が欲しい方は円盤でどうぞ。

超時空要塞マクロス Flash Back 2012 [DVD]
超時空要塞マクロス Flash Back 2012 [DVD]
【スタッフ】
原作:スタジオぬえ/監督:河森正治/キャラクターデザイン:美樹本晴彦/演出:五月女有作/音響:本田保則/美術:宮前光春/色指定:由井あつ子/制作:タツノコプロ歌:飯島真理/藤原 誠

【音楽コラム】 天使の絵の具 ~失恋したら聞く歌

記 2007年11月24日

1984年に封切られたアニメ映画『超時空要塞マクロス』のエンディングで、当時、オタクのアイドル的存在だった飯島真理さんが歌う『天使の絵の具』は、私にとって最高位に位置づけられるラブソングです。

Flash Back(上記の動画)の前半部は、ミンメイのさよならコンサートであり、後半部は、両親の反対を押し切ってマクロスに乗り込み、アイドルとして成功しながらも、輝との恋の終わりをきっかけに歌手を引退し、新しい移民船(未紗が艦長を務め、輝が護衛する)に乗って、新天地に旅立つ場面が描かれています。

「ヒロインが失恋する」という設定は、当時としては非常に珍しいものでしたし、それがまたアニメ史上に残るような可愛いキャラクターだっただけに、感動もひとしお。

映画のエンディングに流れる『天使の絵の具』の美しさと切なさは、数あるラブソングの中でも白眉のものです。

マクロスの音楽は、羽田健太郎さんが手がけておられますが、『天使の絵の具』は歌手の飯島真理さんが作詞・作曲を手がけ、今なお内外のファンに愛されています。

黄昏映す 窓辺へと舞いおりる
きらめくそよ風 吸い込んで
空を見る時

悲しい出来事が ブルーに染めた心も
天使の絵の具で 塗りかえるよ
思いのままに

出会った頃は 宇宙(そら)にさえ憧れた
私をいつでも守ってた
愛に気づかず

少しの間だけあなたに サヨナラしたら
I love you
この気持ちは 涙にかわるでしょうか

瞳をそらせば 全てが離れてしまう
いつかは永遠の光 私を誘(いざな)う

悲しい出来事が ブルーに染めた心も
天使の絵の具で 塗りかえるよ
思いのままに

私がこの曲に惹かれるのは、どんな時も前向きなミンメイの魅力が溢れているからです。

アニメを見れば分かりますが、ミンメイはとにかく我が侭で、「いつも私のことを優しく構ってくれなきゃ、イヤ!」な自己中の甘えん坊。

結局、それが原因で恋人の輝を疲れさせ、別れに至ってしまいますが、それでも自分を信じて、新たな一歩を踏み出す姿が印象的。

ミンメイには、「女の子らしい女の子」の魅力がぎゅっと詰まっているんですね。

女の子の美点は、「明日」というものを信じられる純粋さがあることです。

これが年を取ってくると、だんだん捻くれて、純粋さも失われていきますが、ミンメイのように身も心もぴちぴ若い女の子は、悲しみさえも生きるパワーに変えて、軽やかに前に踏み出すことができます。

いつまでもその場にうずくまって、泣いたりせず、どんな時も光のある方を目指します。

後半、すがすがしい笑顔を浮かべて、空を見上げるミンメイの姿が透き通るように美しいのも、女の子の涙は、決して不幸の象徴ではない証でしょう。

だから、大いに恋して、大いに悩み、何度でも生まれ変わるような気持ちで、やり直せばいいと想う。

どうしても辛い時は、『天使の絵の具』が心を洗い流してくれるから。

エンディング『ランナー』の謎 ~「追いかけない」の意味

TV版のエンディングで効果的に流れていた『ランナー』(藤原誠・歌唱)の、「僕はもう追いかけはしない」のフレーズは、放映中、リアルタイム・ファンにとっては、ちょっとした謎かけでした。

「追いかけはしない」の対象は、青春なのか、リン・ミンメイなのか。

当時の人気アニメ雑誌『アニメージュ』では様々な意見が飛び交い、「大人になった輝が青春時代を回想する歌」という見方が有力だったのですが(最後にヒロインと破局に至るとは誰も想像だにしなかった)、大多数の予想は大きく外れましたね。

時を経て、じっくり見直すと、この曲の良さがしみじみと分かります。

ここで終わって、本当に良かった。

いろんな意味で、お手本のようなアニメでした。

劇場版がTVロードショーでオンエアされた時、エンディングの『天使の絵の具』を聴きながら、「アニメはこれで卒業しよう」と思いました。
作画、音楽、キャラ、演出、全てにおいて、これに優る作品は二度と出てこないだろうと感じたからです。(押井守の攻殻機動隊は別格)

リン・ミンメイの旅立ちは、子供時代の終わりでもありました。

いい作品をリアルタイムで楽しむことができて、本当に幸運な世代だったと今も思っています。

飯島真理のベスト盤とSpotify

飯島真理さんは声が綺麗で、女の子らしい世界観が特徴。
作詞・作曲の才能にも優れ、透明感のある歌唱が素敵です。

ゴールデン☆ベスト~ビクター・イヤーズ
ゴールデン☆ベスト~ビクター・イヤーズ
「愛・おぼえていますか」「天使の絵の具」「セシールの雨傘」「シンデレラ」など、代表曲が収録。
amazon Primeなどストリーミングでも視聴できます。

Spotifyのアーティスト・リンクはこちら

誰かにこっそり教えたい 👂
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次 🏃