知見は時に絶望しかもたらさない カフカ寓話集『ロビンソン・クルーソー』

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カフカ寓話集『ロビンソン・クルーソー』

ロビンソン・クルーソーが島のもっとも高い一点、より正確には、もっとも見晴らしのきく一点にとどまりつづけていたとしたら――

慰めから、恐怖から、無知から、憧れから、その理由はともかくも――そのとき彼はいち早く、くたばっていただろう。

ロビンソン・クルーソーは沖合を通りかかるかもしれない船や、性能の悪い望遠鏡のことは考えず、島の調査にとりかかり、またそれをたのしんだ。

そのため、いのちを永らえたし、理性的に当然の結果として、その身を発見されたのである。

カフカ寓話集 (岩波文庫)

知見は時に絶望しかもたらさない

IT全盛の時代、「知ること」は、現代人の処世術として不可欠だが、何でも知っているが為に、かえって慎重になり、結局、何も出来ずに終わってしまう人も少なくないのではないだろうか。

あれも不安、これもおかしいと身構えるうち、ついには食べることすら楽しめず、生きること自体が苦痛になってしまうのだ。

ロビンソン・クルーソーがしぶとく生き延びることができたのは「無知」のおかげであり、もし彼が高台に立ち、自分の絶望的な状況を知ったら、断崖から飛び降りていたに違いない。

よく知ることは、よく生きることであり、様々な情報が現代人に多くの利益をもたらすのは本当だが、最高の知見が必ずしも最上の結果をもたらすわけではない。

知り過ぎたロビンソン・クルーソーのように、かえって人の気根を挫き、いつか訪れる幸福を遠ざけてしまうこともある。

ロビンソン・クルーソーは、Google Mapで自分の居場所を知ることもなく、「いつか助かる」という根拠なき自信に支えられて、絶望の日々を乗り切ることができた。

こうした言葉を絶望名人のカフカが記しているのも興味深い。

初稿: 2018年9月20日

誰かにこっそり教えたい 👂

Notes of Life

『汝自身を知れ』 ウサギがライオンに憧れて、ライオンの真似をしても、決して上手くいきません。 ウサギはウサギの群れと仲良くするから、友だちもできるし、身の丈にあった暮らしを楽しむことができます。 自分がウサギかライオンか、どちらかを知ることは、幸福の基本です。

この記事を書いた人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。アニメから古典文学まで幅広く親しむ雑色系。科学と文芸が融合した新感覚のSF小説を手がけています。看護師として医療機関に勤務後、東欧在住。石田朋子。amazonの著者ページ https://amzn.to/3btlNeX

Notes of Life

自己肯定感を高めたければ、誰かの役に立つのが一番の近道です。 いきなり人の中に入るのが怖ければ、小さな鉢植えでいいので、大事に育ててみましょう。 自分みたいな人間でも必要とされていることが分かれば自尊心も高まり、自信に繋がります。
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