寺山修司の『宝石の詩』
ガーネット
ガーネット
もしも 思い出をかためて
一つの石にすることが出来るならば
あの日二人で眺めた夕焼の空を
石にしてしまいたい と
女は手紙に書きましたその返事に 恋人が送ってよこしたのは
ガーネットの指輪でしたあかい小さなガーネットの指輪を 見つめていると
二人はいつでも
婚約した日のことを思い出すのです
恋人がプロポーズしてくれた日は、世界で一番幸せな日。
それは一瞬で通り過ぎるけど、いつまでも心に残る大切な日。
辛いことがあっても、悲しいことがあっても、素敵な日の思い出があれば、乗り越えることができます。
婚約指輪は、永遠の愛を約束する保証書ではなく、心を強くするお守りのようなもの。
つい憎んだり、八つ当たりすることもあるけれど、指輪を見つめていると、優しかった時のことも懐かしく思い出されます。
それが恋と結婚の障害を乗り越える護符になります。
宝石のガーネットは強力なパワーストーンでも知られ、「実り」「優雅」」「勝利」「貞節」の石としても知られています。
うつろぎやすい人の心に、永遠の愛と誓いを思い起こさせてくれる、優しくも力強い宝石です。
参考文献 夢見るジュエリ(岩田祐子・東京書籍株式会社)
参考URL 京セラ ジュエリーオンラインショップ『ガーネットに込められた意味とは』
ダイヤモンド
木という字を一つ書きました
一本じゃかわいそうだから
と思ってもう一本ならべると
林という字になりました
淋しいという字をじっと見ていると
二本の木が
なぜ涙ぐんでいるのか
よくわかる
ほんとに愛しはじめたときにだけ
淋しさが訪れるのです
多くの場合、『淋しさ』という言葉は、退屈や、無視された怒りや、自我が通らぬもどかしさを表す言葉として使われる。
何もすることがなくて、淋しい。
誰にも相手にされなくて、淋しい。
分かってもらえなくて、淋しい。
自分が何ものでもないような気がして、淋しい。
それも淋しさに違いないが、愛を知った人の淋しさは、わかり合えない辛さや愛されない空しさとは異なる。
想っても、想っても、二人が永久に一つになることはない。
そんな限界の淋しさだ。
私があなたで、あなたが私なら、もう何も苦しむことなどないのに。
想うほどに、独りを感じて、泣けてくる。
そういう切ない涙の話だと想う。
恋と恋の狭間に
岩田氏の『夢見るジュエリ』によると、
それほどに純度の高い宝石ですから、二人の気持ちに少しでも嘘が混じっていたら、必ず邪魔をするほど強いパワーを秘めています。
結婚指輪として需要の高いダイヤモンドですが、裏切りにはそれ以上の報いがある魔法石なので、心が離れた時には、寺山修司の詩のように、人間関係の厳しさと淋しさを思い知らせるのかもしれません。
岩田氏も言及されていますが、実はダイヤモンドほど結婚指輪に不向きな石もなく、美しければ美しいほど、純粋であればあるほど、人間の裏切りを決して許さないのです。
参考記事 なみだは にんげんのつくることのできる 一番 小さな海です ~寺山修司 海の詩