子供が「死にたい」と言った時の覚え書き ~死ぬなと言うより、好きと言って欲しい

子供が「死にたい」と言った時、親はどう対応すべきか ~自殺志願者に接する場合の覚え書き
記事について

子供はなぜ「死にたい」と言うのでしょう。それはストレートに自殺を意味するのではなく、「今すぐこの生き地獄から救い出してくれ」という必死のSOSに他なりません。漠然と命の大切さを説いても、子供の救いにはなりません。ただ励ますだけでなく、援助は具体的に。先の道筋を示すことが大事です。また死にたい気持ちを打ち明けるには勇気がいります。まずは大人を信頼して打ち明けてくれたことに感謝の意を示し、勇気を褒めましょう。

目次 🏃

子供が「死にたい」と言った時の覚え書き

なぜ子供は「死にたい」と言うのか

まず、「大人の自殺」と「子供の自殺」は分けて考えないといけません。

大人の場合、「お金がない」「仕事がない」「頼れる家族も友人もない」など、社会生活に根ざした部分が大きく、生活への絶望感から自死を考えるようになりますが、子供の場合、「学校でいじめられる」「勉強についていけない」など、精神的な理由が大きく、環境を変えることで、劇的に救われる可能性があるからです。

また、大人の場合、生活問題を解決するには、ケースワーカー、法律や医療の専門家、行政機関など、様々な分野の連携が不可欠ですが、子供の場合、「退部する」『転校する」「新しい趣味を始める」など、身内の働きかけで改善できることもたくさんあります。

そこで考えて欲しいのが、大人の「死にたい」と子供の「死にたい」は微妙にニュアンスが違う、ということです。

大人の場合、「死にたい」という言葉は、社会生活に根ざしたものであり、離婚、失業、病気、倒産など、自分の努力ではどうにも変えられない現実の中で、希望をなくし、心を病み、苦悩から逃れる為に、死を考えるようになります。

その点、子供の死にたい気持ちは、SOSに近いものがあります。

子供は、大人と違って、生活する術もなければ、処世の知恵もありません。

自分の感情や志向を表現する語彙力も乏しいです。

本気で死にたいというよりは、「今すぐ、この状況を変えて、苦しみの原因を取り除いて欲しい」という心の悲鳴に近いです。

もうこの状況に耐えられない、今すぐ消えてなくなりたい、という気持ちを一言で表せば、「死にたい」になるのです。

多くの子供にとって、『世界』といえば、学校と家庭くらいです。そこに塾やスポーツクラブが加わることもありますが、基本的には、学校と家庭の延長。どこにも逃げ場はなく、辛くても、苦しくても、そこに居続けなければなりません。

大人みたいに、いざとなれば、転職したり、離縁したり、という選択肢もなく、鎖に繋がれた如くです。

そんな子供が、死ぬほど辛いことがあった時、どうやって逃げ出せばいいのでしょう?

18歳の子供なら、荷物をまとめて、家を飛び出すこともできますが、8歳や10歳の子供なら、そうはいきません。

一歩家を出て、親の保護から離れたら、今夜寝る場所も、明日食べる物もなくなってしまうからです。

どれほど理不尽に感じても、周りの大人に従う他なく、学校にも通い続けなければならない。

そんな中で、死ぬほど辛いことがあった時、あなたなら何と考えるでしょう。

『死にたい』

それしか、頭に浮かばないのではないでしょうか。

子供が「死にたい」と口にした時、一番大事なのは、原因を知ることです。

どんな子供も、朝起きた途端、「死にたい」と考えるわけではありません。

そこに至るまでに、「走りが遅いと馬鹿にされた」「勉強が苦痛」「仲間はずれにされた」など、必ず原因が存在します。

その原因を放置して、「死ぬな、命を大切にしろ」と説いて聞かせたところで、何の救いにもなりません。

喩えるなら、釘の刺さった足に蜂蜜を塗るようなものです。

元気に歩けるようになるには、まず釘を抜き、痛みの原因を取り除かなければなりません。

頑張れと励ますのは、キズが癒えて、歩く気力が戻ってからです。

突然、子供に「死にたい」と言われたら、臆病な人間に育ったように感じるかもしれませんが、死にたい子供が感性が豊かで、周りを傷つけるより、自分を傷つけることを選ぶ、心の優しさの表れとも思います。

もし、その子が一片の思いやりも持たない暴れん坊なら、自死を考えるより、相手に復讐するでしょう。

親にも迷惑をかけたくないから、「自分が消えればいい」と思い詰めるのであって、性格が暗いわけでも、命を軽んじているわけでもありません。

子供が「死にたい」と言ったら、騒がず、慌てず、非難せず。

とにかく原因を突き止めて、具体的に解決すること。

何と返答していいか分からなければ、

「打ち明けてくれて、ありがとう」
「誰でもそんな時があるよ」
「自分のこと、弱い人間なんて思わないでね」
「お父さんとお母さんは、○○ちゃんの、そういう繊細なところが好きなんだよ」

ありのままを受け止めて、大切に思う気持ちを伝えましょう。

その上で、少しずつ、本音や悩みを聞いていく。

その時も、「何とかしよう」と必死になるのではなく、まずは共感の気持ちから始めましょう。

たとえ解決策が分からなくても、問題が解決するまで、共に寄り添う気持ちを示すだけでも、気分的に楽になるものです。

「死にたい」も悲しみや苦しみに並ぶ一つの感情であって、命の否定ではありません。

『子供が死んで行くときに「死ぬほど苦しい」と親に言えない親であった』(加藤締三の言葉)

とはいえ、ある日突然、子供に「死にたい」と打ち明けられたら、どんな親も動揺しますよね。

しかし、先に述べたように、子供の「死にたい」は「今すぐ状況を変えてくれ」のSOSであり、大人の自殺みたいに、人生に完全に行き詰まった絶望感とは異なります。

周りの大人に「死にたい」と打ち明けるのは、まだ心のどこかで大人を信頼している証しであり、弱音や愚痴ではありません。

だからこそ、子供の話にじっくり耳を傾け、どんな時も味方する気持ちが大事なんですね。

心理学者の加藤諦三氏の言葉に、

子供が死んで行くときに「死ぬほど苦しい」と親に言えない親であった

というものがあります。

子供が親に死ぬほど苦しい気持ちを打ち明けるのは、心が弱いからではなく、「分かって欲しい」からです。

今すぐ解決や正論を望んでいるわけではありません。

公共広告機構のCMで、『死ぬな』と言うより、『好き』と言って欲しいというキャッチコピーがありますが、本当にその通りで、何かあっても、親だけは味方してくれるという実感があれば、たいていのことは乗り越えられるんですね。

何と答えていいか分からなければ、好きな気持ちを伝えましょう。

子供の様子がおかしいと感じたら、子供の大好きなカレーやラーメンを作ってみる。

ファミレスで美味しいデザートを食べる。

一緒に買い物に出掛ける。

今すぐできることは、いくらでもあります。

「可愛いね」「いい子だね」と毎日口にするだけでも、子供の表情はまったく違います。

この安心感と愛され感こそ、子供にとって最大の救いです。

死にたい子供は、優しい子供

自殺願望など一度も経験したことのない親から見れば、「死にたい」と言う子供は弱虫で、耐性がないように思うかもしれません。

しかし、自分のイライラを解消するために、級友を苛めたり、攻撃的な言動をする子供に比べたら、自分の中に苦しみを抱え込む子供の方が感受性が豊かで、思いやりがあるように感じます。

いわば、心が優しいから、自分の中に抱え込んでしまうんですね。

そういう子供は、死ぬほどの苦しみを克服し、良い方にスイッチが入れば、将来、人の痛みや悲しみが分かる、立派な大人に成長する可能性が大です。

自殺を考える子供は駄目な子供、なんてことは絶対にありません。

子供時代のトラウマを克服し、素晴らしい仕事を成し遂げた人もたくさんいます。

子供なんて、まだまだ人生のスタート地点に立ったところ。

そもそも、人生とは何か、自殺が何を意味するのかさえ、よく分かってないと思います。

むしろ、これを問題解決の好機と捉え、死ぬほどの苦しみを打ち明けた子供の勇気を褒めてあげたいものです。

いきなり「生きろ」は荷が重い。こんな一言で一日を繋ごう

子供が「死にたい」と言い出しても、慌てず、騒がず、非難せず。

大人に対してなら、こういう声かけができますね。

「誰でも、そういう時がありますよ。きっと今が一番辛い時なんですよ」

「誰でもそんな状況に陥ったら、死にたいと思いますよ。苦しくて当然です」

「自分のこと、弱い人間だとか思わないで下さいね」

「○○さん、今でも十分闘っておられますよ。すごいですよ」

「ここは誰もが弱音を吐いたり、挫けたりしていい場所です。立派な人間になろうなどと思わないで下さい」

「私ね、○○ちゃんの、そういうところが好きなのよ(死ぬほど思い詰めてしまうデリケートなところが)」

いきなり「生きろ」は大人にも荷が重いです。

とりあえず、今日と明日、生きてみる。

その後、一日ずつ、引っ張っていく。

克服とは、その積み重ねです。

死にたい子供に「死ぬな」と言うのは、鼻と口を両手で押さえるのと同じこと

「僕、死にたい」

それぐらい自由に言わせてあげよう。

親にも言えないなら、誰に打ち明ければいいの?

死にたい子供に「死ぬな」と言うのは、鼻と口を両手で押さえるのと同じこと。

*

子供が「人生いや」と言った時。

子供に人生の意義や面白さなど分からなくて当たり前。

無理に「良く思え」と迫るより、「そういう時もあるよ。

大人でもイヤになるぐらいだし」と共感すれば安心する。

人生の面白さなど、ゆっくり時間をかけて探せばよい。

*

小さな生き物や花や果物を育てることが救いになることがある。

自分という存在を頼ってくれるものがあり、自分の力が相手の役に立つと実感すれば、子供の中にも自尊心が芽生える。

可哀想と庇うより、子供の力を周りに役立てる方が、立ち直りも早い。

*

『自分なんて居ない方がいい』という子供の悩みに対して。

求める愛と承認が得られないから苦しんでいる。

「なぜ居なくなったら困るのか」を理屈で説明するより、その子にしか出来ない役割を与えて、褒めて、ありがとうを言ってあげる方がいい。

*

小さな生き物や花や果物を育てることが救いになることがある。

自分という存在を頼ってくれるものがあり、自分の力が相手の役に立つと実感すれば、子供の中にも自尊心が芽生える。

可哀想と庇うより、子供の力を周りに役立てる方が、立ち直りも早い。

誰かにこっそり教えたい 👂

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詳しくは『自立したい子供 VS 自立させたくない親』をご参照下さい。

自立したい子ども 自立させたくない親 子育てコラム

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この記事を書いた人

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。アニメから古典文学まで幅広く親しむ雑色系。科学と文芸が融合した新感覚のSF小説を手がけています。看護師として医療機関に勤務後、東欧在住。石田朋子。amazonの著者ページ https://amzn.to/3btlNeX

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