ビリー・ジョエルの名曲『ニューヨークの想い』『ザンジバル』『イタリアンレストランにて』

ビリー・ジョエルの名曲
記事について

ビリー・ジョエルの音楽は上手く生きられなかった人にも優しい光を当ててくれる。
ビリーの名曲をYouTubeとSpotifyで紹介。当時の音楽市場とFMラジオの感動、中学女子の夢の世界に関するコラムとあわせて。

目次 🏃

ビリー・ジョエルの魅力

ビリー・ジョエルは、14歳の頃からバーでピアニストとして働き始め、地元のバンドメンバーとして地道にキャリアを積んでいましたが、1973年、コロムビア・レコードからリリースした『ピアノ・マン』が全米で大ヒットとなり、以後、『素顔のままで』『オネスティ』『ニューヨークの想い(New York State of Mind)』など、時代を超える名曲を次々に生み出しました。

ジャズ、ポッポス、ロックなど、様々な音楽の要素が融合した曲作りは、ジャンルを超えて多くのリスナーを惹きつけ、今なお不滅の輝きを放つアーティストの一人です。

オフィシャルサイトはこちら https://www.billyjoel.com/

おすすめアルバム ~ベスト盤と神CD

ビリー・ジョエルのベスト盤は様々な種類があって、初心者には悩ましいが、今はamazonプライム、Spotifyなどで気軽に視聴できるので、一度は聞いて欲しい。
どれも構成はほぼ同じ、『ピアノマン』『ニューヨークの想い』『オネスティ』『素顔のままで』など、永遠のスタンダードが収録されている。

いずれも、CD、ストリーミング配信、両方あります。

ただ、モノによっては、年代順に並んでおらず、途中で曲調ががらっと変わって、戸惑うケースもあるので、初心者には、年代順に収録されたエッセンシャル版がおすすめ。


The Essential Billy Joel ~ベスト盤

ある程度、親しんだ人には、よりたくさんの曲が収録されているベスト盤をどうぞ。


ピアノ・マン:ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ビリー・ジョエル

ビリーの良さが分かったら、是非、聞いてほしいのが、『ストレンジャー』。グラミー賞を受賞した「素顔のままで」もさることながら、第4曲目の「Scenes from and Italian Restaurant イタリアンレストランにて」のジャジーなソロも聴き応えがあり。
ポップスとジャズがほどなく融合した世界観に魅了されます。


ストレンジャー

こちらも聞き逃せない名アルバム。『ストレンジャー』の次にリリースされ、グラミー賞で、「最優秀レコード」と「最優秀楽曲」の二部門を受賞。
世界的にヒットした「オネスティ」「マイライフ」もいいが、異色の出来映えなのが後述でも絶賛している「ザンジバル」。
独特の裏打ちリズムと異国情緒あふれるメロディが非常に素晴らしいです。


ニューヨーク52番街

Spotifyのアーティストリンクはこちら。
https://open.spotify.com/artist/6zFYqv1mOsgBRQbae3JJ9e?si=qX6_bGwxRpGpkEFTHQOu0w

『ニューヨークの想い』に魅せられて

インターネットの無い時代、いかに私たちは優れた音楽と出会ったのか

ジャズでも、ポップスでも、若いうちに聞いておくべき曲がある。

変に年を取ってしまうと、余計な知識やこだわりが邪魔をして、何でも素直に聞けなくなるからだ。

その上で、その曲を、リアルに体験できるのは非常に幸運だ。

『70年代 懐かしのヒット曲』みたいな形ではなく、そのアーティストがのりにのっている時、『最新のヒット曲』として、世界中のファンと熱狂を分かち合う。

現代のように、「SNSのシェアやSpotifyのおすすめで聴いてみたら、意外とよかった」というのではなく、激しい競争を勝ち抜いて、全米二位に躍り出たスマッシュヒットに感嘆するする。

YouTubeも、Spotifyも、ノートPCさえない時代、海の向こうの天才と出会うには、FMラジオとマニアックな音楽雑誌だけが頼りだった。

クイーンや、レッド・ツェッペリンや、ホール&オーツのようなベストテンの常連にもなれば、『星の王子さま』みたいなもので、どんな人なのか、知る手立てもなかった。

なぜなら、現代のアーティストのように、SNSでつぶやくこともなければ、オフィシャルサイトもなく、彼らのインタビュー記事が日本の音楽雑誌に掲載されることすら稀だったからである。

だから余計で、彼らの新曲がベストテン入りし、日本で初めてFMラジオで流れる瞬間が胸に焼き付いた。

一曲、一曲が特別で、その頃、学校で何があったか、あの日の天気はどうだったかまで鮮明に思い出せるほど、感動的だったのだ。

ビリー・ジョエルと『ニューヨークの想い』

そんな中高時代、思春期の性腺をおおいに刺激したのがビリー・ジョエルだ。

『素顔のままで』を筆頭に、『マイライフ』『ストレンジャー』『ガラスのニューヨーク』等々、FMラジオ御用達だったビリーの音楽は、ニューヨークがどんな所か想像もつかない私にとって(NYもLAも、せいぜいNHKの海外番組で目にするぐらい)『煙草の煙るジャズバー』や『黄金色に色づく並木道、恋人たちが肩を寄せ合い、ささやき合うマンハッタンの秋』みたいに、まだ見ぬ大人の世界を彷彿とするものだった。

特に、洋学史に残る名曲とされる『ニューヨークの想い(New York State of Mind)』を初めて耳にした時の衝撃は今も忘れない。

翳りのあるメロディに、夕暮れの似合う甘美な歌声。

摩天楼が赤い夕陽を照り返し、ハドソン川を渡る地下鉄の車窓を流れていく。

人はどこか淋しげで、足早に通りを過ぎ去るが、ふと振り返ると、雨に煙る街の向こうで、優しく手を振る人がいる――。

一度も見たことのないニューヨークの情景がありありと瞼に浮かび、あまりの美しさに胸がしめつけられるほどだった。

世の中に、この曲に心動かされない人などあるのだろうか。

それほど切なく、懐かしい響きがする。

↓ 今となっては「くわえ煙草」も許されない世の中……

中学生の私には、さびの部分が「雨のニューヨーク・シティ・ザ・ナイト」と聞こえて、雨の街を歌った曲だとばかり思っていましたが、実際の歌詞はもっと深い。

正解は、 I'm in a New York state of mind です。

有志が和訳付きの動画をアップしてるので、参考にどうぞ。

ザンジバル

ザンジバルは、出だしから泣きそうになる。

異国情緒あふれるメロディに、ビリーらしい、母音のクリアな発音がいい。

ビリーの両親はネイティブの英語スピーカーではないでしょう。

ビリー自身はニューヨークに生まれ、アメリカ文化にどっぷり漬かって育ったかもしれないが、幼少時から、ネイティブではない両親の会話を聞きながら育っているせいか、ネイティブの英語スピーカーとはちょっと響きが違う。

一番の特質は、母音がはっきり聞き取れること。(あるいはクラシックの教程で身に付けたのかもしれないが)

二番目には、歌詞が平易で、スラングはほとんど使われてないこと。

だから中学生でもヒアリングしやすい。

日本で英国バンドのQUEENが大人気になったのも、インド系にルーツをもつ、フレディ・マーキュリーの発音が日本人には聞き取りやすいからでしょう。

聞き取りやすいから、そこそこ歌詞の意味が分かるし、中学生でも「オーネスティ~ イズ サッチャ ロンリーワード」とか「ドント ストップミー ナ~ウ」とか、口ずさむことができる。

「分かる = 親しみやすい」ですから、今のラップ系より、ビリーやQUEENがより人の心に深く焼き付くのは当たり前なんですね。

また、この頃のヒット曲は、Aメロ → Bメロ → Aメロ、と曲の構成がはっきりして、聴く側にも安心感がありました。

来るぞ、来るぞ、あー来た~、という感じで、先が見えているからこそ、さびの部分でぐっとくる。

『ザンジバル』も、後述の『イタリアンレストランにて』と同じく、曲の構成がシンプルで、最初から全体像が分かっているから、かえって中間部のピアノソロと終盤のトランペットのアドリブが安心して聞けるのです。

これも中学生の耳には「ザンッジバール トゥナーイ イッツウェイ アイルビー アイルビー」と聞こえた(Tonight, It's way, I'll be, I'll be ...)

正解は、「at Zanzibar、 Tonight that's where I'll be, I'll be」です。(かなり近い)

イタリアンレストランで

『イタリアン・レストランにて』(原題は Scenes From An Italian Restaurant )は、前半、カントリーちっくなスローバラードだが、途中から軽快なアップビートに変わり、華麗なピアノソロが炸裂するのがいい。

クラシックピアノでは、「粒をそろえて、均等に」というのが基本中の基本だから、ビリーのように、指の回転が感じられる、飛び飛びの弾き方はなかなか衝撃的だった。

「ああ、こういう弾き方でもOKなんだ」と別の意味で感動した一曲。

素顔のままで

原題は、『Just the way you are』

中学生の時、この歌詞で、be動詞の意味と、関係代名詞の構成をおぼろげに理解しました。

be といえば、 I am a student. のように、「~です」と解釈しがちだけど、 be は、存在そのものを指す単語であって、 You are と言えば、「あなたが、あなたのまま存在する」、そこに the way がくっつけば、「あなたが存在するがままのやり方(?)」= 「素顔のまま」になるのだなと。

日本語に直訳するのはなかなか難しい。

これを「素顔のまま」としたのは、訳者さんの大勝利です。

70年代は、「彼氏と聴きたいラブソング」の第一位で、今でもホイットニー・ヒューストンの『I'll always love』ザ・ポリスの『見つめていたい』に並んで、珠玉のラブバラードに数えられる一つです。

「僕を喜ばせようとして 君を変えないで。流行のファッションを身につけたり、髪の色を変える必要もない。ありのままの君を愛しているんだ」という歌詞は、70年代女子でなくても、ハートを鷲づかみにされます。

ちなみに、中学生の英語の授業で、この歌詞と一緒に勉強したのが『オネスティ(Honesty)』。

Honesty is such a lonely word.

で、such a 形容詞+名詞 = なんという ○○な名詞 という構文を学びました。

very (とても) より、形容詞が強調されます。

【音楽コラム】 そして少女は大人になる

ニューヨークのメインストリートから一本外れた下町に、古びた雑居ビルがある。

店のネオンは壊れて、文字の一つが不規則に点滅し、通りの水たまりに映っている。

音もなく、人影もなく、みんな何所に行ってしまったのか、不思議なくらい。

だけど、雑居ビルの、大人一人がやっと通れるほどの細い階段を降りていくと、擦り切れた木製ドアの向こうから微かにピアノ音色が聞こえてくる。

蝶番を軋ませながら、そっとドアを押し開くと、どこか控えめにビーバップが鳴り響き、ホールの隅で一人グラスを傾けている年配の男性客とちらと目が合う。

紫色に煙る店内には、会社帰りのサラリーマンや妙齢の男女が集い、色とりどりのボトルが並んだカウンターでは若いバーテンダーが黙々とシェーカーを振る。

バーテンダーの前には若いカップルが腰掛けているが、女性は、デート相手の、さして面白くもないジョークに笑ってみせるが、その眼差しは、向こうの席で一人で飲んでいる鳶色の目の男に注がれている。男もまた彼女の顔を見返すが、軽くウイスキーを飲み干すと、バーテンダーに声をかけ、潤んだ目をした女性の後ろを足早に通り過ぎていく――

だから、早く大人になりたいと。

ジャズとカクテルの似合う女性になって、はにかみ屋さんの彼氏とこういう店でデートするんだと。

ビリー・ジョエルを聴きながら、憧れてきたけれど、その夢はついに叶わず、理想のはにかみ屋さんに出会うこともなかった。

自棄で覚えた酒だけが、心を分かち合える友達で。

かくして、少女時代の夢は、ザンジバルのジャーニーギターと共に去りぬ。

年だけとって、ニューヨークの憧憬も、いつしか暴徒が車のガラス窓を叩き割る修羅の国になった。

妙齢の男女がマティーニのグラスを傾ける、お洒落なジャズバーは、中学女子の妄想だったのか?

ふと立ち止まると、こうではなかったような気がして、切なくなる。

もしかしたら、もっと違う人生があったかもしれないのに、そうはなれなかった私。

どこかで踏み間違えたアクセル。

返らぬ日々。

そうして、あらかたの人生は、良くも悪くもなく、うたかたみたいに地上から消え去るのだろう。

いつの間にか終わったB面みたいに。

それでもビリーの曲は、上手く生きられなかった人にも、優しい光を当ててくれる。

ありきたりの人生にも、ほんの一瞬、輝く時期があっただろう。

それでいいじゃないか。

それが、君なりに精一杯、生きた証なんだよと。

ビリーの曲は、いつでも人の心に寄り添ってくれるのです。

ビリー・ジョエルの名曲

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Notes of Life

最初から日の当たる場所で歩き始める人はいない。 皆に理解されながら物事を始める人も。 始める時は、いつも一人。 考えるのも、一人。 行うのも、一人。 だからこそ達成の悦びもひとしおなのです。

この記事を書いた人

MOKOのアバター MOKO 著者

作家・文芸愛好家。80年代サブカルチャーの大ファン。アニメから古典文学まで幅広く親しむ雑色系。科学と文芸が融合した新感覚のSF小説を手がけています。看護師として医療機関に勤務後、東欧に移住。石田朋子。
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『嘘は人間を弱くする』SNSの時代、嘘はすぐにバレるし、身元を特定されるのも早いです。 元同僚。元彼氏。元従業員。 アカウントの数だけ、人の口も存在します。 どれほど表面を取り繕っても、嘘はすぐにバレます。 正直で損するより、嘘がばれた時のコストの方がはるかに高くつきます。
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