アラン・リックマン 魅惑の悪役『ロビンフッド』と『ダイ・ハード』より

ロビンフッド アラン・リックマン
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魅惑の悪役 アラン・リックマンの代表作

アラン・リックマンといえば、若い世代には「ハリー・ポッター」のセブルス・スネイプ先生が有名ですが、バブル世代の映画ファンには、ブルース・ウィルス主演のアクション大作『ダイ・ハード』の悪役テロリスト。そして、英国アカデミー賞助演男優賞を受賞した『ロビンフッド(ケヴィン・コスナー主演)』のノッティンガム司法官が印象深いです。

日本にも成田三樹夫という、ヤクザの親分からコメディまで、幅広く演じる名優さんがいらっしゃいますが、アラン・リックマンの悪役も非常に魅力的です。

マンガ『ガラスの仮面』で、「どんな悪役も演じ方次第で印象が変わる。イギリスの名優が『ヴェニスの商人』で悪役シャイロックを演じた時、観客はその演技に涙した」という姫川亜弓お姉さまの言葉通り、アラン・リックマンの悪役は、邪悪の中にも、どこか知性とユーモアを感じさせるのがポイントです。

映画『ダイ・ハード』(1988年)と悪役ハンス・クルーバー

映画の見どころ

ジョン・マクティアナン監督のアクション映画『ダイ・ハード』は、主演にブルース・ウィリス、日系企業ナカトミ・ビルを襲撃するテロリスト(というより、ただの強盗)の親玉にアラン・リックマンを迎え、世界的ヒットとなったアクション大作です。

謎のテロリスト集団がクリスマス・パーティーで賑わうナカトミ・ビルを占拠し、たまたまその場に居合わせたジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィルス)が、傷だらけになりながらも、一人、また一人とテロリストを討ち取り、奥さんを救出する、単純明快なストーリーながら、当時、バブル経済の絶頂期で、飛ぶ鳥の勢いだった日系企業が狙われたこと、派手な銃撃戦や爆発炎上、最後まで目の離せないスピーディーな展開が話題となり、世界中の映画ファンを釘付けにしました。

本作の見どころは、これが出世作となった、若き日のブルース・ウィリスのお茶目なヒーローぶりですが、残忍な悪役をスマートに演じたアラン・リックマンの魅力も大きいです。

従来の悪役のイメージを覆す、高級スーツに身を包んだ、スタイリッシュな役作りに目を見張った人も多いはず。

ダイ・ハード アラン・リックマン

日系企業のタカギ社長。

ダイ・ハード タカギ社長

ダイ・ハードが製作されたのは、バブル経済の絶頂期。

アメリカの有名企業や不動産、世界的名画などを買いあさり、「東洋のサル」と顰蹙をかうこともありました。

また、当時は空前の円高だったこともあり(1ドル 80円~90円)、高齢のリタイア夫婦から女子大生まで、パリだ、ロンドンだと、そりゃもう華やかだったこと。
団体旅行で、欧州の有名観光地を訪れ、あっちでパチパチ、こっちでパチパチ、写真を撮りまくり。
若い娘がシャネルやエルメスのパリ本店に押し掛け、買い物三昧。一流店の雰囲気が壊れると、現地から苦情が出たこともありました。

そうした事情もあって、ロサンゼルスにひときわ高くそびえ立つ日系企業ナカトミ・ビルで銃をぶっぱなし、ヘリコプターまで突っ込むアクションは、当時のアメリカ人にもずいぶん受けたようです。

でも、それも、とおい、とおい、昔話みたいなもの。
もう二度と、あんな景気のいい時代は戻って来ません。
ヴィクトリア女王の大英帝国が二度と戻ってこないように。

ちなみに、ハンス・グルーバーらが大型金庫に忍び込み、ナカトミ・ビルの企業資産を手に入れる場面があるのですが、名画や美術品を購入しても、梱包そのままで、金庫の隅に放ったらかし――とうい演出があり、「芸術など理解しない人種」というイヤミが非常にきいています。

また、本作のポイントは、ソ連から亡命したボリショイ・バレエ団の花形ダンサー、アレクサンドル・ゴドゥノフが出演している点。
(写真左。金髪ロン毛のお兄さん)

当時、よくソ連から有名人が亡命していました。ミハイル・バリシニコフを筆頭に。

突然、病死したという話ですが、見せしめに消されたんでしょ。

ソ連に関しては、病死説は信じません(・_・)

ダイ・ハード テロリストの一味を演じるアレクサンドル・ゴドノフ

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どこが違うの? ダイ・ハードと従来のアクション映画

ダイ・ハードは、確かにそれまでのアクション映画と一線を画していました。

理由その1

主人公が訳ありの不良オヤジで、ボロボロに傷つく。

スティーブ・マックイーンやポール・ニューマンのように、容姿、人格、能力ともに兼ね備えたスーパーヒーローではない。

70年代から80年代にかけてのアクション映画といえば、主人公はタフで、クール。

敵が放つ弾丸は、ヒーローの脇を頭を下げて通り過ぎ、主人公の撃つ弾は百発百中、決して、顔形が変わるまで、ボコボコに殴られたりしない。

泣き言も言わず、恨みもせず、グラマーな美女にメロメロに愛される……というのが定番でしたが、『ダイ・ハード』の主人公は、「嫁に三行半をつきつけられたダメ男」「根性がありそうで、ヘタレ」「傷つきまくって、ボロボロ」という点が非常に新鮮だったのです。

今ではそういう設定も珍しくありませんが、映画『ダイ・ハード』は、それまでの「アクション・ヒーロー像」を大きく変えた作品の一つなんですね。

そして、この次に、コミカルもハードもいける、アーノルド・シュワルツネッガーが台頭します。(スタローンはランボーあたりでムキムキやってたけど)

ブルース・ウィリスが演じたジョン・マクレーン刑事は「等身大ヒーロー」のはしりかもしれません。

理由その2

アクションが派手。

60年代から70年代にも、『タワーリング・インフェルノ』や『ポセイドン・アドベンチャー』、『大脱走』や『ダーティー・ハリー』のように、豪華・大型アクション映画は存在しましたが――様式美とでもいうのですか――そこには一つの決まり事があり、その決まり事の中で、ヒーローが定石通りに危機に陥り、定石通りに美人と恋仲になり、定石通りに敵をやっつけるという、鉄板がありました。

ところが、ダイ・ハードのアクションは、やりたい放題。

マシンガンは撃ちまくるし、高層ビルからパトカーは墜落するし、ヘリコプターは爆発するし。

そこには様式美もクソもありません。

ただただ破壊があるのみです。

これも今ではまったく珍しくありませんが、『ダイ・ハード』は群を抜いてド派手で、新時代のエンターテイメントを予感させる娯楽大作だったのです。

私はTVロードショーが初見でしたが、あの小さな画面でも釘付けになったくらい。

映画館で鑑賞したら、もっと衝撃的だったと思います。

その後、しばらく、こういう路線が続いて、そろそろ派手なだけのアクションにも飽きたな~という頃に登場したのが、『MATRIX』です。

あれも日本アニメの手法を取り入れ、本当に画期的でした。

参考記事 → 映画『マトリックス』が本当に伝えたいこと ~君は心の囚人 / What is MATRIX 英語で読み解く

その間に『エイリアン』や『ブレードランナー』のような斬新なSFもリリースされましたが、アクションに関しては、やはり『ダイ・ハード』が一つの変わり目と思います。

ヒーロー役が、チャールズ・ブロンソンやポール・ニューマンのような二枚目路線から、ブルース・ウィリスのような「等身大のお間抜けさん」に移り変わった節目でもありますしね。

ブルース・ウィリスもすっかりお年を召して、今ではあまり話題になりませんが、一時代を築いた俳優さんには違いありません。

そういや、デミ・ムーアと結婚してたんだよなー。懐かしい。。。

映画『ロビンフッド』(1991年)とノッティンガム司法官

映画の見どころ

ディズニー配給の映画『ロビンフッド』は、ケヴィン・コスナーの全盛期、クリスチャン・スレーターやメアリー・エリザベス・マストラントニオといった、フレッシュな役者を起用して、1991年に公開されました。

ロビンフッドは何度も映画化されていますが、本作の特徴は、とにかくケヴィン・コスナーが目立つこと、サイコスリラーの傑作『セブン』でブレイクする前のモーガン・フリーマンが逞しいムーア人役で出演していること、ディズニー配給だけあって、アクションは控えめ(冒頭に罪人の腕を切り落とす場面があるくらい。グシャッ、ドバっな残虐シーンはありません)、それよりも、ロビンと仲間の心の交流、マリアンとの恋が中心に描かれています。

テーマ音楽はディズニーDVDのCMで使われているので、一度は耳にされた方も多いのではないでしょうか。

物語は、英国貴族ロックスリー卿の息子ロビンが、ムスリム軍の収容所から脱走するところから始まります。
途中、逃走を手助けしたムーア人のアジームを伴い、故郷に戻りますが、居城は既に焼き払われた後でした。
政権を狙うノッティンガム司法官が、ロビンの父に悪魔崇拝の汚名を着せて、城の者たちを皆殺しにしたのです。

ロビンは、幼なじみのレディ・マリアンに再会すると、シャーウッドの森に逃れた反乱軍と合流し、ノッティンガム司法官に反旗を翻します。
しかし、ノッティンガム司法官も刺客を差し向け、レディ・マリアンは囚われの身となります。

ロビンは、レディ・マリアンを救出し、ノッティンガム司法官を討ち取るため、仲間と共に、最後の決戦に挑むのでした――。

*

作品の見どころは、アラン・リックマンが演じるノッティンガム司法官。
単なる悪役ではなく、どこか腰砕けで、甘えん坊で、威厳のカケラもないマザコン代官を軽快に演じています。

ロビンフッド アラン・リックマン

ロビンフッド アラン・リックマン

ロビンフッド アラン・リックマン

こちらは息子みたいなノッティンガム司法官を言葉巧みに支配する魔女。今でいう毒親ですね。

ロビンフッド ノッティンガム法令官を支配する魔女

この代官、一見、救いようのないアホに見えますが、心の底には純粋なものを持っています。

こちらは、ロビンフッドの幼馴染みで、リチャード国王の従妹でもあるマリアン姫を強奪し、無理矢理に結婚式を挙げる場面。

魔女は「さっさと子種を仕込むんだ」とけしかけますが、「それはきちんと祭壇の前で式を挙げてからだ! 生涯に一度くらい、汚れなきものが欲しいんだよ」の一言に胸を突かれます。

この台詞に、悪徳司法官のキャラクターと生き様が集約されているし、またそれを必死の形相で訴えるアラン・リックマンの表情がいいんですね。

ロビンフッド アラン・リックマン

ロビンフッド アラン・リックマン

司祭の前でコトに及ぼうとするけれど、ロビンフッドらが場内になだれ込み、「集中できない!」と繊細な一面も見せます・・・。

ロビンフッド アラン・リックマン

また、この作品には、私の大好きなメアリー・エリザベス・マストラントニオが『マリアン姫』で出演しています。

繊細な中にも、強さと優しさを秘めたヒロインを演じればピカイチ。
(代表作は、ジェームズ・キャメロンの海洋アクション『俳優エド・ハリスをよいしょする 「アビス」「ザ・ロック」「敬愛なるベートーヴェン」他" rel="noopener">アビス』と、巨大ストームに巻き込まれる漁船の悲劇を描いた『パーフェクト・ストーム』)

ロビンフッド メアリー・エリザベス・マストラントニオ

ジェームズ・キャメロンの海洋SFアクションの傑作で、エド・ハリスの嫁さん役を演じた『アビス』も、史上最大のストームに見舞われる、気丈な船乗りの妻を演じた『パーフェクト ストーム』も、非常に魅力的でした。

主演のケヴィン・コスナーは、今も第一線で活躍されていますが、若かりし頃の輝きは現代の人気俳優とは一線を画するものでした。

映画評論家の“おすぎ”が「自分の顔をあんなドアップで撮らせる男って、ナルシストみたいで嫌い~」と言うてましたが、改めて見直すと、それほど世間に酷評される理由は見当たりません。やはり、やっかみではないでしょうか。

ハンサムだし、スクリーン映えするし。一時期のレオナルド・ディカプリオみたなものですね。

ロビン・フッド ケヴィン・コスナー

ちなみに、この作品は、クリスチャン・スレイターの出世作でもあります。
繊細で若々しい役作りが印象的ですね。

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ロビン・フッド(字幕版)
ロビン・フッド(字幕版)

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